過去問

「社労士試験 労基法 5分で読める!割増賃金の対処法」過去問・労基-66

割増賃金の項目は、色々と論点があり社労士試験ではよく出題されています。

なぜかというと、労使間で割増賃金についてのトラブルが多いのと、

割増賃金そのものの規定だけではなく、変形労働時間制などの労働時間と絡めることができるので、

社労士試験でも重要視されているものと思われます。

しかし、原則をしっかりと押さえることができれば、応用問題にも対応できるようになりますので安心なさってくださいね。

それでは最初の問題に進みましょう。

この問題は、労基法に違反した状態で時間外労働をさせた場合の取り扱いについて問われています。

適法に残業させた場合には割増賃金の支払が必要ですが、違法に残業させた場合はどうなのでしょう?

 

違法に時間外労働をした場合の取扱い

(令和2年問6D)

労働基準法第37条は、「使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合」における割増賃金の支払について定めているが、労働基準法第33条又は第36条所定の条件を充足していない違法な時間外労働ないしは休日労働に対しても、使用者は同法第37条第1項により割増賃金の支払義務があり、その義務を履行しないときは同法第119条第1号の罰則の適用を免れないとするのが、最高裁判所の判例である。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

労基法32条では、1日の労働時間を8時間、1週間の労働時間を40時間までと定めていますが、

法33条(災害等による臨時の必要)と法36条(36協定)の手順を踏むことで時間外労働や休日労働が32条違反に問われないということになっていて、

法37条に規定された割増賃金を支払うルールになっています。

ただ、問題文にあるように、法33条や法36条の手続きをせずに、労働者に対して時間外労働などをさせていた場合に、割増賃金の支払い義務があるのかというと、

きちんと手続きをして残業などに対する割増賃金を支払うことになっている規定がある以上、

違法に時間外労働をさせているんだったら、なおさら割増賃金の支払義務があるよね、

というのが、小島撚糸事件という最高裁判例となっています。

そうでないと、きちんとルールを守って割増賃金を支払っている使用者がいるのに、

ルールを守らずに残業をさせている使用者に割増賃金の支払義務がないなんておかしいですよね

さて、ここで時間外労働の考え方について見ておきましょう。

会社の就業時間を見るときに、始業時間と終業時間が決まっていて、労働時間が8時間の会社であれば終業時間を過ぎれば残業というところもあるかと思います。

そんな場合に、所定労働時間が8時間の会社で、終業時間が過ぎて仕事をしていた場合、

それが時間外労働にすべて当てはまるのか、というのが次の問題になっていますので確認しましょう。

 

労働時間と時間外労働の関係

(平成29年問4D)

1日の所定労働時間が8時間の事業場において、1時間遅刻をした労働者に所定の終業時刻を1時間繰り下げて労働させることは、時間外労働に従事させたことにはならないので、法36条に規定する協定がない場合でも、労働基準法第32条違反ではない。(問題文を一部補正しています)

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

時間外労働は、1日の労働時間が8時間を超えたり、1週間の労働時間が40時間を超えた場合に適用されますが、

事業場の就業時間で判断するのではなく、実際の労働時間で判断します。

なので、問題文のように、1時間遅刻をした人に対して、終業時間を1時間過ぎて仕事をさせても、実労働時間は8時間なので、

時間外労働にはなりません

別の見方をすると、午前中に3時間の有給休暇を取って、午後1時から仕事を始めた場合、午後9時を過ぎないと時間外労働にならず、

割増賃金は支払われないことになります。

(午後9時までは割増分の賃金は支払われませんが、時給換算分の賃金はもちろん発生します)

では、次は変形労働時間制を採用している場合の時間外労働の考え方を見ておきましょう。

変形労働時間制は、たとえば1ヶ月単位の変形労働時間制では、1ヶ月のスパンで見たときに1週間平均の労働時間が40時間になっていればいいので、

通常の場合と違って、1日の所定労働時間が8時間を超える場合があります

その場合は、所定労働時間を超えた部分が時間外労働になるわけです。

1週間の所定労働時間についても同様の考え方をしますので、実際にどのように判断するのか問題文を読んでみましょう。

 

1ヶ月単位の変形労働時間制を採用している場合の時間外労働は?

(平成29年問1A)

1か月単位の変形労働時間制により、毎週日曜を起算日とする1週間について、各週の月曜、火曜、木曜、金曜を所定労働日とし、その所定労働時間をそれぞれ9時間、計36時間としている事業場において、その各所定労働日に9時間を超えて労働時間を延長すれば、その延長した時間は法定労働時間を超えた労働となるが、日曜から金曜までの間において所定どおり労働した後の土曜に6時間の労働をさせた場合は、そのうちの2時間が法定労働時間を超えた労働になる。(この事業場は特例措置対象事業場ではないものとする)

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

まず、1日単位時間外労働を考える場合、所定労働時間が8時間を超える時間に設定している日については、その設定している時間を超えた時から時間外労働となり、

所定労働時間が8時間以下であれば、8時間を超えた時点で時間外労働になります。

(8時間達するまでは時給換算分の賃金が発生します)

問題文では、所定労働時間を9時間に設定しているので、9時間を超えたところから時間外労働となります。

一方、1週間単位で見るときも、所定労働時間が40時間を超える時間に設定されていれば、その時間を超えた時間が時間外労働となり、

週40時間以下で設定された週は、40時間を超えた時から時間外労働が発生します。

問題文では、1週間の所定労働時間が36時間となっているので、

6時間追加で仕事をした場合は、(36+6)-40=2時間の時間外労働が発生しているということになりますね。

さて、時間外労働をしたときの割増賃金がどのように計算されるのかについて見てみましょう。

割増賃金を計算するときのベースになるのは、「通常の労働時間または労働日の賃金」ということで、通常支払われるお給料が対象になります。

ただ、お給料に含まれているすべての手当の類が対象になっているわけではなく、

割増賃金を計算するときには除外される手当もあります

その手当とはどんなものなのか、次の問題で確認しましょう。

 

家族手当は割増賃金の算定に含める?

