今回は、基本手当の受給資格を得るための要件について見てみたいと思います。
基本手当を受けるためには、原則として、被保険者が失業した場合に、離職の日以前2年間である算定対象期間に、被保険者期間が通算して12か月以上必要です。
しかし、現実には色々なことが起きるので、それに対する規定が色々とあるわけです。
その規定がどのようになっているのかを確認しましょう。
最初の過去問は、疾病や負傷などの理由で欠勤した場合の算定対象期間の取り扱いが論点になっていますので見ていきますね。
疾病、負傷などの理由によって欠勤した場合の算定対象期間は?
(平成26年問1C)
被保険者であった者が、離職の日まで業務外の事由による傷病のため欠勤し引き続き6か月間賃金を受けていなかった場合、雇用保険法第13条第1項にいう「離職の日以前2年間」は、2年間にその6か月間を加算した期間となる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
基本手当は、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上であったときに支給されることになっていますが、
疾病や負傷などの理由で引き続き30日以上賃金の支払を受けることができなかった場合は、
賃金の支払を受けることができなかった日数を2年に加算した期間が算定対象期間になります。
それでは、次に被保険者期間が1ヶ月として算入されるための条件について見てみましょう。
被保険者期間に算入されるための要件
(平成23年問2B)
被保険者が平成23年7月31日に離職し、同年7月1日から7月31日までの期間に賃金支払の基礎になった日数が13日あった場合、当該期間は1か月として被保険者期間に算入される。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
基本手当を受けるために必要な12か月の被保険者期間ですが、1か月の被保険者期間として計算されるには、賃金の支払の基礎となった日数が11日以上である必要があります。
ちなみに、法改正により賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上であるものも1か月として計算することになりました。
さて、雇用保険の被保険者資格が二重に取得されていたとしたら、算定対象期間の取り扱いはどうなるのでしょうか。
どちらの被保険者期間が採用されるのでしょうか。
二重に被保険者の資格を取得していた場合の取り扱い
(令和元年問1C)
二重に被保険者資格を取得していた被保険者が一の事業主の適用事業から離職した後に他の事業主の適用事業から離職した場合、被保険者期間として計算する月は、前の方の離職の日に係る算定対象期間について算定する。
解説
解答:誤り
問題文の場合、後の方の離職のにかかる算定対象期間について算定されることになります。(業務取扱要領50103)
さて、最後に被保険者となった日よりも前に受給資格や特例受給資格を取得したことがある場合に、
被保険者期間が通算されるのかを見ておきましょう。
次の問題では、特例受給資格が論点になっています。
被保険者となる前に受給資格を得ていた場合の被保険者期間の扱い
(令和元年問1A)
最後に被保険者となった日前に、当該被保険者が特例受給資格を取得したことがある場合においては、当該特例受給資格に係る離職の日以前における被保険者であった期間は、被保険者期間に含まれる。
解説
解答:誤り
問題文の場合、被保険者期間に含まれないので誤りです。
被保険者期間を計算するときに、最後に被保険者になった日よりも前に、被保険者が受給資格や、特例受給資格、高年齢受給資格を取得したことがある場合は、それらの受給資格ににかかる被保険者であった期間は、被保険者期間に含まれません。
この規定は、基本手当などを受けていなくても受給資格、特例受給資格、高年齢受給資格を得ただけでアウトになりますので注意が必要です。
それでは最後に、被保険者の資格取得の届出がなされていなかったために、
本来であれば、被保険者期間として認められない期間について特例が認められることがありますので、
どのような規定になっているのか確認しましょう。
被保険者期間の特例
(令和元年問1E)
雇用保険法第9条の規定による被保険者となったことの確認があった日の2年前の日前における被保険者であった期間は被保険者期間の計算には含めないが、当該2年前の日より前に、被保険者の負担すべき額に相当する額がその者に支払われた賃金から控除されていたことが明らかである時期がある場合は、その時期のうち最も古い時期として厚生労働省令で定める日以後の被保険者であった期間は、被保険者期間の計算に含める。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
被保険者の資格取得の届出がなされていなかったものの、被保険者に支払われた賃金から保険料が控除されていた場合は、
賃金から控除された最も古い日以後を被保険者期間として含まれることになります。
事業主が、被保険者の資格取得の届出をしていなかったとしても、お給料から雇用保険料を控除されていたのであれば、被保険者期間として認めるということですね。
今回のポイント
- 基本手当は、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上であったときに支給されることになっていますが、疾病や負傷などの理由で引き続き30日以上賃金の支払を受けることができなかった場合は、賃金の支払を受けることができなかった日数を2年に加算した期間が算定対象期間になります。
- 1か月の被保険者期間として計算されるには、賃金の支払の基礎となった日数が11日以上である必要があります。
- 二重に被保険者資格を取得していた被保険者が一の事業主の適用事業から離職した後に他の事業主の適用事業から離職した場合は、被保険者期間として計算する月は、後の方の離職の日に係る算定対象期間について算定することになります。
- 被保険者期間を計算するときに、最後に被保険者になった日よりも前に、被保険者が受給資格や、特例受給資格、高年齢受給資格を取得したことがある場合は、それらの受給資格ににかかる被保険者であった期間は、被保険者期間に含まれません。
- 被保険者の資格取得の届出がなされていなかったものの、被保険者に支払われた賃金から保険料が控除されていた場合は、賃金から控除された最も古い日以後を被保険者期間として含まれることになります。
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