過去問

「国民年金法 頑張らなくても理解できる老齢基礎年金の支給繰上げと繰下げの要件」過去問・国-37

今回は老齢基礎年金の支給繰上げ繰下げについての過去問を集めてみました。

最初に押さえておくことは、繰上げと繰下げで増減する率が違うということと、どの月からどの月までが対象になるのか、ですね。

あとは寡婦年金や振替加算との関係を見ておくと良いでしょう。

最初の問題は老齢基礎年金の支給繰上げをした時に、いつから支給されるのかが論点になっていますので見ていきましょう。

 

繰上げ支給の老齢基礎年金はいつからもらえる?

(平成29年問6C)

繰上げ支給の老齢基礎年金は、60歳以上65歳未満の者が65歳に達する前に、厚生労働大臣に老齢基礎年金の支給繰上げの請求をしたときに、その請求があった日の属する月の分から支給される。

 

解説

解答:誤

繰上げ支給の老齢基礎年金の支給は、請求のあった「月」の分から」ではなく、「月の翌月」の分から開始されます。

規定では、

「年金給付の支給は、これを支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月から始め、権利が消滅した日の属する月で終るものとする。」

となっています。

ちなみに、年金給付を停止するべき事由が生じたときも、

「その事由が生じた日の属する月の翌月からその事由が消滅した日の属する月までの分の支給を停止する。」

となっています。

つまり、どちらも「翌月から」「その月まで」ですね。

では老齢基礎年金を支給繰上げすると、どれだけ減額されるのでしょうか。

下の過去問は事例問題になっているのですが、昭和生まれの人が何歳になっているのかということも合わせて確認することにしましょう。

 

老齢基礎年金を繰上げ支給したらどれだけ減額される?

(令和元年問4D)

昭和31年4月20日生まれの者が、平成31年4月25日に老齢基礎年金の支給繰上げの請求をした場合において、当該支給繰上げによる老齢基礎年金の額の計算に係る減額率は、12%である。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

年金科目で面倒なのが、問題文の主人公がいま何歳なのかを確定することです。

いまこの記事を書いているのは令和2年ですが、昭和になおすと「昭和95年」になります。

問題文は平成31年(令和元年)ですから、昭和94年ということになりますね。

なので、今回の主人公は、「94−31=63歳」ということになりますね。

ということは、問題文は平成31年の4月ですから65歳になるまでに24ヶ月ある、ということになります。

で、老齢基礎年金を繰上げ支給すると、

支給の繰上げを請求した日の属するから65歳に達する日の属する月の前月までの月数の1ヶ月につき0.5%の減額になるので、

「24ヶ月×0.5% = 12%の減額」ということになります。

さて、老齢基礎年金の支給繰上げができるのは65歳になる前ですが、65歳になるまでに受給できるものといえば寡婦年金もありましたよね。

寡婦年金は、10年以上第1号被保険者だった夫が亡くなった時に、10年以上婚姻関係にあって生計を維持されていた妻に対して支給されるものですが、

寡婦年金を受けている未亡人の妻が、自分の老齢基礎年金の支給繰上げを請求したときはどうなるのでしょうか。

支給停止?それとも、、、?

 

老齢基礎年金の繰上げ支給と寡婦年金の関係は?

(平成23年問8D)

老齢基礎年金の繰上げ支給等に関して、繰上げ支給を受けると、寡婦年金は支給停止される。(問題文を再構成しています)

 

解説

解答:誤

「支給停止」ではなく寡婦年金の受給権は「消滅」します。

つまり、老齢基礎年金の支給繰上げをすると、65歳に達しているとみなされてしまうため、65歳未満の人に支給される寡婦年金の受給権も消えてしまう、というわけです。

そもそも寡婦年金は、自分の老齢基礎年金を受け取れるようになる65歳までの「つなぎ」のような存在なので、減額されるとはいえ、繰上げをして老齢基礎年金を受け取るなら、寡婦年金は

「もういらないよね」

ということになるんでしょうね。

さて次は老齢基礎年金の支給繰下げの方を見ていくことにしましょう。

 

