労働契約法は、社労士試験で毎年と言っていいほどよく出題されていますが、今回は「労働契約の成立」にスポットを当てた過去問を集めました。
労働契約が成立するには何が必要なのか、また採用内定は労働契約の成立になるのかといった問題を取り上げてみましたので一つ一つ見ていくことにしましょう。
労働契約が成立するのに必要なことは
(平成24年問1C)
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことによって成立するものとされており、当事者の合意、認識等の主観的事情は、労働契約の成否に影響を与えない。
解説
解答:誤り
労働契約は、労働者と使用者が合意することで成立します。
問題文にあるような「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払う」ことは契約の内容に過ぎないので、
労働して賃金が支払われて労働契約が成立するわけではありません。
ちなみに、労働契約法では、
(労働契約の成立)
労働契約法6条
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
と規定されています。
では、労働契約を結ぶときに必要なことは他にあるのでしょうか。
たとえば契約は書面をかわさないとダメ、みたいな、、、?
次の過去問で見てみましょう。
労働契約の成立は書面がないとダメ?
(平成28年問1イ)
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が必ず書面を交付して合意しなければ、有効に成立しない。
解説
解答:誤り
労働契約は、必ずしも書面を交付する必要はなく、労働者と使用者の合意があれば成立します。
ただ、書面があった方が労使トラブルのリスクを低減できますので、できれば書面で契約を交わすことが良いのは言うまでもありません。
ちなみに、労基法でいうと、労働条件の明示は、書面で行わなければならない事項がありますので、そちらと混同しないようにしましょう。
こちらについては、通達にありますのでリンクを貼っておきますね。
12ページに記載がありますのでご自由にご参考になさってくださいね。
参考記事:労働者と契約法の施行について 基発0810第2号 平成24年8月10日
では、労働契約を書面で交わすとして、どの範囲まで書面で確認すればいいのでしょうか。
次の問題で確認しましょう。
労働契約を書面で確認するときの項目とは
(平成27年問1C)
労働契約法第4条は、労働契約の内容はできるだけ書面で確認するものとされているが、勤務地、職務、勤務時間の限定についても、この確認事項に含まれる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
労働契約を書面で確認するときの確認事項として、勤務地、職務、勤務時間の限定についても含まれます。
こちらは通達が根拠になっていますが、この通達では、勤務地限定社員などの、いわゆる「多様な正社員」に対する留意事項になっています、
仮に多様な正社員でなく、アルバイトやパートさんであっても契約の内容を書面で確認することは大切ですね。
さて、次は「内定」と労働契約の関係について出題された過去問を見てみましょう。
新卒の方が就職活動をしている目的は「内定」を取るためですよね。
ですが、労働契約という視点から見たときに、内定はどのような立ち位置にあるのでしょうか。
早速見ていきましょう。
採用内定は労働契約の成立?
(平成25年問1C)
いわゆる採用内定の制度の実態は多様であるため、採用内定の法的性質について一義的に論断することは困難というべきであり、採用内定の法的性質を判断するに当たっては、当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検討する必要があるとするのが、最高裁判所の判例である。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
どうしてこのような裁判(大日本印刷事件)が行われたのかというと、採用内定をもらっていたのに、企業側から一方的に内定を取り消されたことに対して、採用内定は労働契約の成立と同じであり、一方的に契約を破棄するのはおかしいのではないか、ということになったのです。
この裁判では、内定を出したことで解約権を留保した労働契約が成立したと判断されましたが、
問題文にあるとおり、「当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即して」検討する必要があるとしています。
なので、採用内定自体が労働契約と必ずしも同じ、というわけではないようですね。
では同じ採用内定について、少し角度を変えた問題も見ておきましょう。
採用内定は労働契約の成立? その2
(平成30年問3ア)
いわゆる採用内定の制度は、多くの企業でその実態が類似しているため、いわゆる新卒学生に対する採用内定の法的性質については、当該企業における採用内定の事実関係にかかわらず、新卒学生の就労の始期を大学卒業直後とし、それまでの間、内定企業の作成した誓約書に記載されている採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立しているものとするのが、最高裁判所の判例である。
解説
解答:誤り
「多くの企業でその実態が類似しているため」、「当該企業における採用内定の事実関係にかかわらず」の部分が間違っています。
先ほどの問題にあったとおり、採用内定については、
「具体的事案につき、採用内定の法的性質を判断するにあたっては、当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検討する必要がある。」
としています。
今回のポイント
- 労働契約は、労働者と使用者が合意することで成立しますので、必ずしも書面が必要なわけではありません。
- とは言っても、労働契約を交わすときは書面を使ったほうがいいわけで、労働契約を書面で確認するときの確認事項としては、勤務地、職務、勤務時間の限定についても含まれます。
- 採用内定の法的性質を判断するにあたっては、その企業の当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検討する必要がある、としています。
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