今回は、安衛法の一番根っこの部分にあたる目的や定義について取り上げた過去問を見ていきたいと思います。
まずは何のために安衛法があるのかを理解した上で、全体像をつかみ、少しずつ細部を見ていくということをしていくと把握しやすくなるのではないかと思います。
安衛法は、一見、無味乾燥で暗記しかないようなイメージがありますが、少しでも有機的に捉えることができれば勉強も少しはラクになるかもしれませんね。
それでは最初の問題に入っていきましょう。
この問題では、安衛法と労基法の関係について問われています。
安衛法は労基法とどのような関わりになっているのか見てみましょう。
安衛法と労基法の関係
(平成29年問8E)
労働安全衛生法は、労働基準法と一体的な関係にあるので、例えば「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、」に始まる労働基準法第1条第2項に定めるような労働憲章的部分は、労働安全衛生法の施行においても基本となる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
もともと、安衛法は労基法から分離して独立した規定ですが、安全衛生については、労働者にとって大切な労働条件の一つなので、
労基法に定められている憲章的な部分は、安衛法にとっても基本になるとされています。
こちらは、通達で明らかにされていますので、リンクを貼っておきますね。
参考記事:労働安全衛生法の施行について 昭和四七年九月一八日 発基第九一号
では次に、安衛法で規定されている労働者の定義について見てみましょう。
上記のように安衛法は労基法の影響を強く受けていますが、労働者の範囲についてはどのように定められているのでしょうか。
安衛法における労働者の範囲
(令和2年問9A)
労働安全衛生法は、同居の親族のみを使用する事業又は事務所については適用されない。また、家事使用人についても適用されない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
安衛法第2条2号に労働者の定義について規定されているのですが、
「労働者 労働基準法第九条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)をいう。」
とされています。
なので、労働者の定義は、安衛法は労基法と同じということですね。
ただ、労基法でいうところの使用者については、安衛法では「事業者」と表現しています。
事業者とは、その事業の経営主体のことを指しますので、法人であれば法人そのもののことをいい、個人企業の場合は個人事業主のことになるので、労基法よりも定義が狭いですね。
次に、「労働災害」について見てみたいと思います。
安衛法ではどのような状態を労働災害と呼ぶのか次の問題で確認しましょう。
労働災害の対象とならないもの
(平成28年問9B)
労働安全衛生法における「労働災害」は、労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいうが、例えばその負傷については、事業場内で発生したことだけを理由として「労働災害」とするものではない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
労働災害の定義については、問題文のとおりですが、事業場内でケガをしたからといってすべてが労働災害になるわけではないということですね。
労災保険法の場合は、業務災害は業務遂行性と業務起因性がポイントになっていましたが、休憩中であっても業務に関連していれば業務災害として認定されていましたね。
さて、次は「責務」について見ておきましょう。
次の問題では、製造者の責務について問われていますが、それが義務なのか努力義務なのかが論点になっていますので、読んでみてくださいね。
製造者の責務とは
(平成26年問8オ)
労働安全衛生法第3条第2項では、機械、器具その他の設備の製造者の責務として、機械、器具その他の設備の製造に際して、これらの物が使用されることによる労働災害の発生の防止に資するように努めなければならない旨が規定されている。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
製造者や設計者、輸入者については、労働災害の発生の防止に資するように「努めなければならない」ということになっているので努力義務となっています。
今回の製造者について考えてみると、単に製品を作ればいいというわけではなく、労働災害を防ぐために注意喚起のラベルを貼ったり取扱説明書に記載するなどの措置をして欲しいということになるでしょうね。
今度は、建設工事の注文者の責務の方を見てみようと思いますが、こちらについては少し先ほどとは責務についての表現の仕方が違いますので、そのあたりを意識しながら下の問題を読んでみましょう。
建設工事の注文者の責務
(平成26年問8イ)
労働安全衛生法第3条第3項においては、建設工事の注文者等仕事を他人に請け負わせる者について、「施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない。」と規定されている。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
建設工事の注文者の責務については、「配慮しなければならない」とされています。
注文者は自分の手を動かすわけではないので、実際に建設工事をする人々に対して配慮してね、という表現になっていますね。
今回のポイント
- 安衛法は、もともと労基法から分離して独立した規定ですが、安全衛生については、労働者にとって大切な労働条件の一つなので、労基法に定められている憲章的な部分は、安衛法にとっても基本になるとされています。
- 安衛法における労働者の定義は、労働基準法第九条に規定する労働者をいう、とされていますが、事業者については労基法の使用者と定義が異なっています。
- 安衛法における労働災害とは、労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいいます。
- 製造者や設計者、輸入者については、労働災害の発生の防止に資するように「努めなければならない」ということで努力義務となっています。
- 建設工事の注文者の責務については、施工方法、工期等について「配慮しなければならない」とされています。
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