繰下げ支給の申出をしたときの老齢基礎年金の額

(平成22年問2D)

老齢基礎年金の支給の繰下げの申出をしたときは、当該年金の受給権を取得した日の属する月から当該申出を行った日の属する月までの月を単位とする期間に応じて一定率の加算をした額が支給される。

 

解説

解答:誤

老齢基礎年金の支給の繰下げは、受給権を取得した日の属する月から

申出を行った日の属する「月まで」ではなく、申出を行った日の属する月の「前月まで

の月を単位とする期間に応じて一定率の加算をした額が支給されます。

ちなみに、支給繰下げの場合の増額率は0.7%となっていますが、増額できるのは70歳までですので、最大5年分の繰下げができるということになります。

ではもし、65歳の時点で老齢基礎年金の受給権がなく、それ以降に受給権を得た場合に支給繰下げはできるのでしょうか。

下の過去問で確認しましょう。

 

65歳を過ぎて老齢基礎年金の受給権を得たら繰下げできない??

(平成30年問4C)

65歳に達した日後に老齢基礎年金の受給権を取得した場合には、その受給権を取得した日から起算して1年を経過した日前に当該老齢基礎年金を請求していなかったもの(当該老齢基礎年金の受給権を取得したときに、他の年金たる給付の受給権者でなく、かつ当該老齢基礎年金の受給権を取得した日から1年を経過した日までの間において他の年金たる給付の受給権者となっていないものとする。)であっても、厚生労働大臣に当該老齢基礎年金の支給繰下げの申出をすることができない。

 

解説

解答:誤

65歳以後に老齢基礎年金の受給権を得た場合でも、所定の要件を満たせば老齢基礎年金の支給繰下げの申出をすることができます。

老齢基礎年金の受給権を得たときから1年を経過した日前に、老齢基礎年金を請求していなければ大丈夫です。

ただ、65歳時の要件と同じで、老齢基礎年金の受給権を取得したときに、他の年金の受給権者でなく、かつ老齢基礎年金の受給権を取得した日から1年を経過した日までの間において他の年金の受給権者となっていないことが条件です。

さて、最後に振替加算と支給繰下げの関係について見ておきましょう。

振替加算に相当するお金も繰下げができるのでしょうか?

 

振替加算分も繰下げできる?

(令和元年問5C)

合算対象期間及び学生納付特例の期間を合算した期間のみ10年以上有する者であって、所定の要件を満たしている者に支給する振替加算相当額の老齢基礎年金については、支給の繰下げはできない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

振替加算相当額の老齢基礎年金については、支給の繰下げできないことになっています。

なので、問題文のように振替加算相当額しかない老齢基礎年金の支給繰下げをして金額を増やそうと思ってもできないということになります。

まあ、振替加算については、自分で保険料を支払ったものではないので仕方ないのかもしれませんね。

 

今回のポイント

  • 年金給付の支給は、これを支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月から始め、権利が消滅した日の属する月で終ることになっています。
  • 年金給付を停止するべき事由が生じたときも、「その事由が生じた日の属する月の翌月からその事由が消滅した日の属する月までの分の支給を停止する。」となっています。
  • 令和2年場合、昭和になおすと「昭和95年」になります。
  • 支給の繰上げを請求した場合、その属するから65歳に達する日の属する月の前月までの月数の1ヶ月につき0.5%の減額になります。
  • 老齢基礎年金の支給繰上げをすると、65歳に達しているとみなされてしまうため、65歳未満の人に支給される寡婦年金の受給権も消えてしまいます
  • 老齢基礎年金の支給の繰下げは、受給権を取得した日の属する月から申出を行った日の属する月の「前月まで」の月を単位とする期間に応じて一定率の加算をした額が支給されますが、増額率は1ヶ月につき0.7%です。
  • 65歳以後に老齢基礎年金の受給権を得た場合でも、所定の要件を満たせば老齢基礎年金の支給繰下げの申出をすることができます。
  • 振替加算相当額の老齢基礎年金については、支給の繰下げできません

 

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