「適用事業所」と聞くと、強制適用事業所になるのはどんな業種だっけ?と疑問に思うのは正常な反応です。笑
労基法からはじまって、安衛法、労災保険法や雇用保険法など色々な法律の勉強をしてきて、もうどれがどれだったか分からなくなりますよね。
ですが、迷うということは、逆にいうとそれだけインプットの量が増えているということです。
社労士の勉強をするまでは「適用事業所?」というレベルだったとしても不思議はありませんからね。
迷うということは、それだけ実力がついてきたからなので、後は、知識の整理をしていけばいいのです。
自信を持って進んでいきましょう。
それでは最初の問題です。
まずは、適用事業所になる条件を見ていくことにしましょう。
業種や人数などの要件がありますので一つ一つチェックしていきますね。
強制適用事業所になるための要件
(平成23年問1C)
常時10人の従業員を使用している個人経営の飲食業の事業所は強制適用事業所とはならないが、常時3人の従業員を使用している法人である土木、建築等の事業所は強制適用事業所となる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
法定16業種と呼ばれる業種の場合は、常時5人以上の従業員を使用していると強制適用事業所となります。
法定16業種というのは、製造業や建設業などありとあらゆる業種が並んでいます。(これらを全て押さえるのは無理です)
で、国や地方公共団体、法人の場合は人数に関係なく、常時従業員を使用していると強制適用事業所になるわけです。
逆に、法定16業種以外の業種で個人経営だと従業員を何人使用していても強制適用事業所にはならないんですね。
その、法定16業種以外の業種というのは、
- 農林水産畜産業といった第一次産業
- 飲食店、旅館、料理店、理容などの接客娯楽業
- 社労士や弁護士などの事務所である法務業
- 神社、寺院、教会など宗教業
などが挙げられます。
法定16業種を押さえるのは大変ですが、上記の4業種であれば何とか覚えられそうですね。
では、適用事業所に関する問題をもう1問見ておきましょう。
法定16種「以外」の業種が何だったか思い出してみましょう。
強制適用事業所になるための要件 その2
(平成24年問8A)
従業員が15人の個人経営の理髪店で、被保険者となるべき者の2分の1以上が希望した場合には、事業主に速やかに適用事業所とするべき義務が生じる。
解説
解答:誤
問題文のケースでは適用事業所にする義務は事業主にはありません。
問題文には理髪店とありますので、こちらは接客娯楽業に該当し、従業員が15人いても強制適用事業所にはなりませんね。
で、この問題にはもう一つ論点があるのですが、被保険者となるべき従業員の2分の1以上の「同意」を得た時は、任意適用事業所となることができます。
ここで間違えてはいけないのは、2分の1以上の従業員が希望したからといっても、事業主はそれに応じる義務はないということです。
たしか、労災保険法では過半数の希望、雇用保険法だと2分の1以上の希望があったときは、事業主は加入をする義務が生じましたね。
労働保険と社会保険の違いをしっかり押さえておきましょう。
では逆に、任意適用事業所で被保険者から適用事業所でなくして欲しい、という希望があった場合はどうなるのでしょうか。
次の問題で見てみましょう。
被保険者から適用事業所でなくして欲しいと申出があったら、、、?
(令和2年問10C)
任意適用事業所において被保険者の4分の3以上の申出があった場合、事業主は当該事業所を適用事業所でなくするための認可の申請をしなければならない。
解説
解答:誤
任意適用事業所でたとえ被保険者から適用事業所でなくして欲しいという希望があったとしても、事業主はそれに応じる必要はありません。
この「4分の3」という数字は、事業主が任意適用事業所でなくそうとするときに、被保険者の4分の3以上の同意があれば厚生労働大臣に申請して適用事業所でなくする認可を受けることができる、ということに使われます。
このように、社労士試験では論点をすり替えて出題してくることが多いので、知識をきっちり押さえておくことが大切になりますね。
さて、次は外国の大使館が任意適用事業所の認可を受けることができるのか、という過去問を見てみたいと思います。
日本で生活している人には、健康保険がないと、さぞ不便かと思いますが、どうなっているのでしょうか。
外国の大使館が健康保険に入ることができる?
