「労基法 過去問でわかる労働者への強制や不当な拘束の考え方」過去問・労基-40

今回は、労働者への強制や不当な拘束を禁じた規定についての過去問を集めてみました。

労基法第2条では、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」と明記されていますので、

そもそも強制労働などはあり得ない話なのですが、そうは言っても現実的には使用者の方が立場が強いことが多いです。

なので、強制労働や、中間搾取、強制貯蓄などをわざわざ禁じているのですね。

それらの考え方を過去問を通して理解していくようにしましょう。

最初の問題は、「業として他人の就業に介入して利益を得る」行為についての規定です。

上記のような行為をどんな形で禁じているのでしょう。

 

「他の法律の定め如何にかかわらず」??

(平成23年問1B)

何人も、他の法律の定め如何にかかわらず、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

 

解説

解答:誤

「他の法律の定め如何にかかわらず」ではなく、「法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない、と規定されています。

なので、ちゃんと許可を得ていれば問題はないわけです。

たとえば、派遣会社や職業紹介会社などはお役所で許可を得て事業を行なっているわけで、逆に許可を取っていないと違法になるわけですね。

では次の論点は、先ほどの問題文にあるように、「業として他人の就業に介入して利益を得る」行為について、もし許可がなかった場合、

何回利益を得たら違法とみなされてしまうのかを、次の問題で見てみましょう。

 

「一回だけ」なら規制されない?

(平成29年問5ウ)

労働基準法第6条は、法律によって許されている場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得てはならないとしているが、「業として利益を得る」とは、営利を目的として、同種の行為を反覆継続することをいい、反覆継続して利益を得る意思があっても1回の行為では規制対象とならない。

 

解説

解答:誤

「1回の行為」では規制対象とならないのではなく、反覆継続して利益を得る意思があれば1回の行為であっても規制対象となります。

どういうことかというと、通達(昭和23年3月2日基発381号)には

「業として利益を得る、とは、営利を目的として、同種の行為を反覆継続することをいう。従って1回の行為であっても、反覆継続して利益を得る意思があれば充分である。」

とあります。

ちなみに、「利益とは、手数料、報償金、金銭以外の財物等いかなる名称たるとを問わず、又有形無形なるとを問わない。使用者より利益を得る場合のみに限らず、労働者又は第三者より利益を得る場合をも含む

としていますのでかなり厳しく規定していますね。

さて、次は労働者を不当に拘束しかねない、違約金や損害賠償額の予定の禁止についての過去問です。

下の問題はその趣旨について書かれていますのでチェックしましょう。

 

違約金を定めることを禁止する趣旨は?

(平成25年問6D)

労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金を定め又は損害賠償額を予定する契約をすることを使用者に禁止しているが、その趣旨は、このような違約金制度や損害賠償額予定の制度が、ともすると労働の強制にわたり、あるいは労働者の自由意思を不当に拘束し、労働者を使用者に隷属させることとなるので、これらの弊害を防止しようとする点にある。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

まず、問題文にある法16条を確認しましょう。

 

(賠償予定の禁止)
法16条
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

 

違約金の制度や損害賠償予定の制度があったとしたら、恐くて仕事できないですし、

もし違約金を払い終わるまで会社を辞めることができない、なんてことになったら、法2条の「対等の立場」どころではなくなってしまいますね。

ただ、損害賠償額の予定をしてはならない、といわれても実際に会社に損害を与えてしまった場合、損害を与えた従業員の人には何も請求できないのでしょうか。

それはそれで会社側には気の毒な気もしますが、、、

 

使用者は損害賠償を請求することはできない??

(平成30年問5B)

債務不履行によって使用者が損害を被った場合、現実に生じた損害について賠償を請求する旨を労働契約の締結に当たり約定することは、労働基準法第16条により禁止されている。

 

解説

解答:誤

現実に生じた損害について賠償を請求」することについては「禁止されていません」。

こちらも通達からの出題ですが、それによると

本条は、金額を予定することを禁止するのであつて、現実に生じた損害について賠償を請求することを禁止する趣旨ではないこと。」

と書かれています。

つまり、予定はしちゃいけないけど、実際の損害については請求できる、ってことですね。

ただ、生じた損害について全額請求できるか、というとそれはまた別の話ですが。。。

この通達については下にリンクを貼っておきますのでご興味のある方はご自由にご参考になさってくださいね。

他の条文についても書かれていますよ。

 

参考記事:労働基準法の施行に関する件 昭和二二年九月一三日 発基第一七号)

 

では最後に強制貯蓄について見ておきましょう。

会社が入っている退職金制度についてそれが強制貯蓄にあたるのかどうかが論点になっています。

 

強制貯蓄に該当するかどうかの判断基準は?

(令和元年問4B)

中小企業等において行われている退職積立金制度のうち、使用者以外の第三者たる商店会又はその連合会等が労働者の毎月受けるべき賃金の一部を積み立てたものと使用者の積み立てたものを財源として行っているものについては、労働者がその意思に反してもこのような退職積立金制度に加入せざるを得ない場合でも、労働基準法第18条の禁止する強制貯蓄には該当しない。

 

解説

解答:誤

問題文の場合は強制貯蓄に該当します。

ポイントは、問題文にある「労働者がその意思に反してもこのような退職積立金制度に加入せざるを得ない場合」の部分です。

ここまで書かれると「強制」の文字が頭をよぎりますね。

労働者が自分で加入するか選べず、労働者の自由な意思に反した退職金の積立制度は強制貯蓄にあたるわけですね。

 

今回のポイント

  • 業として他人の就業に介入して利益を得るのは、法律に基いて許される場合のみ大丈夫です。
  • 「業として利益を得る、とは、営利を目的として、同種の行為を反覆継続することをいい、1回の行為であっても、反覆継続して利益を得る意思があれば規制の対象になります。
  • 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはなりません。
  • 損害賠償額を予定することはできませんが、現実に生じた損害について賠償を請求することについては禁止されていません
  • 労働者がその意思に反してもこのような退職積立金制度に加入せざるを得ない場合は、強制貯蓄になります。

 

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