(平成23年問6E)

労働基準法第37条に定める割増賃金の基礎となる賃金(算定基礎賃金)はいわゆる通常の賃金であり、家族手当は算定基礎賃金に含めないことが原則であるから、家族数に関係なく一律に支給されている手当は、算定基礎賃金に含める必要はない。

 

解説

解答:誤り

問題文の場合は、割増賃金を計算する場合の賃金に含まれます。

割増賃金を計算するときに除外されるものは以下のとおりです。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

となっています。

通常、賃金というのは労働の対償として支払われるものですが、福利厚生的な目的で、労働者それぞれの個人的な事情を考慮して支払われるものは割増賃金の算定対象になりません。

ただ、問題文にあるように、家族手当という名目であっても、家族数に関係なく一律に支払われている場合は、割増賃金の算定対象となるわけです。

ここで、気をつけたいのは、法12条の平均賃金との考え方の違いです。

平均賃金を計算するときは家族手当や住宅手当などといったものは反映されないので、この機会に違いをテキストなどで確認されておくことをオススメします。

では最後に、固定残業代について問われている過去問を見てみましょう。

固定残業代というのは、通常のお給料に一定時間分の時間外労働などの割増賃金を含めて支払われる制度のことです。

一定の残業時間までは一定の金額の割増賃金が支給されるので、給与計算が楽なのがメリットですが、

この固定残業代の制度を取り入れるためには何か条件があるのでしょうか。

下の問題で確認しましょう。

 

固定残業代を採用するには?

(令和元年問6D)

「いわゆる定額残業代の支払を法定の時間外手当の全部又は一部の支払とみなすことができるのは、定額残業代を上回る金額の時間外手当が法律上発生した場合にその事実を労働者が認識して直ちに支払を請求することができる仕組み(発生していない場合にはそのことを労働者が認識することができる仕組み)が備わっており、これらの仕組みが雇用主により誠実に実行されているほか、基本給と定額残業代の金額のバランスが適切であり、その他法定の時間外手当の不払や長時間労働による健康状態の悪化など労働者の福祉を損なう出来事の温床となる要因がない場合に限られる。」とするのが、最高裁判所の判例である。

 

解説

解答:誤り

固定残業代の制度を採用するのに、問題文のような条件に限られるわけではありません。

たしかに、固定残業代の制度を採用している会社で、どんなに残業しても割増賃金が支払われずに裁判になっているところもあります。

ただ、固定残業代の制度を採用するために、問題文のような限定的な条件を満たさないとダメなわけではありません。

固定残業代の制度を取り入れるためには、

  • 通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別できる
  • 支払われた割増賃金の額が、所定の算定方法による金額を下回らないこと
  • 固定残業時間を超える時間外労働などに対して割増賃金を追加で支払うこと

といった、労働者にわかりやすく安心して働くことができるように固定残業の内容を明示することが大切です。

固定残業代の採用について、厚生労働省のチラシがありますので、下にリンクを貼っておきますね。

 

参考記事:固定残業代を賃金に含める場合は、 適切な表示をお願いします。

 

今回のポイント

  • ルールに則って残業などをさせたらその分の割増賃金を払うことになっている以上、違法に時間外労働をさせているんだったら、なおさら割増賃金の支払義務があるよね、という最高裁判例があります。
  • 時間外労働は、1日の労働時間が8時間を超えたり、1週間の労働時間が40時間を超えた場合に適用されますが、事業場の就業時間で判断するのではなく、実際の労働時間で判断します。
  • 1日単位時間外労働を考える場合、所定労働時間が8時間を超える時間に設定している日については、その設定している時間を超えた時から時間外労働となり、所定労働時間が8時間以下であれば、8時間を超えた時点で時間外労働になります。
  • 一方、1週間単位で見るときも、所定労働時間が40時間を超える時間に設定されていれば、その時間を超えた時間が時間外労働となり、週40時間以下で設定された週は、40時間を超えた時から時間外労働が発生します。
  • 割増賃金を計算するときに除外されるものは以下のとおりです。
    • 家族手当
    • 通勤手当
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 住宅手当
    • 臨時に支払われた賃金
    • 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

    となっています。

  • 固定残業代の制度を取り入れるためには、
    • 通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別できる
    • 支払われた割増賃金の額が、所定の算定方法による金額を下回らないこと
    • 固定残業時間を超える時間外労働などに対して割増賃金を追加で支払うこと

    といった、労働者にわかりやすく安心して働くことができるように固定残業の内容を明示することが大切です。

 

毎日の勉強のヒントにどうぞ♫

勉強を習慣化するコツは、ゼロを作らないことです。

テキストを開く動作だけでも、するとしないでは大違いです。

ゼロの日を作ると、勉強に対するハードルが思った以上に高くなってしまうのです。

0.1歩でもいいので前進し続けましょう♫

 

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