今回は労働組合法における労働組合についての過去問を集めてみました。
労働組合はどのような目的を持っているのか、どういった組織が労働組合として活動できるのか、そして労働組合と使用者が交わす労働協約の効力など、さまざまな角度から社労士試験では出題されています。
わたしは労働組合に所属したことがないので受験勉強をしていてもイメージしきれないところはあったのですが、
なにせ労働組合法は、労働基準法や労働関係調整法を合わせて「労働三法」と言われるくらいですから重要な法律なわけで、
社労士試験でもよく出題されている法律ですから、なんとかかんとか勉強を進めた記憶があります。
なので、この記事でもできるだけわかりやすく取り上げられればと思います。
では最初の問題から見ていきましょう。
労働組合の目的についての過去問になります。
労働組合として認められるには
(平成26年問2E)
労働組合法に定める労働組合とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを目的として組織する団体又はその連合団体をいうとされており、政治運動又は社会運動を目的とする団体又は連合団体はおよそ労働組合法上の労働組合とは認められない。
解説
解答:誤
労働組合法に定める労働組合とは、
- 労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを「主たる目的」として組織する団体又はその連合団体をいいます。
問題文では、この「主たる」が抜けています。
ただ、
- 「主として」政治運動又は社会運動を目的とする団体又は連合団体は除かれます。
問題文では「主として」が抜けています。
つまり、労働組合と認められるための組織のメインの目的は、
「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ること」
ということになりますね。
なので、労働組合には役員や監督的地位にある人は入れませんし、共済事業などの事業のみを目的とする組織は労働組合にはなり得ません。
これらは、労働組合法2条に規定されていますので、一度チェックしてみていただければと思います。
さて、先ほど、役員などは労働組合に入れないというお話をしましたが、労働組合法でいう「労働者」の定義も確認しておきましょう。
労働者の定義とは
(平成23年問5A)
労働組合法における「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
労働組合法では、労働者は「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」のことをいいます。
ちなみに労働基準法の労働者の定義は、
「第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」
いかがでしょう、労基法では「事業に使用される者」のことを労働者といっていますが、
労働組合法では「賃金などの収入によって生活する者」としていますので、雇用されている人だけでなく、失業者や請負で働いている人も労働組合法上では労働者になり得ます。
では、一般的に労働者のイメージがつきにくいプロ野球選手などのスポーツ選手はどうでしょう。
労働組合をつくって団体交渉をすることができないのでしょうか。
スポーツ選手は労働組合で団体交渉ができない?
(平成25年問2B)
プロ野球選手、プロサッカー選手等のスポーツ選手は、労働組合法上の労働者に当たらないため、これらのプロスポーツ選手が労働組合を作っても、団体交渉を行う権利は認められない。
解説
解答:誤
問題文の場合、労働組合法上の労働者になるので、労働組合を作って団体交渉をすることができます。
これは、「日本プロフェッショナル野球組織団交事件」という高裁判例からのもので、プロ野球選手会が日本プロフェッショナル野球組織に対して団体交渉を行う権利を認めたものです。
発端は、当時の大阪近鉄バファローズとオリックスブルーウェーブの合併が選手会抜きに話が進んだことのようです。
合併がそのまま進めば選手がリストラの憂き目に合うのではということで選手会が提訴したようですね。
さて、次は使用者と労働組合との距離について確認しましょう。
労働組合法では、労働者が結成した労働組合に対して使用者が支配や介入することを禁じています。
とはいっても、まったくの無関係でいるわけにはいかないようですから、使用者がどこまで労働組合に関われるのかを次の過去問で見てみましょう。
使用者が労働組合に介入する限度
(令和2年問4A)
労働組合が、使用者から最小限の広さの事務所の供与を受けていても、労働組合法上の労働組合の要件に該当するとともに、使用者の支配介入として禁止される行為には該当しない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
労働組合が、使用者から最小限の広さの事務所の供与を受けていても、使用者の支配介入として禁止される行為とはなりません。
労働組合法で禁止しているのは、
- 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること
- 労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること
です。
ただ、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議したり、交渉することを使用者が許すのはOKです。
また、使用者が所定の寄附をすることや、最小限の広さの事務所の供与を受けることも大丈夫です。
ただ、使用者が労働組合に対して援助の度合いが過ぎると、馴れ合いになってしまい、労働者の労働条件を守ることが難しくなることを懸念しているのでしょうね。
それでは最後に、使用者と労働組合が交わす「労働協約」についてチェックしておきましょう。
労働協約は、労働組合と使用者が労働条件について話し合って決めたものになるのですが、その労働協約の効力について次の問題で確認しましょう。
労働協約の効力とは
(平成23年問5D)
労働組合法に関して、労働協約は、書面に作成されていない場合であっても、その内容について締結当事者間に争いがない場合には、労働組合法第16条に定めるいわゆる規範的効力が生ずる。
解説
解答:誤
書面に作成されていない場合は、労働協約の効力はありません。
つまり、労働協約は、書面に作成して、労働組合と使用者の両方が署名し、または記名押印することで効力が生じます。
ちなみに、労働協約というのは、賃金や労働時間などの労働条件や労使関係の決まりなどについて労働組合と使用者が書面で交わしたものになります。
この労働協約は就業規則よりも強い効力を持っています。
就業規則は、いうなれば使用者側が一方的に作成したもの(過半数代表者の意見は聴きますが)になりますが、
労働協約は労使が話し合って決めたものですから、就業規則よりも労働協約の方が優先されるわけですね。
これは、労基法92条にも、「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない」と規定されていることからも明らかですね。
今回のポイント
- 労働組合法に定める労働組合とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを「主たる目的」として組織する団体又はその連合団体をいいます。
- なので、「主として」政治運動又は社会運動を目的とする団体又は連合団体は除かれます。
- 労働組合法では、労働者は「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」のことをいいます。
- 労働組合法で禁止しているのは、
- 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること
- 労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること
です。
- 労働協約は、書面に作成して、労働組合と使用者の両方が署名し、または記名押印することで効力が生じます。
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