過去問

「社労士試験 労基法 意外と勉強量の多い年次有給休暇の押さえ方」労基-67

年次有給休暇は、付与されるための要件だったり、時間帯年休などの制度の多さ、5日取得義務などの法改正など出題される論点が満載ですね。

このようにどこから手をつければいいのか分からない場合、

過去問でも基本問題を中心に取り組んだり、テキスト読みの場合は、まずは大枠から入っていくというように、木の幹から押さえていくようにすると良いです。

そうすると、後から枝葉の論点に取り組んでも理解しやすくなりますので、体系的に学習を進めるようにしましょう

それでは最初の問題に入っていきますね。

この問題は、年次有給休暇の付与に必要な要件について問われています。

年次有給休暇が付与されるには、「継続勤務」と「出勤率」の要件があるのですが、

「継続勤務」の考え方が論点になっていますので見てみましょう。

 

継続勤務の要件とは

(平成25年問2ウ)

労働基準法第39条に定める年次有給休暇の付与要件の1つである「継続勤務」には、私傷病により休職とされていた者が復職した場合の当該休職期間は含まれない。

 

解説

解答:誤り

問題文の場合、休職期間は継続勤務に含まれます。

年次有給休暇の付与について判断する場合の「継続勤務」は、実際に勤務しているかどうかというよりは、「在籍」しているかどうかという意味合いになります。

休職していて仕事ができない状態であったとしても、会社に在籍はしているわけなので、休職期間も継続勤務に含まれます

他に継続勤務に含まれるケースとして、

  • 定年退職した退職者が引き続き再雇用されている場合
  • 有期雇用契約が更新されて6ヶ月以上に及んでいる場合で、実態から見て引き続き使用されていると認められる場合
  • 有期雇用契約、臨時工、パートなどから正社員に切り替わった場合

など色々ありますが、共通点としては、その会社に引き続き雇用されていて在籍しているという点ですね。

さて、年次有給休暇が発生する要件として、もう一つ「出勤率80%以上」というものがあります。

これは、雇入れ日から6ヶ月経った時に、出勤日を全労働日で割った時の出勤率が80%以上であれば年次有給休暇が発生します。

次の問題では、出勤日の取り扱いが論点になっていますので見てみましょう。

 

出勤率の計算の仕方

(平成28年問7C)

年次有給休暇を取得した日は、出勤率の計算においては、出勤したものとして取り扱う。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

出勤した日は、実際に仕事をした日に加えて、

  • 業務上の傷病によって療養のために休業した期間
  • 育児休業・介護休業をした期間
  • 産前産後の休業期間
  • 年次有給休暇を取得した日
  • 労働者の責に帰すべき事由によるとは言えない不就労日

となっています。

最後の、「労働者の責に帰すべき事由によるとは言えない不就労日」がどういう日になるのかというと、

たとえば、裁判所の判決で解雇が無効と確定した場合に、解雇日から復職する日までの働いていなかった期間などが考えられます。

このように、年次有給休暇が発生する要件としては、「継続勤務」と「出勤率80%以上」があるわけですが、

めでたく年次有給休暇が付与されると、労働者から時季を指定して休暇を取ることになります。

しかし、たとえば海外旅行に行くために長期の有休を取りたいと思った場合に、そのまますんなりと取れるものなのでしょうか。

次の問題で確認しましょう。

 

長期休暇の場合は事前調整が必須??

(平成24年問6オ)

労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合には、使用者との事前の調整を経なければ、時季指定権を行使することができない。

 

解説

解答:誤り

年次有給休暇の取得が、長期に連続しているものである場合でも、使用者との事前の調整をしなくても時季を指定する権利はあります。

ただし、使用者側にも、「時季変更権」というものがあり、事業の正常な運営に支障をきたす場合は、時季をずらしてもらう権利があります。

年次有給休暇が長期になるほど、業務をどのように調整するかが難しくなってきますので、

労働者と使用者が事前に話し合って調整をすることが求められています

それでは、次は働き方改革によって法改正された年次有給休暇の5日取得義務について見てみましょう。

原則としては、使用者側が労働者に対して、5日分の年次有給休暇の時季を指定することになっています。

このプロセスについて問われている過去問がありますので見てみましょう。

 

