前回の国民年金もそうでしたが、厚生年金に関する目的や権限に関することは、今のうちにやっつけちゃいましょう。
年金本体の話に入っていくとなかなか復習する機会も確保しにくいですからね。
で、同じ年金科目でも厚生年金と国民年金は、目的条文を見ても違いをはっきりと見て取ることができます。
ではその目的条文を最初にチェックしてみましょう。
厚生年金法の目的条文
(平成30年問7D)
厚生年金保険制度は、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的としている。
解説
解答:誤
問題文に書いてあるのは、国民年金法の目的条文の一部分です。
厚生年金法の目的条文は、
「この法律は、労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」
となっていて、ちなみに国民年金法の目的条文の全文はこうなっています。
「国民年金制度は、日本国憲法第25条第2項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」
厚生年金法と国民年金法の違いは、厚生年金法には、はっきりと「保険給付」と書いてあるところですね。
国民年金法の第2条を見ても、
「国民年金は、前条の目的を達成するため、国民の老齢、障害又は死亡に関して必要な給付を行うものとする。」
とありますが、「保険給付」とはなっていませんね。
そもそも法律の名前も、「厚生年金保険法」が正式名称で「保険」の文字が入りますが、国民年金法には「保険」の文字が入っていません。
やはり国民年金法は、目的条文にある憲法25条第2項で
「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」
と謳われているように、国が責任を負う部分がありますから、そのぶん国民年金の場合、厚生年金と違って「保険」の影は薄くなるのかもしれませんね。
また、厚生年金の場合は、労働者だけでなく、その遺族の生活の安定も目的に入っています。
たしかに、国民年金よりも遺族厚生年金の方が遺族の範囲は広いですよね。
具体的にはお手持ちのテキストで確認してみてくださいね。
では、この厚生年金を管掌しているのはどこなのかを確認しておきましょう。
「管掌」というのは、「自分の管轄の職務として責任をもって取り扱うこと」という意味です。(コトバンクより)
厚生年金を管掌しているのはどこ?
(平成30年問7E)
厚生年金保険は、厚生年金保険法に定める実施機関がそれぞれ管掌することとされている。
解説
解答:誤
厚生年金保険は、「実施機関」ではなく、「政府」が管掌しています。
これは国民年金の場合も同様です。
実施機関というのは文字どおり、厚生年金保険の事務を実施する組織になります。
その実施機関を束ねているのが管掌している政府、ということになるんでしょうね。
で、現実の業務として、健康保険と合わせた厚生年金保険の保険料の徴収は、日本年金機構が行うことになっています。
そこで次の過去問では、集めた保険料をどうするのか、を論点にした問題になっています。
さて、集めたお金を日本年金機構はどのように扱うのでしょうか。
保険料の収納の手順
(平成27年問8D)
厚生労働大臣は、政令で定める場合における保険料の収納を、政令で定めるところにより、日本年金機構に行わせることができる。日本年金機構は、保険料等の収納をしたときは、遅滞なく、これを日本銀行に送付しなければならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
厚生労働大臣は、保険料の収納を日本年金機構にさせることができ、機構は保険料を収納したら日本銀行に送付する必要があります。
「お金を集めたらとっとと送金しなさい」、ということですね。
ちなみに、日本年金機構は収納に関する実施状況や結果を厚生労働大臣に報告もしなければなりません。
厚生労働大臣は強いですね。笑
そして、もし保険料を支払わないところがある場合、日本年金機構は滞納処分をすることもあるのですが、その場合のルールを次の問題でチェックしましょう。
滞納処分を日本年金機構が行う場合のルール
(平成24年問6C)
厚生年金保険法における滞納処分等については、国税滞納処分の例によって行うこととされており、日本年金機構が滞納処分等を行う場合には、あらかじめ財務大臣の認可を受けるとともに、滞納処分等実施規程に従い、徴収職員に行わせなければならない。
解説
解答:誤
問題文にある「財務大臣の認可」の部分が間違いで、正しくは「厚生労働大臣の認可」です。
で、滞納処分をする前に「あらかじめ」認可を受けなければならないのもポイントですね。
事後報告はダメ、ということでしょう。
さて、先ほどの問題に「財務大臣」が登場しましたが、実は厚生年金法に財務大臣に出てきてもらう場面があるのです。
さっきと同じ滞納処分に関することなのですが、どういったケースでお金を扱うプロである財務大臣が出てくるのか見てみましょう。
餅は餅屋に任せよう?
(令和2年問3ウ)
厚生労働大臣は、滞納処分等その他の処分に係る納付義務者が滞納処分等その他の処分の執行を免れる目的でその財産について隠ぺいしているおそれがあることその他の政令で定める事情があるため、保険料その他厚生年金保険法の規定による徴収金の効果的な徴収を行う上で必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、財務大臣に、当該納付義務者に関する情報その他必要な情報を提供するとともに、当該納付義務者に係る滞納処分等その他の処分の権限の全部又は一部を委任することができる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
平たくいうと、厚生年金の保険料の滞納処分を財務大臣に任せることができる、ということですね。
お金の取り立てについては厚生労働省よりも財務省の方が手慣れていることもあるでしょうし、
厚生年金の保険料を滞納しているということは、税金も滞納してそうですから、「取り立てはお任せします!」ってことかもしれませんね。
今回のポイント
- 厚生年金法の目的条文は、「この法律は、労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」となっています。
- 国民年金法の目的条文は、「国民年金制度は、日本国憲法第25条第2項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」です。
- 厚生年金保険は、「政府」が管掌しています。(国民年金も同じ)
- 厚生労働大臣は、保険料の収納を日本年金機構にさせることができ、機構は保険料を収納したら日本銀行に送付する必要があります。
- 滞納処分は、国税滞納処分の例によって行うこととされていて、日本年金機構が滞納処分等を行う場合、あらかじめ厚生労働大臣の認可を受け、滞納処分等実施規程にしたがって、徴収職員に行わせなければなりません。
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