今回は、労働基準法の雑則や罰則についての過去問を集めてみました。
労働基準法は強行規定なのでたとえば、時間外手当を払わないと会社が就業規則で決めていてもそれは通用せず、
罰則も適用される可能性があるのです。
罰則について全部を覚える必要はないと思いますが、一番重い罰則は強制労働の禁止で
1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金
というところから押さえていき、あとは過去問演習などで知識を貯めていくと良いでしょう。
それでは早速ですが最初の問題は「労働条件の明示」についての論点になります。
労働条件の明示がどのように取り扱われると違反になるのか見ておきましょう。
明示した労働条件が現実と違っていたら、、、
(平成27年問3C)
労働基準法第15条は、使用者が労働契約の締結に際し労働者に明示した労働条件が実際の労働条件と相違することを、同法第120条に定める罰則付きで禁止している。
解説
解答:誤
労働条件の明示で罰則(30万円以下の罰金)がついているのは、労働契約の締結に際して「労働条件を明示しなかったとき」で、実際の労働条件と食い違っていた時ではありません。
ちなみに、明示された労働条件が実際の労働条件と違っていたときは即時に労働契約を解除することができる旨の規定があります。
で、就職のために住居を変更した労働者が上記の理由で契約を解除して、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合、使用者は、必要な旅費を負担しなければなりませんが、
これに違反した時も30万円以下の罰金になります。
さて、めでたく就職できて働き出したのはいいのですが、職場に就業規則が見当たりません。
しかし、労基法では就業規則の周知の方法も規定しています。
ではどのように就業規則を周知する必要があるのか確認しましょう。
就業規則の周知方法とは
(平成23年問5E)
労働基準法第106条に定める就業規則の周知義務は、磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置することによっても果たされ得る。
解説
解答:正
問題文のとおりで、就業規則は以下の方法によって周知する必要があります。
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
- 書面を労働者に交付すること。
- 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
では、職場の就業規則が周知されない場合には罰則はないのでしょうか。
次の問題で確認してみましょう。
就業規則の周知義務と罰則
(平成24年問7D)
労働基準法第106条に定める就業規則の周知義務については、労働契約の効力にかかわる民事的な定めであり、それに違反しても罰則が科されることはない。
解説
解答:誤
就業規則の周知義務については、民事的な定めではなく、違反すると30万円以下の罰金になります。
さて、次は労働者名簿についての規定を確認しましょう。
名簿に乗せる労働者はすべて記載する必要があるのでしょう。
それとも載せなくてもいい労働者もいるのでしょうか。。。
労働者名簿に載せる労働者の範囲は?
(平成22年問1C)
使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(2か月以内の期間を定めて使用される者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴等の事項を記入しなければならない。
解説
解答:誤
労働者名簿に載せなくてもよい労働者は、「2か月以内の期間を定めて使用される者」ではなく、「日日雇い入れられる者」です。
労働者名簿には、労働者の氏名や生年月日、履歴などを記載する必要がありますが、1日単位で契約する労働者まで記載していたら手間が大変でしょう。
なので、「日日雇い入れられる者」は労働者名簿には入れなくてもよいのでしょうね。
では次に賃金台帳についての過去問を見ておきましょう。
下の過去問では労働時間の延長などについての出題になっていますが、どんな内容を賃金台帳に記載するのかを大まかに押さえておくようにすると良いですね。
賃金台帳の内容をどこまで記載すればいいか
(平成26年問3イ)
労働基準法第108条に定める賃金台帳に関し、同法施行規則第54条第1項においては、使用者は、同法第33条若しくは同法第36条第1項の規定によって労働時間を延長し、若しくは休日に労働させた場合又は午後10時から午前5時(厚生労働大臣が必要であると認める場合には、その定める地域又は期間については午後11時から午前6時)までの間に労働させた場合には、その延長時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数を、労働者各人別に、賃金台帳に記入しなければならず、また、同様に、基本給、手当その他賃金の種類ごとにその額も賃金台帳に記入しなければならないこととされている。
解説
解答:正
問題文にあるように、労働時間を延長した時間数、休日労働時間数や深夜労働時間数は、労働者別に賃金台帳に記入する必要があります。
また、基本給や手当なども種類ごとに金額を記載しなければなりません。
つまり、時間外労働をどれだけしたのか、その結果賃金がどうなったのかを明記しておきなさい、ということですね。
働いた労働者に分かりやすくするのはもちろんですが、あとで労基署などが調査する時に見やすくしておく必要もありますしね。
あと、基本給以外にどのような手当の構成になっているのかもはっきりとしておかないと、総額だけ記載されても分かりにくいので明確にしておいてね、ということもあるんですね。
たとえば残業代などを算定するときに、算定に含まれる賃金とそうでないものを分ける必要がありますからちゃんと分けて記載する必要があるのです。
では、賃金台帳に載せるべき項目を挙げておきましょう。
則54条1 使用者は、法第108条の規定によつて、次に掲げる事項を労働者各人別に賃金台帳に記入しなければならない。(一部簡略化しています)
- 氏名
- 性別
- 賃金計算期間
- 労働日数
- 労働時間数
- 労働時間の延長時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数
- 基本給など手当の種類とその額
- 賃金の一部を控除した場合はその額
では最後に、付加金の規定について確認しておきましょう。
付加金は所定の賃金などを支払わなかった使用者に対して、裁判所が未払金以外に支払わせるお金のことですが、
未払金の対象になるのがどの賃金や手当になるのか、下の過去問でチェックしましょう。
付加金は全額払の義務違反にも適用される??
(平成24年問1E)
裁判所は、労働基準法第20条(解雇予告手当)、第26条(休業手当)若しくは第37条(割増賃金)の規定に違反した使用者又は第39条第9項の規定による賃金(年次有給休暇中の賃金)を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができることとされているが、この付加金の支払に関する規定は、同法第24条第1項に規定する賃金の全額払の義務に違反して賃金を支払わなかった使用者に対しては適用されない。
解説
解答:正
問題文のとおりで、裁判所が付加金の支払いを命ずることができるのは、
- 解雇予告手当
- 休業手当
- 割増賃金
- 年次有給休暇
の4つで、
それらに関して使用者がお金を支払わなかった場合に、上記の未払金の他に付加金の支払を裁判所は命ずることができます。
なので、問題文のように全額払の義務に違反して賃金を支払わなかった場合は含まれません。
今回のポイント
- 労働条件の明示で罰則(30万円以下の罰金)がついているのは、労働契約の締結に際して「労働条件を明示しなかったとき」に適用されます。
- 就業規則は以下の方法によって周知する必要があります。
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
- 書面を労働者に交付すること。
- 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
- 就業規則の周知義務については、違反すると30万円以下の罰金になります。
- 労働者名簿に載せなくてもよい労働者は、「日日雇い入れられる者」です。
- 労働時間を延長した時間数、休日労働時間数や深夜労働時間数は、労働者別に賃金台帳に記入する必要があります。
- 裁判所が付加金の支払いを命ずることができるのは、
- 解雇予告手当
- 休業手当
- 割増賃金
- 年次有給休暇
の4つです。
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