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【ふわっと全科目を眺める】「社労士試験 労基法 前近代的な労働の排除」過去問・労基-80

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なぜかというと、早いうちに全科目に触れておくことで、社労士試験の全容がイメージしやすくなり、勉強のペースが掴みやすくなるからです。

なので、あまり構えずに「ふ〜ん、そうなんだ」くらいの気軽な気持ちで読んでみてくださいね。

今回は、労基法から「前近代的な労働の排除」について見てみたいと思います。

「前近代的な労働」というのは、労働者を脅迫などで縛りつけ、労働者の意思に反して働かせることを指します。

たとえば、借金をカタに過酷な労働をさせる、というような一昔前の労働環境ですね。

これを労働基準法では色々な規定で禁止しているのです。

たとえば、最初の過去問では、「強制労働の禁止」が論点になっていますが、

労働者をどのような手段で拘束をすることが不当になるのかを見ていきましょう。

 

強制労働における「不当」の意味

(令和2年問4B)

労働基準法第5条に定める「精神又は身体の自由を不当に拘束する手段」の「不当」とは、本条の目的に照らし、かつ、個々の場合において、具体的にその諸条件をも考慮し、社会通念上是認し難い程度の手段をいい、必ずしも「不法」なもののみに限られず、たとえ合法的であっても、「不当」なものとなることがある。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

労基法第5条では、労働者を不当に拘束することで労働を強制することを禁止していて、

この「不当」の程度は、不法なものばかりでなく、社会通念上認められ難いものも対象になります。

なので、たとえば実際に言葉に出して脅迫しなくても、暗示する程度のものでも労働者の意思に反して労働している状態であれば、5条違反の可能性があります。

次に、第6条では、原則として業として他人の就業に介入して利益を得ることを禁止していますが、

これは、労働者の賃金をピンハネすることを防ぐための規定です。

なので、法律によって許されている場合でないとアウトというわけなのですが、

法律によって許されていないのに、業として利益を得ていた場合、どのような状態が法違反となるのでしょうか。

 

業として利益を得ることが違法になる程度

(平成29年問5ウ)

労働基準法第6条は、法律によって許されている場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得てはならないとしているが、「業として利益を得る」とは、営利を目的として、同種の行為を反覆継続することをいい、反覆継続して利益を得る意思があっても1回の行為では規制対象とならない。

 

解説

解答:誤り

業として利益を得る」行為は、1回の行為であっても、反復継続して利益を得る意思があれば規制の対象となります。

ちなみに、この場合の「利益」は、手数料、報償金など名称を問わず、有形か無形かも関係ありません。

また、使用者から利益を得る場合だけに限らず、労働者や第三者から利益を得る場合も対象となっています。

次に、違約金損害賠償額の予定について見てみましょう。

労基法第16条では、上記の契約をすることを使用者に対して禁止していますが、

それがなぜ規制されるのかが次の問題で問われていますので確認しましょう。

 

違約金や賠償予定額の禁止の意義

(平成25年問6D)

労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金を定め又は損害賠償額を予定する契約をすることを使用者に禁止しているが、その趣旨は、このような違約金制度や損害賠償額予定の制度が、ともすると労働の強制にわたり、あるいは労働者の自由意思を不当に拘束し、労働者を使用者に隷属させることとなるので、これらの弊害を防止しようとする点にある。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

労働契約の不履行について、労働者に対して違約金を定めたり、損害賠償額を予定すると、労働者を不当に足止めすることにつながるため禁止されています。

たとえば、「会社に損害を与えたら罰金100万円」というような具合ですね。

ですが、労働者が使用者に対して損害を与えた場合、使用者は労働者に対して損害賠償請求をすることはできないのでしょうか。

 

現実に生じた損害については?

(平成30年問5B)

債務不履行によって使用者が損害を被った場合、現実に生じた損害について賠償を請求する旨を労働契約の締結に当たり約定することは、労働基準法第16条により禁止されている。

 

解説

解答:誤り

労基法第16条で禁止しているのは損害賠償額を「予定」する契約をすることを禁じていますが、実際に生じた損害賠償請求をすることまでは禁じていません

たとえば、労働者の不注意で社用車で事故を起こして損害が生じた場合、使用者は労働者に対して損害賠償を請求することができます。

ただし、生じた損害の全額を請求できるかどうかは別のお話にはなりますが。。。

では最後に、借金の賃金からの相殺について確認しましょう。

労基法第17条ですが、労働者が使用者から借りているお金について、使用者が労働者から返済してもらうために賃金から相殺することを禁じています。

その理由について下の問題で聞いていますので読んでみましょう。

 

賃金の相殺を禁じているワケ

(平成27年問3D)

労働基準法第17条は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金とを相殺することを禁止し、金銭貸借関係と労働関係とを完全に分離することにより金銭貸借に基づく身分的拘束の発生を防止することを目的としたものである。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

労働者と使用者との間の借金と、労働者の労働に対して使用者が支払う賃金は別物なので、きちんと分けましょう、というのが法第17条の考え方です。

なので、使用者は、労働者に対して賃金を全額支払い、労働者は受け取った賃金からあらためてお金を返す、という手順になりますね。

 

今回のポイント

  • 労基法第5条では、労働者を不当に拘束することで労働を強制することを禁止していて、この「不当」の程度は、不法なものばかりでなく、社会通念上認められ難いものも対象になります。
  • 労基法第6条でいうところの「業として利益を得る」行為は、1回の行為であっても、反復継続して利益を得る意思があれば規制の対象となります。
  • 労基法第16条では、労働契約の不履行について、労働者に対して違約金を定めたり、損害賠償額を予定すると、労働者を不当に足止めすることにつながるため禁止されています。
  • ただ、実際に生じた損害賠償請求をすることまでは禁じていません
  • 労働者と使用者との間の借金と、労働者の労働に対して使用者が支払う賃金は別物なので、きちんと分けましょう、というのが法第17条の考え方です。

 

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