今回は男女雇用機会均等法と育児介護休業法についての過去問を集めてみました。
今の時代、セクハラやパワハラ、マタハラなど様々なハラスメントが話題になっていますよね。
それらを防止していく提案を事業主にしていくのも社労士の仕事になるわけで、社労士試験では比較的出題数は少ない方ですが、出題対象にはなっているのです。
それでは、はじめに男女雇用機会均等法から見ていくことにしましょう。
事業主が労働者の募集や採用をするにあたって、「これは実質的な男女差別につながるかもですよ」という規定についての問題になっています。
男女雇用機会均等法で差別の対象になる措置
(平成26年問2C)
男女雇用機会均等法第7条(性別以外の事由を要件とする措置)には、労働者の募集又は採用に関する措置であって、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とするものが含まれる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
労働者の募集や採用に関する措置では、労働者の身長や体重、体力に関するものを要件にすると、実質的に性別を理由をする差別につながるおそれがあります。
「実質的に性別を理由とする差別」となるおそれがある措置として、
- 労働者の募集又は採用に関する措置であって、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とするもの
- 労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に関する措置であって、労働者の住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの
- 労働者の昇進に関する措置であって、労働者が勤務する事業場と異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの
があります。
身長や体重といった身体的なもののほかに、転勤などの配置転換も性別を理由とする差別になるおそれがあるということですね。
ちなみに、そもそも「性別を理由として」差別的取り扱いをしてはいけないことを挙げておきましょう。
- 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練
- 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの
- 労働者の職種及び雇用形態の変更
- 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新
ということになります。
さて、女性の労働者が妊娠や出産などを理由にして解雇その他の不利益な取り扱いをすることが無効になるのか、ということを論点にした問題があります。
つまり、上記のことについては強行規定であり、労働契約や就業規則などで定めていてもその部分は無効になるのかどうか、ということです。
強行規定という意味では、労働基準法がそうですよね。
基準に満たない定めをしてもその部分は無効になって労基法で定めた基準になるというものですね。
では、上記の妊娠や出産などを理由にして不利益な取り扱いをしてはいけない、というのは強行規定になるのでしょうか。。。
男女雇用機会均等法第9条第3項の規定は強行規定?
(平成27年問2A)
男女雇用機会均等法第9条第3項の規定は、同法の目的及び基本的理念を実現するためにこれに反する事業主による措置を禁止する強行規定として設けられたものと解するのが相当であり、女性労働者につき、妊娠、出産、産前休業の請求、産前産後の休業又は軽易業務への転換等を理由として解雇その他不利益な取扱いをすることは、同項に違反するものとして違法であり、無効であるというべきであるとするのが、最高裁判所の判例である。
解説
解答:正
問題文のとおりで、男女雇用機会均等法第9条第3項の規定は強行規定となります。
男女雇用機会均等法第9条第3項では、
「事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和22年法律第49号)第65条第1項の規定による休業(産前休業)を請求し、又は同項若しくは同条第2項の規定による休業(産後休業)をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」
と規定しています。
この規定が強行規定かどうかについては、広島中央生活共同組合事件という最高裁の判例に出ています。
それによると、男女雇用機会均等法の文言や趣旨を見てみると、男女雇用機会均等法の目的を実現するために事業主に対して強行規定として定められたと理解できる、としています。
なので、
女性の労働者が妊娠や出産などを理由にして解雇その他の不利益な取り扱いをすることは、第9条第3項の規定に違反するもので無効になる
ということです。
さて、上記は事業主が女性労働者に対して「不利益な取り扱いをしてはいけない」というお話でしたが、
男女雇用機会均等法には「女性労働者のために必要な措置を講じなさい」という規定もあります。
それが何なのか次の問題で見てみましょう。
事業主が講じる必要な措置とは
(平成30年問4E)
事業主は、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
まず、これは妊婦さんや産後間もない女性労働者を対象にしているのですが、
妊婦さんや産後間もない女性労働者が、保健指導や健康審査で指導されたことを守れるように、事業主は、勤務時間の変更や勤務の軽減などの必要な措置を講じなければなりません。
たとえば、通勤ラッシュを避けて時差出勤にするとか、休憩の時間や回数を調整するといったものだったり、身体的に負担が大きい作業をさせない、ということが措置としてあげられますね。
次は、育児介護休業法を見てみましょう。
下の問題では、育児休業を開始する日を変更できるのかどうか、という論点になっています。
早速確認してみましょう。
育児休業開始予定日を変更することは可能?
(令和2年問3A)
育児介護休業法に基づいて育児休業の申出をした労働者は、当該申出に係る育児休業開始予定日とされた日の前日までに厚生労働省令で定める事由が生じた場合には、その事業主に申し出ることにより、法律上、当該申出に係る育児休業開始予定日を何回でも当該育児休業開始予定日とされた日前の日に変更することができる。
解説
解答:誤り
育児休業開始日の変更は「何回でも」ではなく、「1回に限って」行うことができます。
また予定日の変更をする理由も、出産予定日よりも早く子が出生した場合や、配偶者の死亡、病気、負傷などの特別な理由に限られています。
育児休業は育児をされる女性労働者の方ももちろん大変ですが、勤務先も仕事を調整するために色々と段取りしているわけですから、育児休業の開始日の変更は一度だけ、ということなんでしょうね。
では最後に、パパ・ママ育休プラスについての過去問を見ておきましょう。
パパ・ママ育休プラスというのは、両親がともに育児休業をする場合に、所定の要件を満たした場合に、
子が1歳までの育児休業が延長される制度なのですが、どれくらい延長できるのでしょうか?
パパ・ママ育休プラスはいつまで休業できる?
(平成28年問2B)
育児介護休業法第9条の2により、父親と母親がともに育児休業を取得する場合、子が1歳6か月になるまで育児休業を取得できるとされている。
解説
解答:誤り
パパ・ママ育休プラスでは、子が「1歳6か月」ではなく「1歳2か月」まで休業を延長することができます。
ちなみに、育児休業を延長できるのは1人だけですのでご注意を。笑
今回のポイント
- 男女雇用機会均等法において、「実質的に性別を理由とする差別」となるおそれがある措置として、
- 労働者の募集又は採用に関する措置であって、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とするもの
- 労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に関する措置であって、労働者の住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの
- 労働者の昇進に関する措置であって、労働者が勤務する事業場と異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの
があります。
- 女性の労働者が妊娠や出産などを理由にして解雇その他の不利益な取り扱いをすることは、第9条第3項の規定に違反するもので無効になるので、強行規定ということになります。
- 妊婦さんや産後間もない女性労働者が、保健指導や健康審査で指導されたことを守れるように、事業主は、勤務時間の変更や勤務の軽減などの必要な措置を講じなければなりません。
- 育児休業開始日の変更は、「1回に限って」行うことができます。
- パパ・ママ育休プラスでは、子が「1歳2か月」まで休業を延長することができます。
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