過去問

「社労士試験 労働に関する一般常識 これだけはマスターしておきたい労働組合法の要点」過去問・労一−25

憲法28条では、団結権・団体交渉権・団体行動権の労働三権が認められていますが、

労働者は、団結することで労働組合を結成して、自分たちの労働条件の向上のために使用者と団体交渉を行い、

時にはストライキという形で団体行動権を行使しているわけですね。

この労働三権を具体的に保障しているのが労働組合法ということになるのですが、

社労士試験でも頻出の法律になっていますので見ていくことにしましょう。

最初の問題は、労働組合の定義が論点になっています。

労働組合の目的に注目しながら確認していきましょう。

 

労働組合の定義とは

(平成26年問2E)

労働組合法に定める労働組合とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを目的として組織する団体又はその連合団体をいうとされており、政治運動又は社会運動を目的とする団体又は連合団体はおよそ労働組合法上の労働組合とは認められない。

 

解説

解答:誤り

労働組合法でいうところの労働組合は、政治運動や社会運動が目的になっている団体などがアウト、というわけではなく、

「主として」政治運動又は社会運動を目的とする団体などは労働組合にはなりません。

労働組合の主たる目的は、労働者の労働条件の維持改善や経済的地位の向上にあるわけですからね。

問題文が少し長いので、読み飛ばしてしまいそうになりますから、問題文は慎重に読むクセをつけておきたいです

ということで次は、労働組合とその組合員の関係について見ておきましょう。

労働組合は、組合員をまとめるためにある程度の権限を持っているわけですが、

どこまでの拘束力を持っているのか、というのが次の問題の論点になっているので読んでみましょう。

 

労働組合と組合員の関係性

(平成24年問2C)

労働組合は、組合員に対する統制権の保持を法律上認められ、組合員はこれに服し、組合の決定した活動に加わり、組合費を納付するなどの義務を免れない立場に置かれるものであるが、それは、組合からの脱退の自由を前提として初めて容認されることであるとするのが、最高裁判所の判例である。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

これは、「東芝労働組合小向支部・東芝事件」と呼ばれる最高裁の判例ですが、

ある労働者が労働組合に入っていたのですが、不満があったので、別の労働組合に移ろうとしたところ、

保留扱いにされてしまい、その労働組合を抜けることができず、不利益を被ったということで裁判になりました。

判決によると、労働組合は、組合員である労働者の労働条件を向上させる目的を果たすために、組合員に対してある程度の統制を敷くことは当然だけど、

労働組合を自由に抜けることを許さないのは公序良俗に反するということになったのです。

では、上記のように一つの事業場に対して2つ以上の労働組合がある場合、使用者側はどのように対応することが求められているのでしょうか。

 

一つの事業場に複数の労働組合があったとき使用者は?

(平成23年問5B)

労働組合法に関して、一の工場事業場に複数の労働組合がある場合においては、使用者は、当該工場事業場の労働者の過半数で組織する労働組合とのみ誠実に団体交渉を行う義務を負う。

 

解説

解答:誤り

一つの事業場に複数の労働組合がある場合、使用者は、それぞれの労働組合に対して誠実に団体交渉を行う必要があります。

労働者の過半数で組織されている労働組合とは、36協定を交わしたりはしますが、

団体交渉はそれぞれきちんと行いなさいということですね。

たとえ規模が小さい労働組合でも団体交渉権が保障されているので、使用者も無視はできないわけです。

では、複数の労働組合に対する使用者への規定についてもう一問見ておきましょう。

先ほどの問題とは少しニュアンスが違いますが、考え方は同じなので確認していきますね。

 

一つの事業場に複数の労働組合があったとき使用者は? その2

(平成28年問2C)

同一企業内に複数の労働組合が併存する場合には、使用者は団体交渉の場面に限らず、すべての場面で各組合に対し中立的態度を保持しなければならないとするのが、最高裁判所の判例である。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

これは、日産自動車事件という最高裁の判例ですが、労働時間について多数派の労働組合としか協議せず、少数派の労働組合には全く協議していませんでした。

判決では、使用者は、それぞれの労働組合に対して中立的態度でいなければならず、それぞれの労働組合が持っている団結権をきちんと尊重しなさい、ということになったわけです。

では最後に、使用者が行うロックアウト(事業場の閉鎖)について見ておきましょう。

労働組合には、仕事をしないという形のストライキ(同盟罷業)がありますが、

使用者にもロックアウトして労働者を事業場に入れなくする措置があります。

労働者に仕事をさせないことになるので、賃金の取り扱いがどうなるのか、が下の問題の論点になっていますので見てみましょう。

 

使用者が行うロックアウトの効果

(令和2年問4E)

いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)は、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、それによって使用者側の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、衡平の見地からみて労働者側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認められる場合には、使用者の正当な争議行為として是認され、使用者は、いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)が正当な争議行為として是認される場合には、その期間中における対象労働者に対する個別的労働契約上の賃金支払義務を免れるとするのが、最高裁判所の判例である。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

先ほど述べた、ストライキロックアウトは労働組合法では「争議行為」と呼ばれますが、

ロックアウトが争議行為として認められる場合は、使用者は労働者に対して賃金を支払う必要はありません。

ちなみに、労働者が自分の事業場でストライキをする日に対して年次有給休暇を取れるのか、という話もありますが、

ストライキは、労働者が労働を放棄する形になるので、労働日とは言えず、有給休暇は使えませんので、合わせて押さえておくといいですね。

 

今回のポイント

  • 労働組合とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを目的として組織する団体またはその連合団体を指しますので、「主として」政治運動または社会運動を目的とする団体などは労働組合にはなりません。
  • 判例では、労働組合は、組合員である労働者の労働条件を向上させる目的を果たすために、組合員に対してある程度の統制を敷くことは当然のことではありますが、労働組合を自由に抜けることを許さないのは公序良俗に反するということになっています。
  • 一つの事業場に複数の労働組合がある場合、使用者は、それぞれの労働組合に対して誠実に団体交渉を行う必要があります。
  • ストライキロックアウトは労働組合法では「争議行為」と呼ばれますが、ロックアウトが争議行為として認められる場合は、使用者は労働者に対して賃金を支払う必要はありません。

 

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