賃金の支払について、労働基準法では下記のように規定されています。
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賃金は、通貨で、直接、その全額を支払わなければなりません。
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賃金は、毎月1回以上、一定の期日を決めて支払わなければなりません。
赤字で書いてある要素が、いわゆる「賃金支払の5原則」となります。
今回は、そのう賃金支払の5原則についての過去問を確認しましょう。
通貨払の原則の例外ってなんだったっけ?
(令和元年問5A)
労働基準法第24条第1項は、賃金は、「法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、通貨以外のもので支払うことができる。」と定めている。
解説
解答:誤
通貨払の原則の例外は、“法令に別段の定めがある場合又は「労働協約」に別段の定めがある場合”です。
問題文には「当該事業場の労働者の過半数で〜」とありますが、これは労使協定のことを指しています。
ちなみに、労働協約による通貨払の例外の範囲は、労働協約の適用を受ける労働者に限定されます。
では、労使協定はどんな場面で登場するのでしょうか?
労使協定が適用されるのは、「全額払の原則」です。
上記の「通過払の原則」とごちゃごちゃにならないよう覚えましょう。
それでは、次の問題です。
支払日はちゃんと決めてますけど?
(令和元年問5C)
労働基準法第24条第2項にいう「一定の期日」の支払については、「毎月15日」等と暦日を指定することは必ずしも必要ではなく、「毎月第2土曜日」のような定めをすることも許される。
解説
解答:誤
この一定期日の考え方は、その日が特定されていること、その期日が周期的に到来すること、が必要です。
つまり、問題文にあるように「毎月第2土曜日」としてしまうと、月によって「7日」だったり「13日」だったりするわけで、周期的とはとても言えませんよね。
そこまでバラツキがあると、お給料をもらう方も困ってしまいます。
ただ、支払日が休日の場合に、支払日を繰り上げたり繰り下げることは大丈夫です。
たとえば、土日が休日の場合に、金曜日にお給料を支給するのはオーケーです。
次に、賃金は1円の誤差もなく支払わなければ「全額払の原則」に違反するのでしょうか?
端数もきっちり払います!・・・?
(平成25年問3B)
1日及び1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること、1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合に、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること並びに1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合に、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げることは、いずれも労働基準法第24条及び第37条違反としては取り扱わないこととされている。
解説
解答:誤
文頭の「1日及び1か月」は「1か月」です。
端数の処理は下記であれば大丈夫です。
① 1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。
② 1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
③ 1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、②と同様に処理すること。
④ 1か月の賃金額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した残額)に100円未満の端数が生じた場合は50円未満の端数を切り捨て、50円以上の端数を100円に切り上げて支払うこと。
⑤ 1か月の賃金額に1000円未満の端数がある場合は、その端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと。
今回のポイント
- 賃金支払の5原則・・・通貨・直接・全額・毎月1回以上・一定の期日
- 通貨払の原則の例外は、“法令に別段の定めがある場合又は「労働協約」に別段の定めがある場合”です。
- 一定期日の考え方は、その日が特定されていること、その期日が周期的に到来すること、が必要です。
- 端数処理は上記のとおり。
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