労働契約法では、労働者が安心して働けるように、使用者に対して、安全を確保し、必要な配慮をすることを求めています。(法5条)
実は、この論点が繰り返し社労士試験で問われていますので、どういった形で出題されているのかご紹介しましょう。
使用者は労働者の家族への配慮も必要?
(平成22年問5A)
労働契約法に関して、使用者は、労働契約に伴い、労働者及びその家族がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をしなければならない。
解説
解答:誤
労働契約法では、「家族」は含まれません。
ここで、労働契約法5条をみてみましょう。
法5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
ん?条文と問題文で違うところがもう一つありますね。
文章の最後の部分です。
問題文は、「必要な配慮をしなければならない。」となっており、条文では、「必要な配慮をするものとする。」と書かれています。
今回の問題文では、メインの論点ではありませんが、引っかけ問題で「〜しなければならない」とか「〜するよう努めなければならない」など、義務規定なのか、努力義務なのかが問われるケースもありますので、問題文は最後まで読むようにしましょう。
もう一つ、労働契約法5条について、別の言い回しをしている過去問があります。
安全配慮はどうすればいい?
(平成28年問1ア)
労働契約法第5条は労働者の安全への配慮を定めているが、その内容は、一律に定まるものではなく、使用者に特定の措置を求めるものではないが、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められる。
解説
解答:正
労働契約法5条から少し突っ込んだ内容になっていますね。
これは、通達に出ている文章です。(平成24年8月10日基発0810第2号)
本試験ではじめて見る文章でも、読んでみて、条文の主旨に明かに反するものでなければ正しい文章の可能性が高いですが、他の選択肢と比較するようにしましょう。
最後に次の過去問は、判例からの出題です。
基本的な問題とは言えませんが、問題文を読んでみて、条文の主旨と合っているか判断してみましょう。
使用者は労働者の体調の変化も見ておくべき?
(平成27年問2B)
使用者は、労働者にとって過重な業務が続く中でその体調の悪化が看取される場合には、神経科の医院への通院、その診断に係る病名、神経症に適応のある薬剤の処方など労働者の精神的健康に関する情報については労働者本人からの積極的な申告が期待し難いことを前提とした上で、必要に応じてその業務を軽減するなど労働者の心身の健康への配慮に努める必要があるものというべきであるとするのが、最高裁判所の判例である。
解説
解答:正
これは、労働者が、体調や通院についての状況について、労働者側から会社に伝えなかったとしても、会社は安全配慮義務を免れるわけではない、ということです。
少し読んだだけでは、正しい文章なのかどうか判断しづらいところですが、他の選択肢と比較すれば正解を導きだせることも多いです。(実際に、この問2は、他の選択肢から正誤を絞り込める問題です。)
今回のポイント
労働契約法5条では、使用者の安全配慮義務について規定されていますが、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められています。
通達や判例など、様々な視点から出題されていますが、条文の主旨と合っているかどうか、他の選択肢と比較して正誤を判断するようにすれば、正解にたどり着ける可能性が高くなります。
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