年次有給休暇の5日取得義務はどのように付与するのか

(令和2年問6E)

使用者は、労働基準法第39条第7項の規定により労働者に有給休暇を時季を定めることにより与えるに当たっては、あらかじめ、同項の規定により当該有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければならず、これにより聴取した意見を尊重するよう努めなければならない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

年次有給休暇の5日取得義務は、まず、更新日に10日以上の年次有給休暇が付与される労働者が対象になっています。

なので、比例付与の対象になっている労働者で、付与される日数が7日の場合は、5日取得義務の対象外です。

で、使用者は、5日取得義務の対象者に対して、

  • 5日取得義務分の有給休暇を与えることを労働者に明らかにした上
  • その時季について当該労働者の意見を聴かなければならず、
  • これにより聴取した意見を尊重するよう努めなければならない

となっています。

年次有給休暇の時季指定権は、基本的には労働者側にあるわけで、計画的付与をする時も労使協定を結ぶ必要がありますので、

5日取得義務についても、使用者が一方的に決めるのではなくて、労働者の意見も聴いてくださいね、ということです。

では最後に、年次有給休暇の計画的付与について見ておきましょう。

計画的付与は、先ほども述べたように、労使協定によって時期について定めをしたときは、

有給休暇の日数のうち、5日を超える部分について計画的に年次有給休暇を付与する仕組みになっています

となると、計画的付与に時間帯年休を当てることができるのかどうかを下の問題で見てみましょう。

 

計画的付与と時間単位年休

(平成26年問6C)

労働基準法第39条第6項に定めるいわゆる労使協定による有給休暇の計画的付与については、時間単位でこれを与えることは認められない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

元来、年次有給休暇の趣旨は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資するというものです。

で、少しでも年次有給休暇を有効に活用できるように時間帯年休の制度が出来たのですが、

時間帯年休はあくまでも、労働者が請求した時季に付与するものなので、計画的付与で時間帯年休を与えることはできないと通達にあります。

こちらの通達については、リンクを貼っておきますので、ご自由にご参考になさってくださいね。

(「第4 時間単位年休(法第39条第4項及び第7項関係)」のところに記載があります)

 

参考記事: 労働基準法の一部を改正する法律の施行について 基発第0529001号 平成21年5月29日

 

今回のポイント

  • 年次有給休暇の付与について判断する場合の「継続勤務」は、実際に勤務しているかどうかというよりは、「在籍」しているかどうかという意味合いになりますので、休職していて仕事ができない状態であったとしても、会社に在籍はしているわけなので、休職期間も継続勤務に含まれます
  • 出勤した日は、実際に仕事をした日に加えて、
    • 業務上の傷病によって療養のために休業した期間
    • 育児休業・介護休業をした期間
    • 産前産後の休業期間
    • 年次有給休暇を取得した日
    • 労働者の責に帰すべき事由によるとは言えない不就労日

    となっています。

  • 年次有給休暇の取得が、長期に連続しているものである場合でも、使用者との事前の調整をしなくても時季を指定する権利はありますが、使用者側にも、「時季変更権」というものがあり、事業の正常な運営に支障をきたす場合は、時季をずらしてもらう権利があります。
  • 使用者は、5日取得義務の対象者に対して、
    • 5日取得義務分の有給休暇を与えることを労働者に明らかにした上
    • その時季について当該労働者の意見を聴かなければならず、
    • これにより聴取した意見を尊重するよう努めなければならない

    となっています。

  • 時間帯年休はあくまでも、労働者が請求した時季に付与するものなので、計画的付与で与えることはできません

 

毎日の勉強のヒントにどうぞ♫

テキストを読む時に少しでも頭に残る読み方をしたいですよね。

何が書いてあったか思い出しながらページをめくるようにしましょう。

単語ひとつでも大丈夫です。

脳みそにすこしでも積極的になってもらいましょう!

 

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