高年齢被保険者(高年齢受給資格者)の求職者給付は、同じ求職者給付でも一般被保険者とは一線を画すほど違いがあります。
なので、誤解を恐れずにいうと、一般被保険者とは別物と思っておいた方がいいかもしれません。
逆にいうと、明確に違うところが多いので、ごちゃごちゃにならず覚えやすいかもしれませんね。
では早速見ていくことにしましょう。
最初の問題は、高年齢受給資格者が失業の認定を受けるときに必要な書類についての論点です。
どんな書類が必要になるのでしょうか。
高年齢受給資格者が失業の認定に必要な書類は?
(平成24年問5E)
高年齢受給資格者は、失業の認定を受けようとするときは、失業の認定日に、管轄公共職業安定所に出頭し、失業認定申告書(様式第14号)に住民票記載事項証明書を添えて、提出しなければならない。
解説
解答:誤
「失業認定申告書」ではなく、「高年齢受給資格者失業認定申告書」です。
それに、「住民票記載事項証明書」ではなく、「高年齢受給資格者証」になります。
高年齢受給資格者が、失業の認定を受けようとするときは、失業の認定日に、高年齢受給資格者失業認定申告書に高年齢受給資格者証を添えて、提出しなければなりません。
ちなみに、一般の受給資格者が失業の認定を受けるときは、「失業認定申告書」と「受給資格者証」を提出するので、「高年齢」の文字がついただけですね。
で、その失業の認定は、一般の受給資格者であれば4週間に1回ずつ受ける必要がありますが、高年齢受給資格者はどうなのでしょうね。
高年齢受給資格者の失業の認定のスパンは?
(平成29年問5D)
高年齢求職者給付金の支給を受けようとする高年齢受給資格者は、公共職業安定所において、離職後最初に出頭した日から起算して4週間に1回ずつ直前の28日の各日について、失業の認定を受けなければならない。
解説
解答:誤
高年齢受給資格者の、高年齢求職者給付金の支給を受けるための失業の認定は1回限りです。
高年齢求職者給付金は1回限りの一時金なので、失業の認定は、1回で十分なのです。
そういうわけなので、極端な話、失業の認定を受けた直後に再就職をすることだってありうるわけですよね。
そのようなことがことが起きた場合、高年齢求職者給付金がどうなるのかが、次の過去問です。
高年齢求職者給付金を受けたあと就職したけど返還しなきゃダメ?
(平成29年問5A)
高年齢求職者給付金の支給を受けた者が、失業の認定の翌日に就職した場合、当該高年齢求職者給付金を返還しなければならない。
解説
解答:誤
問題文の場合でも、高年齢求職者給付金を返還する必要はありません。
これは取扱要領からの出題なのですが、それによると、
「高年齢求職者給付金というのは、基本手当等と異なり、失業している日数に対応して支給されるものでなく、失業の状態にあれば支給されるものである。すなわち、失業の認定の日に失業の状態にあればよいのであり、翌日から就職したとしても返還の必要はない」
となっています。
ちなみに、高年齢求職者給付金を返還する必要がないことの代償というわけではないでしょうが、先ほどの続きには、こんなことが書かれています。
「なお、高年齢受給資格者に対しては、基本手当、各種延長給付(訓練延長給付、広域延長給付及 び全国延長給付)、技能習得手当、寄宿手当及び傷病手当の支給がなされないのは当然であり、また、就業促進手当(常用就職支度手当を除く)も支給されない。」
と書かれています。苦笑
これについての過去問もありますので確認しておきましょうか。
高年齢受給資格者は傷病手当を受けることができない!
(平成29年問5B)
疾病又は負傷のため労務に服することができない高年齢被保険者は、傷病手当を受給することができる。
解説
解答:誤
高年齢被保険者はもちろん、高年齢受給資格者も、傷病手当を受給することができません。
傷病手当は求職者給付なので、失業をしていない被保険者の段階では受けることができません。
(健康保険の傷病手当金であれば可能性ありますが。)
で、受給資格者となっても傷病手当は、一般受給資格者に対しての手当なので、高年齢受給資格者は傷病手当を受けることはできません。
出題の根拠となっている「取扱要領54201」をご覧になりたい方は下のリンクからどうぞ。
参考記事:取扱要領 P4 54201(1)概要
次は、高年齢求職者給付金の受給期限についての問題です。
一般の受給資格者の受給期限は1年でしたが、、、?
高年齢求職者給付金の受給期限は?
(平成24年問5A)
高年齢求職者給付金の支給を受けることができる期限は、高年齢受給資格に係る離職の日の翌日から起算して6か月を経過する日である。
解説
解答:誤
高年齢求職者給付金の支給を受けるためには、離職の日の翌日から起算して1年を経過する日までに、公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをした上、失業していることについての認定を受けなければなりません。
ただ、一般に被保険者であれば、妊娠、出産、育児などの理由で引き続き30日以上職業につくことができない場合は、受給期間の延長はありますが、高年齢求職者給付金の受給期限については、延長されることはありません。
なので、手続きに行くのがギリギリになってしまうとどうなるのか、次の過去問で見てみましょう。
遅くなると高年齢求職者給付金が減額されてしまう悲しい現実
(平成24年問5B)
高年齢受給資格者であるXの当該高年齢受給資格に係る算定基礎期間が15か月である場合、Xが支給を受けることのできる高年齢求職者給付金の額は、基本手当の日額の50日分に相当する額を下回ることはない。
解説
解答:誤
基本手当の日額の50日分に相当する額を「下回ることはない」のではなく、「下回ることがある」のです。
つまり、高年齢求職者給付金の額がどうなっているのかというと、
- 算定基礎期間が1年以上→50日×基本手当の日額
- 〃 1年未満→30日×基本手当の日額
なのですが、
失業の認定日から受給期限の最後の日までの日数が、支給日数に満たない場合には、その受給期限までの日数分だけの額が高年齢求職者給付金となるのです。
つまり、問題文のように50日分の高年齢者求職者給付金がもらえるはずなのに、失業の認定を受けるのが遅くなってしまって、失業の認定日から受給期限日までが50日を切ってしまっている場合は、
失業認定日から受給期限日までの日数が、高年齢求職者給付金の金額になってしまうのです。
まあ、給付を受給期間内に受けなければいけないのは、一般の受給資格者の基本手当も同じですけどね。笑
今回のポイント
- 高年齢受給資格者が、失業の認定を受けようとするときは、失業の認定日に、高年齢受給資格者失業認定申告書に高年齢受給資格者証を添えて、提出しなければなりません。
- 高年齢受給資格者の、高年齢求職者給付金の支給を受けるための失業の認定は1回限りです。
- 高年齢求職者給付金は、失業の認定の日に失業の状態にあればよいので、翌日から就職したとしても返還の必要はありません。
- 高年齢受給資格者には、基本手当、各種延長給付、技能習得手当、寄宿手当及び傷病手当、就業促進手当(常用就職支度手当を除く)は支給されません。
- 高年齢求職者給付金の支給を受けるためには、離職の日の翌日から起算して1年を経過する日までに、公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをした上、失業していることについての認定を受けなければなりません。
- 受給期限の最後の日までの日数が、支給日数に満たない場合には、その受給期限までの日数分だけの額が高年齢求職者給付金となるのです。
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