過去問

「労基法 過去問で読み解く労働条件を決定する時の基準」過去問・労基-39

この記事を書いているのは令和2年8月22日です。

明日はいよいよ第52回社会保険労務士試験の日です。

あなたにとって大勝負の日となりますが、最終確認をすませたら、気力体力を充電するためにも、今日は消化に良いものを食べて胃腸に負担をかけないようにし、スマホなども極力見ないようにする方が良いでしょう。

そして、今晩は早めに就寝するようにしましょうね。

緊張して眠れないとしても、横になって目をつぶっているだけでも休息の効果は得られるそうですので、静かに目を閉じていましょう。

そして、これまで頑張ってきた自分をゆっくり褒めてあげましょうね。

あなたの合格を心より祈っております。

 

 

今回は、労働条件の根本についての過去問を集めてみました。

このあたりの過去問は条文がそのまま出てくることもあれば、通達や判例を引っ張ってくることもあります。

通達や判例については、暗記をするのではなく、条文の趣旨をくみ取るような気持ちで読んでいくと、条文の理解につながり、応用問題にも対応しやすくなりますので、「なぜそのように記載されているのか」という視点で見ていくと良いでしょう。

 

労働条件はどのようにして決めるべきなのか

(平成25年問5C)

労働基準法第2条第1項が、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきである。」との理念を明らかにした理由は、概念的には対等者である労働者と使用者との間にある現実の力関係の不平等を解決することが、労働基準法の重要な視点であることにある。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

ポイントは「対等の立場」ですね。

現実の社会では、労働者と使用者が対等の立場で労働条件を決めるというのはなかなか難しいことなのかもしれませんが、労働条件の向上を目指すためには、できるだけ労使が対等の立場になることが大切なんでしょうね。

次は法3条の差別的取扱の禁止についてですが、この禁止事項と言えば「3つ」だったですよね。

その3つの事項とは何だったでしょうか?

 

労基法3条で禁止されている労働条件についての差別的取扱とは?

(平成29年問5ア)

労働基準法第3条は、使用者は、労働者の国籍、信条、性別又は社会的身分を理由として、労働条件について差別的取扱をすることを禁じている。

 

解説

解答:誤

労働基準法第3条で禁止しているのは、「国籍」、「信条」、「社会的身分」でしたね。

ちなみに、法3条で規定しているのは雇入後の労働条件について上記の差別的事項を禁止していますが、雇い入れそのものには適用されず、他の法に触れない限り企業は自由に採用することができます。

で、「性別」についてじゃ第4条で規定されていますので、次の過去問で確認しましょう。

 

法4条が禁止している「女性であることを理由」の真意

(令和元年問3ア)

労働基準法第4条が禁止する「女性であることを理由」とした賃金についての差別には、社会通念として女性労働者が一般的に勤続年数が短いことを理由として女性労働者の賃金に差別をつけることが含まれるが、当該事業場において実際に女性労働者が平均的に勤続年数が短いことを理由として女性労働者の賃金に差別をつけることは含まれない。

 

解説

解答:誤

問題文のように、事業場で実際に女性労働者の勤続年数が短いとしても、差別をすることは許されません。

これは通達に出ているのですが、それによると

「職務能率技能等によって賃金に個人的の差異のあることは差別ではないが、

労働者が女子であることのみを理由としてあるいは、社会的通念としてもしくは当該事業場において女子労働者が一般的に又は平均的に能率が悪いこと知能が低いこと勤続年数が短いこと扶養家族が少いこと等の理由によって

女子労働者に対し賃金に差別をつけることは違法である。」

となっています。

つまり、個人個人の能力差によって賃金に違いが出るのは当然としても、「女子だから」とか「事業場内で女子の平均労働能力が低い」などという理由で差別をすることは許されない、ということですね。

この通達につきましては、下にリンクを貼っておきますので、ご自由にご参考になさってくださいね。

 

参考記事:労働基準法の施行に関する件 昭和二二年九月一三日 発基第一七号

 

さて、次は労働時間についての問題を見ていきましょう。

法7条では、

「使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。

としています。

でも仕事中に、「選挙に行ってきま〜す」ってなったときに、中抜けした時間にも給与が発生するのでしょうか?

 

労働者が仕事中に選挙に行った時、給与は発生する??

(令和元年問3ウ)

労働基準法第7条に基づき「労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使」した場合の給与に関しては、有給であろうと無給であろうと当事者の自由に委ねられている。

 

解説

解答:正

問題文のとおりで、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使した場合の給与に関しては、有給でも無給でも自由に決めてください、ということです。

まあ、現実的には選挙で中抜けした時間も有給にしているところがどれだけあるのか疑問ですが。苦笑

さて、今度は選挙に行くどころの話ではなく、従業員の方が選挙に出て「議員さん」になっちゃった、というお話です。

でも、会社としては従業員の方が「議員」という別の職業に就いたわけですから、会社を辞めてもらう必要があった場合に、ポイントは「懲戒解雇」ができるか、ということなんです。

 

従業員が議員になっちゃったら懲戒解雇??

(平成29年問5エ)

労働者(従業員)が「公職に就任することが会社業務の逐行を著しく阻害する虞れのある場合においても、普通解雇に附するは格別、同条項〔当該会社の就業規則における従業員が会社の承認を得ないで公職に就任したときは懲戒解雇する旨の条項〕を適用して従業員を懲戒解雇に附することは、許されないものといわなければならない。」とするのが、最高裁判所の判例である。

 

解説

解答:正

問題文のとおり、公職に就任することが会社業務の逐行を著しく阻害する恐れのある場合でも懲戒解雇は許されません

これは、十和田観光電鉄事件という最高裁の判例からの問題なのですが、その会社では公職に就く場合は会社の承認を取らないと懲戒解雇にする、という内容の就業規則があったそうです。

しかし、従業員の人が会社の承認を取らずに市議会議員になったので懲戒解雇にしたところ、裁判になった、というわけです。

判決では、先述した法7条で

使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。」

と規定している以上、「会社の承認」は無効で、制裁として課される懲戒解雇もやりすぎだ、としています。

ちなみに、文中にある「普通解雇に附するは格別」の「格別」ですが、「〜はともかく」、「〜は別としても」という意味合いなのだそうです。

 

今回のポイント

  • 労働基準法第2条第1項では、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきである。」と規定しています。
  • 労働基準法第3条で禁止しているのは、「国籍」、「信条」、「社会的身分」の3つです。
  • 労働基準法第4条が禁止する「女性であることを理由」とした賃金についての差別には、事業場において女子労働者が一般的に又は平均的に能率が悪いこと知能が低いこと勤続年数が短いこと扶養家族が少いこと等の理由によって女子労働者に対し賃金に差別をつけることは違法としています。
  • 労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使した場合の給与に関しては、有給でも無給でも自由に決めることができます。
  • 公職に就任することが会社業務の逐行を著しく阻害する恐れのある場合でも懲戒解雇は許されません

 

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