過去問

『社労士試験 労災保険法 「適用」についてどれだけ押さえることができていますか?』過去問・労災-64

今回は、労災保険の一番の基礎となる「適用」についてとりあげたいと思います。

労働者がどんな人なのか、どんな仕事をしているのかなどによって労災保険の取り扱いが変わってきます。

また、雇用保険との違いも出てきますので一つ一つ見ていくことにしましょう。

それでは最初の問題を見ていきますね。

この過去問は、公務員がテーマになっています。

労災保険法においてどんな公務員が適用除外になるのか確認していきますね。

 

労災保険が適用除外になるのは

(平成29年問4D)

労災保険法は、国の直営事業で働く労働者には適用されない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

労災保険法では、労働者を使用する事業を適用事業としますが、

国の直営事業官公署の事業適用除外となります。

つまり、公務員は適用除外になるイメージですね。

しかし、公務員であっても労災保険が適用される場合があります。

それはどういうことなのか次の問題で確認しましょう。

 

公務員でも労災保険が適用されるケースとは

(平成29年問4A)

労災保険法は、市の経営する水道事業の非常勤職員には適用されない。

 

解説

解答:誤り

問題文の場合は、労災保険が適用されます。

公務員でも、非常勤地方公務員現業部門で働く人については労災保険が適用されます。

現業というのは、役所で事務をしている仕事ではなく、平たくいうと問題文のような現場仕事のことを指しています。

ちなみに、国家公務員は全て労災保険の適用除外になっています。

では、次は一般企業の方へ視点を移しましょう。

下の問題では「出向」がテーマになっています。

出向というと一人の労働者に対して出向元事業場と出向先事業場の2つの事業場が登場します。

この労働者はどちらの事業場の労災保険が適用されるのかが論点になっていますので見てみましょう。

 

出向労働者と労災保険

(平成27年問5C)

出向労働者が、出向先事業の組織に組み入れられ、出向先事業場の他の労働者と同様の立場(身分関係及び賃金関係を除く。)で、出向先事業主の指揮監督を受けて労働に従事し、出向元事業主と出向先事業主とが行った契約等により当該出向労働者が出向元事業主から賃金名目の金銭給付を受けている場合に、出向先事業主が当該金銭給付を出向先事業の支払う賃金として当該事業の賃金総額に含め保険料を納付する旨を申し出たとしても、当該金銭給付を出向先事業から受ける賃金とみなし当該出向労働者を出向先事業に係る保険関係によるものとして取り扱うことはできないこととされている。

 

解説

解答:誤り

問題文の場合、お給料は出向元から出ているとしても、出向先事業の保険関係として取り扱うことができます。

出向労働者が出向元と出向先のどちらの保険関係にあるのかについては、

出向の目的や出向元事業主と出向先事業主とが出向労働者の出向について行なった契約

出向先事業における出向労働者の労働の実態などによってに基づいて、

その労働者の労働関係の所在を判断して決定することになっています。

そんな中で、問題文のように出向労働者のお給料が出向元から出ている場合でも、

出向先がそのお給料を賃金総額に含めて労働保険料を算出して納付することを申し出た時は、

その出向労働者は出向先の事業場の保険関係に入るものとして取り扱われることになります。

ちなみに、移籍型の出向の場合は、出向元との労働契約が切れているので、出向労働者は出向先の保険関係に普通に入りますね。

さて、次は建設現場のケースを見てみましょう。

大きな規模の工事になると、一つの建設会社だけで工事を行うのではなく、2つ以上の建設会社が共同で行ったりするケースも出てきます。

これをジョイントベンチャー(JV)と言ったりしますが、そもそも違う会社が一つの現場に入っているわけですが、

労災保険はどのように取り扱われるのでしょう。

下の問題で確認しますね。

 

共同企業体の場合、労災保険の適用は?

(平成26年問2ア)

共同企業体によって行われる建設事業において、その全構成員が各々資金、人員、機械等を拠出して、共同計算により工事を施工する共同施工方式がとられている場合、保険関係は、共同企業体が行う事業の全体を一の事業とし、その代表者を事業主として成立する。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

建設事業で共同施工方式がとられている場合、保険関係については、共同企業体が行う事業を一つの事業として、

その代表者を事業主とするということになっています。

建設事業の場合は、有期事業なので工事が完成するとその事業は終了しますから、その間だけの措置ということになりますね。

では最後に、一人の労働者が二つの仕事をしている場合について確認しましょう。

こちらについては、法改正で複数事業労働者と呼ばれるようになりましたが、

保険関係についてどのような扱いになっているのか見てみましょう。

 

副業をしていたら労災保険はどうなる?

(平成26年問2エ)

2以上の労災保険適用事業に使用される労働者は、それぞれの事業における労働時間数に関係なくそれぞれの事業において、労災保険法の適用がある。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

2以上の適用事業に使用される労働者は、それぞれの保険関係に適用されます。

これは労働時間に関係ありません。

ちなみに、雇用保険法では取り扱いが違ってきます。

雇用保険では、2つ以上の雇用関係があっても、労働者が生計を維持するのに必要は主たる賃金を受ける雇用関係についてのみ被保険者として扱われますので区別しておきたいですね。

 

今回のポイント

  • 労災保険法では、労働者を使用する事業を適用事業としますが、国の直営事業官公署の事業適用除外となります。
  • 公務員でも、非常勤地方公務員現業部門で働く人については労災保険が適用されます。
  • 出向労働者が出向元と出向先のどちらの保険関係にあるのかについては、出向の目的や出向元事業主と出向先事業主とが出向労働者の出向について行なった契約、出向先事業における出向労働者の労働の実態などによってに基づいて、その労働者の労働関係の所在を判断して決定することになっています。
  • 建設事業で共同施工方式がとられている場合、保険関係については、共同企業体が行う事業を一つの事業として、その代表者を事業主とするということになっています。
  • 2以上の適用事業に使用される労働者は、労働時間に関係なくそれぞれの保険関係に適用されます。

 

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