過去問

「健康保険法 無理なく理解できる定時決定のポイント」過去問・健保-33

定時決定というのは、文字どおり毎年同じタイミングに行われるものなので、「何もなければ」、粛々とその業務が行われるものなのでしょう。

定時決定とは、7月1日現在で使用している全被保険者の4~6月の3ヶ月間の報酬月額を事業主が算定基礎届で届出をすることで、厚生労働大臣が毎年1回、標準報酬月額を決定することを指します。

決定された標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月に適用されます。

しかし、定時決定をするときに「何かあったらそのときはどうするの?」という論点が社労士試験で出題されるのですね。

今回は、そんな「定時決定」についての過去問を集めてみましたので見ていく事にしましょう。

最初の問題は、「定時決定が行われないケース」についての論点になっています。

 

定時決定の適用が除外されるのはどんなとき?

(平成29年問10D)

標準報酬月額の定時決定について、賃金計算の締切日が末日であって、その月の25日に賃金が支払われる適用事業所において、6月1日に被保険者資格を取得した者については6月25日に支給される賃金を報酬月額として定時決定が行われるが、7月1日に被保険者資格を取得した者については、その年に限り定時決定が行われない。

 

解説

解答:誤

「6月1日に被保険者資格を取得」したものについては、定時決定はありません。

定時決定が適用除外になるのは、

  1.  6月1日から7月1日までの間に被保険者の資格を取得した者
  2. 随時改定、育児休業等を終了した際の改定又は産前産後休業を終了した際の改定により7月から9月までのいずれかの月から標準報酬月額を改定され、又は改定されるべき被保険者

となります。

「1」が定時決定の適用除外になるのは、資格を取得したときに資格取得時決定をやっちゃうので、あらためて定時決定をする必要はないですよね。

「2」については、定時決定は9月から適用されるので、7月から9月までに随時改定などになったんだったらそれを適用しましょ、ということですね。

次の過去問は「一時帰休」についての問題で、一時帰休と定時決定のカラミについての論点になっています。

 

定時決定(4〜6月)の時期に一時帰休していたら?

(令和元年問9オ)

4月、5月、6月における定時決定の対象月に一時帰休が実施されていた場合、7月1日の時点で一時帰休の状況が解消していれば、休業手当等を除いて標準報酬月額の定時決定を行う。例えば、4月及び5月は通常の給与の支払いを受けて6月のみ一時帰休による休業手当等が支払われ、7月1日の時点で一時帰休の状況が解消していた場合には、6月分を除いて4月及び5月の報酬月額を平均して標準報酬月額の定時決定を行う。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

7月1日の時点で一時帰休の状況が解消していれば、休業手当等を除いて定時決定が行われます。

これは通達(昭和五〇年三月二九日 保険発第二五号・庁保険発第八号)からの解釈になるのですが、その通達によると、

「標準報酬の定時決定の対象月に一時帰休に伴う休業手当等が支払われた場合においては、その休業手当等をもつて報酬月額を算定し、標準報酬を決定すること。ただし、標準報酬の決定の際、既に一時帰休の状況が解消している場合は、当該定時決定を行う年の十月以後において受けるべき報酬をもつて報酬月額を算定し、標準報酬を決定すること。」

とあります。

つまり、一時帰休はしたが、すでにその状況が解消されている場合は、定時決定を行う年の10月以後の報酬(通常の賃金)で報酬月額で算定しなさい、とあります。

これを問題文に適用すると、「定時決定を行う年の10月以後の報酬→通常の賃金→休業手当を除いた4月、5月の通常の賃金」で定時決定を行う、というように解釈されます。

この通達をご覧になりたい方は、下にリンクを貼っておきますので、ご自由にご参考になさってくださいね。

 

参考記事:昭和五〇年三月二九日 保険発第二五号・庁保険発第八号

 

さて、次は介護休業をしていた時の取り扱いについての過去問を見ておきましょう。

介護休業手当をもらっていたとしたら、その金額で標準報酬月額を採用するのでしょうか。

 

介護休業をしていたときはどうなるの?

(令和元年問10E)

介護休業期間中の標準報酬月額は、その休業期間中に一定の介護休業手当の支給があったとしても、休業直前の標準報酬月額の算定の基礎となった報酬に基づき算定した額とされる。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

こちらも通達(平成一一年三月三一日 保険発第四六号・庁保険発第九号)にあるのですが、そこには、

介護休業期間中の標準報酬月額は、休業直前の標準報酬月額の算定の基礎となった報酬に基づき、算定した額とすること。」

と記載されています。

なので、介護休業をしているときは、その休業前の標準報酬月額を使うということですね。

こちらの通達もリンクを貼っておきますので、ご興味のある方はどうぞご覧ください。

 

参考記事:平成一一年三月三一日 保険発第四六号・庁保険発第九号

 

では最後に、定時決定に対象月である「4月〜6月」が、たとえば他の月に比べて繁忙期に当たっている、なんてときは、どうするのか、という論点をチェックしましょう。

その忙しい4〜6月のお給料の額を1年間の標準報酬にされたのではたまったものではないですもんね。泣

 

4〜6月が他の月と比べて報酬額が違うとき、定時決定はどうなる?

(平成27年問8E)

標準報酬月額の定時決定に際し、当年の4月、5月、6月の3か月間に受けた報酬の額に基づいて算出した標準報酬月額と、前年の7月から当年の6月までの間に受けた報酬の額に基づいて算出した標準報酬月額の間に2等級以上の差が生じ、この差が業務の性質上例年発生することが見込まれるため保険者算定に該当する場合の手続きはその被保険者が保険者算定の要件に該当すると考えられる理由を記載した申立書にその申立に関する被保険者の同意書を添付して提出する必要がある。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

これは問題文にもあるように、「保険者算定」に関する論点になるのですが、4月、5月、6月の3か月間に受けた報酬の額が、1年間の報酬の平均と比べて、2等級以上の差がある場合に、それが業務の性質上、例年発生することが見込まれるときは、保険者算定の対象になるのです。

保険者算定の対象になったときは、保険者算定の要件に該当すると考えられる理由を記載した申立書を被保険者の同意書と一緒に提出することになっています。

こちらも通達からの出題になっていますので、下にリンクを貼っておきますね。

 

参考記事:平成23年3月31日 /保保発0331第6号/年管管発0331第14号/

 

今回のポイント

  • 定時決定が適用除外になるのは、
    1.  6月1日から7月1日までの間に被保険者の資格を取得した者
    2. 随時改定、育児休業等を終了した際の改定又は産前産後休業を終了した際の改定により7月から9月までのいずれかの月から標準報酬月額を改定され、又は改定されるべき被保険者

    となります。

  • 7月1日の時点で一時帰休の状況が解消していれば、休業手当等を除いて定時決定が行われます。
  • 介護休業期間中の標準報酬月額は、休業直前の標準報酬月額の算定の基礎となった報酬に基づいて算定した額になります。
  • 4月、5月、6月の3か月間に受けた報酬の額が、1年間の報酬の平均と比べて、2等級以上の差がある場合に、それが業務の性質上、例年発生することが見込まれるときは、保険者算定の対象になります。

 

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