(平成28年問1ウ)
外国の在日大使館が健康保険法第31条第1項の規定に基づく任意適用の認可を厚生労働大臣に申請したときは、当該大使館が健康保険法上の事業主となり、保険料の納付、資格の得喪に係る届の提出等、健康保険法の事業主としての諸義務を遵守する旨の覚書を取り交わされることを条件として、これが認可され、その使用する日本人並びに派遣国官吏又は武官でない外国人(当該派遣国の健康保険に相当する保障を受ける者を除く。)に健康保険法を適用して被保険者として取り扱われる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
外国の大使館が任意適用の認可を厚生労働大臣に申請したときは、所定の要件を満たせば大丈夫ということなんですが、
ポイントは、
- 保険料の納付や資格の得喪の届出などの規定を守ること
ですね。
任意適用事業所になったのはいいけど、保険料を滞納したり、被保険者の資格の得喪の手続きがおろそかになるのでは困りますからね。
で、被保険者になれるのは、大使館で働く日本人や、派遣国の健康保険や厚生年金に相当するものに入っていない派遣国の職員さんということになりますが、武官(軍人)はダメのようですね。
さて、企業の規模がそこそこ大きくなってくると、転勤ということも出てくる可能性があります。
ということは、事業所が変更になるということになるのですが、被保険者資格の得喪も発生するのでしょうか。
最後にこちらを確認しておきましょう。
転勤で異動した時の被保険者の取り扱い
(平成27年問9A)
本社と支社がともに適用事業所であり、人事、労務及び給与の管理(以下本問において「人事管理等」という。)を別に行っている会社において、本社における被保険者が転勤により支社に異動しても、引き続きその者の人事管理等を本社で行っている場合には、本社の被保険者として取り扱うことができる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
問題文のように、本社で被保険者の勤怠管理や給与計算などをしている場合は、本社から支店に転勤になったとしても、引き続き本社の被保険者であるという取り扱いができる、ということですね。
転勤先の支店が必ずしも勤怠管理ができる部署があるとは限りませんから、効率的でいいですね。
こちらについては通達がありますのでリンクを貼っておきますね。
参考記事:本社管理による社会保険事務の実施について〔厚生年金保険法 平成18年3月15日 庁保険発第0315002号
今回のポイント
- 法定16業種と呼ばれる業種の場合は、常時5人以上の従業員を使用していると強制適用事業所となりますが、国や地方公共団体、法人の場合は人数に関係なく、常時従業員を使用していると強制適用事業所になるわけです。
- 法定16業種以外の業種は、
- 農林水産畜産業といった第一次産業
- 飲食店、旅館、料理店、理容などの接客娯楽業
- 社労士や弁護士などの事務所である法務業
- 神社、寺院、教会など宗教業
などがあります。
- 被保険者となるべき従業員の2分の1以上の「同意」を得た時は、事業主は、任意適用事業所の認可の申請をすることができます。
- 事業主が任意適用事業所でなくそうとするときに、被保険者の4分の3以上の同意があれば厚生労働大臣に申請して適用事業所でなくする認可を受けることができます。
- 外国の大使館が任意適用の認可を厚生労働大臣に申請したときは、保険料の納付や資格の得喪の届出などの規定を守ることができるかがポイントになります。
- 本社で被保険者の勤怠管理や給与計算などをしている場合は、本社から支店に転勤になったとしても、引き続き本社の被保険者であるという取り扱いができます。
各科目の勉強法の記事をまとめました
労働基準法から一般常識までの全科目の勉強法の記事をまとめましたのでぜひご覧ください
リンク「社労士試験 独学合格法 各科目の勉強方法の記事をまとめました!」
科目ごとにまとめて記事を見ることができます!
スマホでご覧になっていただいている場合は、一番下までスクロールすると、科目名が並んでいますのでご覧になりたい科目をタップいただくと、その科目だけの記事を見ることができます。
もしくは、一番右上の三本線(メニューになっています)をタップしていただいて科目名を表示させる方法もあります。
ぜひご活用ください!
この記事へのコメントはありません。