雇用保険の被保険者については、社労士試験で色々な形で出題されていますが、これも、他の法律と比べても適用除外についての規定がいろいろあってややこしいからです。
そもそも被保険者の種類だけを見てもバラエティに富んでいて論点が満載ですよね。
こんな場合は、テキストだけ読んでいてもなかなか記憶として定着しません。
問題演習を繰り返しながら少しずつ押さえていくようにしましょう。
では、早速最初の問題を見てみましょう。
この問題は、労災保険では特別加入できる中小企業の事業主が雇用保険の被保険者になれるのか、というのが論点になっています。
中小企業の事業主が雇用保険の被保険者に???
(平成23年問1E)
個人事業主及び法人の代表者は原則として被保険者とならないが、労災保険法第34条第1項の規定に基づき労災保険に特別加入した中小事業の事業主は、雇用保険についても被保険者となる。
解説
解答:誤
労災保険で特別加入ができる中小企業の事業主でも、雇用保険の被保険者になることはできません。
というのも、雇用保険法第4条には、
「この法律において「被保険者」とは、適用事業に雇用される労働者であつて、第6条各号に掲げる者以外のものをいう。」
というように、「雇用される」労働者しか被保険者になれないからです。
ただ、代表者が被保険者になることはありませんが、株式会社の取締役であっても同時に会社の部長、工場長など従業員としての身分があって、
労働者性が認められる場合は被保険者になることがあります。
ちなみに、法4条にある「第6条各号」は、「1週間の所定労働時間が20時間未満である者」などの被保険者の適用除外になる要件が書かれています。
では、雇用保険上の被保険者の種類には何があるのか見てみましょう。
雇用保険の被保険者の種類
(平成23年問1C)
1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満であり、かつ、それが同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短い者は、短時間労働被保険者となる。
解説
解答:誤
現在、雇用保険法には、「短時間労働被保険者」はなく、
- 一般被保険者
- 高年齢被保険者
- 短期雇用特例被保険者
- 日雇労働被保険者
の4種類となっています。
それぞれの要件はお手持ちのテキストで確認なさってみてくださいね。
さて、ここからは被保険者の「一般被保険者」について見ていくことにしましょう。
まず最初に、「学生」に焦点を当ててみたいと思います。
学生さんと雇用保険の被保険者というのは、ちょっとイメージがしにくいですが、一般的に、学生さんが雇用保険の被保険者になることはありません。
しかし、条件がそろえば被保険者になることがあるのです。
それはどんな場合なのでしょうか。
学生でも雇用保険の被保険者になることが?
(平成27年問1C)
学校教育法第1条、第124条又は第134条第1項の学校の学生又は生徒であっても、休学中の者は、他の要件を満たす限り雇用保険法の被保険者となる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
先ほども述べたように、学生さんが被保険者になることはありませんが、ただし、
- 卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に就職し、卒業後も引き続き当該事業に勤務する予定のもの
- 休学中の者
- 定時制の学校に在籍するもの など
は所定の要件を満たせば雇用保険の被保険者になります。
雇用保険の目的は、労働者の生活と雇用の安定を図ることですから、学生さんであっても労働者性があるような場合は被保険者になるということなんでしょうね。
ところで、国や都道府県、市町村の事業に雇用される者の場合は、失業した時に、雇用保険の給付よりも手厚い給付が行われる場合は、被保険者になりません。
ただ、都道府県の事業に雇用される者が適用除外になるには、手続きが必要なようですので、次の問題で見てみましょう。
都道府県の事業に雇用される者が雇用保険の適用除外になるための手続とは
(平成24年問1C)
都道府県の長が、当該都道府県の事業に雇用される者について、雇用保険法を適用しないことについて厚生労働大臣による承認の申請を行い、その承認を受けたときは、その承認の申請に係る被保険者については、その承認の申請がなされた日の翌日から雇用保険法は適用されない。
解説
解答:誤
都道府県の事業に雇用される者が、雇用保険の適用除外になるためには、都道府県の長が厚生労働大臣に承認の申請をするのですが、
厚生労働大臣の承認を受けたときは、承認の申請をした翌日ではなく、申請をした日から雇用保険法の適用除外になります。
逆に、承認を得られなかった場合は、申請をした日にさかのぼって雇用保険法が適用されることになります。
ちなみに、市町村の場合は都道府県労働局長の承認を受ける形になります。
であれば、国の事業に雇用される場合はどうなるのでしょうか。
やはり厚生労働大臣に申請するのでしょうか?
国の事業に雇用される場合に雇用保険の適用除外になる条件とは
(平成27年問1D)
国家公務員退職手当法第2条第1項に規定する常時勤務に服することを要する者として国の事業に雇用される者のうち、離職した場合に法令等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付、就職促進給付の内容を超えると認められる者は、雇用保険の被保険者とはならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
国の事業に雇用される者が、離職したときに雇用保険の求職者給付や就職促進給付の内容を超える諸給与を受けられる場合は適用除外になりますが、厚生労働大臣の承認は必要ありません。
今回のポイント
- 労災保険で特別加入ができる中小企業の事業主でも、雇用保険の被保険者になることはできません。
- 雇用保険法には、「短時間労働被保険者」はなく、
- 一般被保険者
- 高年齢被保険者
- 短期雇用特例被保険者
- 日雇労働被保険者
の4種類となっています。
- 学生さんの場合、
- 卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に就職し、卒業後も引き続き当該事業に勤務する予定のもの
- 休学中の者
- 定時制の学校に在籍するもの など
は所定の要件を満たせば雇用保険の被保険者になります。
- 都道府県の事業に雇用される者が、雇用保険の適用除外になるためには、都道府県の長が厚生労働大臣に承認の申請をするのですが、厚生労働大臣の承認を受けたときは、承認の申請をした翌日ではなく、申請をした日から雇用保険法の適用除外になります。
- 国の事業に雇用される者が、離職したときに雇用保険の求職者給付や就職促進給付の内容を超える諸給与を受けられる場合は適用除外になりますが、厚生労働大臣の承認は必要ありません。
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