過去問

「労基法 年次有給休暇の本質を理解するためのマニュアル」過去問・労基-33

今回は、「年次有給休暇」についての過去問です。

一口に年次有給休暇といっても、社労士試験ではかなりの出題数があるので、今回は、年次有給休暇の根本的な主旨についての問題を集めてみました。

主旨を理解することで、たとえば細かい判例が出題されたとしても法律の基本的なスタンスが分かっていれば対応できることも少なくありません。

ですので、そういった基本的な過去問に繰り返し触れておくようにしましょう。

それでは最初の問題にいきましょう。

年次有給休暇の目的が論点になっていますが、年次有給休暇は間違っても「病気になったから取る」ものではない、ということですね。笑

 

年次有給休暇の目的

(平成26年問6A)

労働基準法第39条の趣旨は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、また、ゆとりある生活の実現にも資するという位置づけから、休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与えることにある。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

労働基準法には、年次有給休暇の目的は書いていませんが、厚生労働省ホームページに下記のように記載されています。

年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇のことです。

引用先:厚生労働省ホームページ

ですが、なかなか年次有給休暇の取得率が上がらないので、労働基準法が改正されて、2019年4月から

使用者は、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の全ての労働者に対して、毎年5日の年次有給休暇を取得させることが義務付けられましたよね。

なので、国は年次有給休暇を確実に取得してもらうことで労働者にリフレッシュしてもらおうとしているわけですね。

そういうことであれば、どうせ年次有給休暇を取るのであれば連休にしてもらえると、それだけリフレッシュできそうですが、規定ではどうなっているのでしょう。

次の過去問で見てみましょう。

 

年次有給休暇は連休でなければならない?

(平成22年問6A)

労働基準法第39条に定める年次有給休暇の趣旨は労働者の心身のリフレッシュを図ることにあるため、使用者は少なくとも年に5日は連続して労働者に年次有給休暇を付与しなければならない。

 

解説

解答:誤

残念ながら、年次有給休暇は「年に5日は連続して」付与しなければならないという規定はありません。

ここで、実際の条文を確認してみましょう。

 

(年次有給休暇)
法39条
1 使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。

 

とあります。

文中にもあるように、「継続し、または分割した10労働日」となっていますので、年次有給休暇は連休である必要はないんですね。

で、先述した、「1年に5日の年次有給休暇の取得」についても、同じく法39条の7項では、

 

赤字の部分だけ読んでいただいて大丈夫です。

7 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。(後略)

 

とあるように、こちらにも「連続して」という文言はありませんから、年次有給休暇は残念ながら連休でなければならないというわけではないようです。苦笑

さて、次は年次有給休暇の時期指定についての過去問です。

この過去問は時期指定についての論点になっていますが、これは単に時期指定の部分だけに限らず、年次有給休暇そのものの考え方になっています。

さっそく確認してみましょう。

 

年次有給休暇の時期指定は使用者の承認が必要?

(平成22年問6B)

労働者の時季指定による年次有給休暇は、労働者が法律上認められた休暇日数の範囲内で具体的な休暇の始期と終期を特定して時季指定をし、使用者がこれを承認して初めて成立するとするのが最高裁判所の判例である。

 

解説

解答:誤

「使用者がこれを承認して初めて成立」ではなく、年次有給休暇は、法律上当然に労働者に対して発生する権利で、時季を指定することで成立します。

この問題は、「白石営林署事件」という最高裁の判例からの出題なのですが、

労働者の方が有給休暇を取ったのですが、使用者はそれを認めず、賃金をカットしたため裁判になったのです。

判決では、

年次有給休暇は、

  1. 雇い入れの日から6か月経過していること
  2. その期間の全労働日の8割以上出勤していること

を満たせば、労働者は年次有給休暇を使う権利が当然発生することが前提となっていて、労働者が

「この日は有給休暇取ります」

と言った場合に、

使用者が、時期変更権を行使しなければそのまま年次有給休暇は成立する、となっています。

なので、問題文にあるように、「使用者がこれを承認して初めて成立する」というのは間違いなわけです。

では最後に、「年次有給休暇はいつ取れるのか」という論点で下の過去問を見てみましょう。

休職者は年次有給休暇取れるのでしょうか。。。

 

休職者はそもそも年次有給休暇を取れないの?

(平成28年問7B)

休職発令により従来配属されていた所属を離れ、以後は単に会社に籍があるにとどまり、会社に対して全く労働の義務が免除されることとなる場合において、休職発令された者が年次有給休暇を請求したときは、労働義務がない日について年次有給休暇を請求する余地がないことから、これらの休職者は年次有給休暇請求権の行使ができないと解されている。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

年次有給休暇というのは、そもそも仕事のある日に対して「休みます」という性質のものです。

なので、もともと会社が休みの日なのに、年次有給休暇を取ることはできませんし、取らせることもできません。

問題文の場合もそれと同じ理屈で、休職していてそもそも働いてなくて、労働日がないところへ「年次有給休暇を取ります」というのは年次有給休暇の主旨とは合わないわけですね。

これは、通達(昭31年2月13日基収489号)にもあって、

 

休職発令により従来配属されていた所属を離れ、以後は単に会社に籍があるにとどまり、会社に対して全く労働の義務が免除されることとなる場合において、休職発令された者が年次有給休暇を請求したときは、労働義務がない日について年次有給休暇を請求する余地がないことから、これらの休職者は、年次有給休暇請求権の行使ができない。

 

となっています。

年次有給休暇は、「仕事の日に休む」というのが元来の考え方なのですね。

 

今回のポイント

  • 年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことです。
  • 使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければなりません。(連続して付与する必要はありません。)
  • 年次有給休暇は、法律上当然に労働者に対して発生する権利で、時季を指定することで成立します。
  • 年次有給休暇は、労働義務がない日について請求する余地がないので、休職者が年次有給休暇を取ることはできません。

 

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