今回は高齢者雇用安定法と障害者雇用促進法を取り上げてみましたが、どちらの法律も数字が論点になりやすいですね。
たとえば、高齢者雇用安定法なら定年の年齢、障害者雇用促進法であれば障害者雇用率などですね。
必ずしも出題率が高いわけではありませんが、知識があやふやのまま本試験場に行くのは不安ですよね。
これを機会に、この二つの法律の論点に馴染んでおきましょう。
ではまず高齢者雇用安定法から見ていきましょう。
定年の年齢に制限はある?
(平成26年問2B)
高年齢者雇用安定法は、事業主に、定年年齢を定める場合には65歳以上とすることを義務づけている。
解説
解答:誤
高年齢車雇用安定法では、事業主が定年の定めをするときは「65歳以上」ではなく、「60歳を下回ることができない」のです。
つまり、定年制を敷く場合、その年齢については60歳未満に設定することができません。
ただし、坑内作業の業務についてはその限りではありません。
やはり、それだけ体力的に大変な仕事なのでしょうね。
で、たとえば定年を60歳にしたとしても、事業主は65歳までの安定した雇用を確保する必要がありますが、
労働者を継続雇用するときのルールについて次の問題で確認しましょう。
継続雇用されるには基準がある??
(令和元年問4B)
65歳未満の定年の定めをしている事業主が、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、新たに継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。)を導入する場合、事業主は、継続雇用を希望する労働者について労使協定に定める基準に基づき、継続雇用をしないことができる。
解説
解答:誤
継続雇用をする基準を労使協定を結んで「継続雇用をしないことができる」わけではなく、継続雇用制度を採用する場合、希望者全員を引き続き雇用しなければなりません。
ちなみに、上記のような高年齢者雇用確保の措置に事業主が違反している場合、厚生労働大臣は必要な指導や助言をすることができます。
で、指導や助言をしても違反がなおらない場合、厚生労働大臣は事業主に対して勧告をすることができ、事業主が勧告にも従わなかった時は、大臣はその旨を公表することができます。
また、令和3年4月に高年齢雇用安定法が改正されて、65歳までの雇用確保が義務になり、70歳までの就業確保措置を講じることが「努力義務」となりますのでチェックしておきましょう。
さて、次は障害者雇用促進法を見ていくことにしましょう。
この法律では、障害者の職業の安定を図ることが目的の一つになっていますが、従業員を募集、採用するときのルールがどうなっているのかが次の問題の論点になっています。
事業主がしなければならない募集や採用のルール
(平成28年問2A)
障害者雇用促進法第34条は、常時使用する労働者数にかかわらず、「事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない」と定めている。
解説
解答:正
問題文のとおりで、事業主は、労働者の募集や採用をするとき、常時使用する労働者数にかかわらず、障害者に対し障害者でない者と均等な機会を与えなければなりません。
「常時使用する労働者数にかかわらず」ということは、大企業でも中小企業でも規定に差はないということですね。
で、事業主は、募集や採用にあたり、障害者からの申出によってその障害者の方の特性に配慮した措置を講じなければなりません。
たとえば、車椅子の方が業務をするときに、車椅子が通りやすいよう通路の確保をしてもらうとか、バリアフリーが必要といったことですが、それが事業主にとって費用面などから見て過重な負担になるときはその限りではありません。
で、一定の要件に該当する事業主は、一定数以上の障害者を雇用する必要があります。
たとえば一般企業の場合、令和2年現在では、法定雇用率は2.2%で、従業員を45.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用する必要があります。
で、令和3年3月1日から法定雇用率が2.3%に上がるので、対象となる従業員の規模は43.5人以上となります。
(計算方法:100÷2.3=43.4 → 43.5人となります。)
なんで43.5にするのかですが、その労働者の数のカウントの仕方にも規定がありますので次の問題を見てみましょう。
障害者雇用促進法上の労働者の算定の仕方
(令和2年問3C)
障害者雇用促進法では、事業主の雇用する障害者雇用率の算定対象となる障害者(以下「対象障害者」という。)である労働者の数の算定に当たって、対象障害者である労働者の1週間の所定労働時間にかかわりなく、対象障害者は1人として換算するものとされている。
解説
解答:誤
障害者雇用率の算定をするときの対象となる障害者の労働者数のカウントの仕方は、
「障害者である労働者の1週間の所定労働時間にかかわりなく1人」になるのではなく、短時間労働者の場合は「0.5人」と数えられます。
短時間労働者というのは、身体障害者や知的障害者、又は精神障害者の労働時間がその事業場の通常の労働者の週所定労働時間より短く、かつ週所定労働時間が20時間以上30時間未満の人です。
なので、先ほどの計算式で「43.4 人 → 43.5人」としたのは、運用される数字が「0.5」だからなのです。
ただし、重度の身体障害者や知的障害者を短時間労働者として雇用した場合は0.5人ではなく、1人として算定します。
しかし、もし規定された数の障害者を雇用することができなかった場合はどうなるのでしょうか。
最後に次の問題で確認しましょう。
障害者雇用納付金の額は??
(平成27年問2C)改正
障害者雇用促進法は、事業主に一定比率(一般事業主については2.3パーセント(経過措置として、当分の間は、2.2%))以上の対象障害者の雇用を義務づけ、それを達成していない常時使用している労働者数が101人以上の事業主から、未達成1人につき月10万円の障害者雇用納付金を徴収することとしている。
解説
解答:誤
障害者雇用納付金は、不足人数1人につき「月10万円」ではなく、「月5万円」です。
反対に、規定を超えて対象となる障害者を雇用している場合は、超過人数1人につき、2万7千円の障害者雇用調整金が交付されることになります。
ちなみに、常時100人以下の労働者を雇用している事業主に対しては、障害者雇用納付金も障害者雇用調整金の適用はありません。
今回のポイント
- 高年齢車雇用安定法では、事業主が定年の定めをするときは60歳を下回ることができません。
- 継続雇用制度を採用する場合、希望者全員を引き続き雇用しなければなりません。
- 事業主は、労働者の募集や採用をするとき、常時使用する労働者数にかかわらず、障害者に対し障害者でない者と均等な機会を与えなければなりません。
- 障害者雇用率の算定をするときの対象となる障害者の労働者数のカウントの仕方は、短時間労働者の場合は「0.5人」と数えられます。
- 障害者雇用納付金は、不足人数1人につき「月5万円」です。
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