労災保険法の療養の給付、前回に続いて今回もご紹介させていただきます。
前回の記事:「労災保険法 療養の給付で押さえておきたいポイントはここ!」過去問・労災-44
療養の給付については、同じ論点の問題を別の視点から出題(いわゆる焼き直し)されることが多いので、お手持ちの過去問集でもご確認いただければと思います。
何度も出題されているということは、それだけ重要項目として位置付けられているのでしょう。
なので、前回と今回の記事でイメージを掴んでいただけたら幸いです。
それでは最初の問題です。
労働者の方がケガをして病院へ搬送中に不幸にも亡くなった場合、搬送費用は「移送」として療養の給付を受けられるのでしょうか。
もし搬送中にもしものことがあったら、、、
(平成28年問4A)
被災労働者が、災害現場で医師の治療を受けず医療機関への搬送中に死亡した場合、死亡に至るまでに要した搬送費用は、療養のためのものと認められるので移送費として支給される。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
労働者の搬送は、療養のために医療機関へ運んでいるわけなので、搬送中に死亡したとしても「移送」として認められます。
基収841号(昭和30年7月13日)には、
「(前略)災害現場において医師の診察を受けず、被災者を医療機関への搬送の途中該被災者が死亡した場合の、該被災者が死亡に至る迄に要した搬送の費用を「移送」に要した費用として支給して宜しいか(後略)」
との質問に対して、
「本件のごとく、被災労働者が死亡に至る迄に要した搬送の費用は、療養のためのものと認められるので、移送費として支給すべきである。」
と回答しています。
なので、問題文にある死亡に至るまでの搬送費用は「移送」となるわけですね。
ちなみに、健康保険法にも「移送費」がありますのでこの機会に確認されるといいですね。
さて、通勤災害の場合は「療養給付」になるわけですが、労基署長に提出する請求書の項目について次の問題で確認しましょう。
療養給付の請求書に書く事項とは
(平成25年問5)
療養給付たる療養の給付を受けようとする者が、療養の給付を受けようとする指定病院等を経由して所轄労働基準監督署長に提出しなければならない請求書に記載しなければならない事項について、「災害の発生の時刻及び場所」は、労災保険法施行規則に掲げられていない。(問題文の再構成しています)
解説
解答:誤
「災害の発生の時刻及び場所」は療養の給付の請求書への記載事項になっています。
請求書への記載事項としては、
- 災害の発生の時刻及び場所
- 就業の場所並びに就業開始の予定の年月日時及び住居を離れた年月日時
- 通常の通勤の経路及び方法
- 住居又は就業の場所から災害の発生の場所に至つた経路、方法、所要時間その他の状況 など
があります。
通勤は、事業場内ではないので、記載事項も細かいイメージがありますね。
で、療養を続けていても、どこかでピリオドが打たれることがあるわけですが、その線引きはどうなっているのでしょう。
どのような状態になれば療養の給付は打ち切られるのでしょう。
療養の給付はどこまで行われる?
(平成27年問2B)
療養の給付は、その傷病が療養を必要としなくなるまで行われるので、症状が安定して疾病が固定した状態になり、医療効果が期待しえない状態になっても、神経症状のような傷病の症状が残っていれば、療養の給付が行われる。
解説
解答:誤
傷病の症状が残っていても、症状が安定して固定した状態になり、治療の必要がなくなった場合(治ゆ)は療養の給付は行われません。
ただ、治ゆしたあとも一定の障害が残った場合は、その程度に応じて障害(補償)給付が支給されることがあります。
では次は一部負担金についての過去問を見ておきましょう。
業務災害であれば労働者が負担することはないのですが、通勤は事業主の管理が及ばないわけですから、労働者も少しは負担しましょうよ、という制度なんですね。
そんな一部負担金についての1問目は「額」についての問題です。
一部負担金の額
(平成24年問2B)
政府は、療養給付を受ける労働者(法令で定める者を除く。)から、200円(健康保険法に規定する日雇特例被保険者である労働者については100円)を一部負担金として徴収する。ただし、現に療養に要した費用の総額がこの額に満たない場合は、現に療養に要した費用の総額に相当する額を徴収する。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
原則として一部負担金の額は200円です。
健康保険法に規定する日雇特例被保険者である労働者については100円となります。
もし、療養の費用の総額が200円(100円)未満の場合は、その総額を一部負担金として徴収することになります。
とはいっても、すべての通勤災害に一部負担金が生じるわけではありません。
要件を満たせば一部負担金が免除になるのです。
一部負担金が徴収されない場合とは
(平成27年問2E)
政府が療養給付を受ける労働者から徴収する一部負担金は、第三者の行為によって生じた交通事故により療養給付を受ける者からも徴収する。
解説
解答:誤
「第三者の行為によって生じた事故により療養給付を受ける者」については一部負担金は免除になります。
前回の記事にも「第三者の行為」についての過去問を取り上げました。
同じ論点での焼き直しということになりますね。
一部負担金が免除になるケースとして、
- 第三者の行為によって生じた事故により療養給付を受ける者
- 療養の開始後3日以内に死亡した者その他休業給付を受けない者
- 同一の通勤災害に係る療養給付について既に一部負担金を納付した者
となります。
今回のポイント
- 労働者の搬送は、療養のために医療機関へ運んでいるわけなので、搬送中に死亡したとしても「移送」として認められます。
-
療養の給付の請求書への記載事項としては、
- 災害の発生の時刻及び場所
- 就業の場所並びに就業開始の予定の年月日時及び住居を離れた年月日時
- 通常の通勤の経路及び方法
- 住居又は就業の場所から災害の発生の場所に至つた経路、方法、所要時間その他の状況 など
があります。
- 傷病の症状が残っていても、症状が安定して固定した状態になり、治療の必要がなくなった場合(治ゆ)は療養の給付は行われません。
- 原則として一部負担金の額は200円です。
- 一部負担金が免除になるケースとして、
- 第三者の行為によって生じた事故により療養給付を受ける者
- 療養の開始後3日以内に死亡した者その他休業給付を受けない者
- 同一の通勤災害に係る療養給付について既に一部負担金を納付した者
となります。
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