労働保険料の算定には、労働者の賃金が基になりますが、賃金にあたるかどうかについての出題が多くなされています。
中には、徴収法独自の扱いがなされたものがありますので確認していくようにしましょう。
まずは、一般保険料の算定についての問題から見ていきましょう。
一般保険料の算定はどうする?
(平成30年雇用問8B)
労働保険徴収法第39条第1項に規定する事業以外の事業(一元適用事業)の場合は、労災保険に係る保険関係と雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業として一般保険料の額を算定することはない。
解説
解答:誤
一元適用事業でも、たとえば雇用保険の適用を受けない人の場合は、労災保険と雇用保険を別個の事業とみなして一般保険料の額を算定することになります。
ではその一般保険料を算定するにあたって、算定基礎にする賃金を見るわけですが、賃金に入るものと入らないものがあるようです。
まず次の問題を見てみましょう。
休業補償は賃金になる?
(平成26年労災問8エ)
労働基準法第76条の規定に基づく休業補償は、労働不能による賃金喪失に対する補償であり、労働の対償ではないので、労働保険料等の算定基礎となる賃金に含めない。また、休業補償の額が平均賃金の60パーセントを超えた場合についても、その超えた額を含めて労働保険料等の算定基礎となる賃金総額に含めない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
労働基準法に基づいた「休業補償」は、使用者の責に基づいた事業所の休業に対する補償なので、労働の対償に基づいた賃金ではないですね。
しかも、休業補償は平均賃金の60%あれば法定額を満たしますが、その60%を超えた金額についても休業補償となりますので賃金には含まれないことになります。
では、次のケースの場合は賃金に入るのでしょうか。
労働者負担分の社会保険料を事業主が負担している場合が論点になっています。
社会保険料の労働者負担分を事業主が負担したら?
(平成26年労災問8ウ)
雇用保険料その他社会保険料の労働者負担分を、事業主が、労働協約等の定めによって義務づけられて負担した場合、その負担額は賃金と解することとされており、労働保険料等の算定基礎となる賃金総額に含める。
解説
解答:正
問題文のとおりで、社会保険料の労働者負担分を事業主が労働協約などの定めによって負担した場合は、その負担額は賃金となります。
社会保険料相当分は、事業主の負担がなければ、天引きされて納付される分ですので、事業主負担分と言っても元はと言えば労働者の賃金ですよね。
さて、次は「生命保険料」がテーマの過去問です。
事業主が労働者を被保険者とした生命保険をかけた場合、その保険料の取り扱いについて確認しましょう。
労働者→生命保険→事業主
(平成29年労災問8D)
労働者の退職後の生活保障や在職中の死亡保障を行うことを目的として事業主が労働者を被保険者として保険会社と生命保険等厚生保険の契約をし、会社が当該保険の保険料を全額負担した場合の当該保険料は、賃金とは認められない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
先ほどの社会保険料と違って、今回の生命保険料は事業主が勝手にやっていることで労働者の給料から天引きしているわけではありませんよね。
しかも、労働の対象とも言えなさそうですし、そういった生命保険の保険料は賃金とは認められないのでしょう。
では賃金について最後の問題です。
慶弔見舞金が賃金にあたるのか見てみますが、徴収法においては他の法律とは違った取り扱いのようです。
慶長見舞金は賃金?(徴収法は特別)
(平成26年労災問8イ)
慶弔見舞金は、就業規則に支給に関する規定があり、その規定に基づいて支払われたものであっても労働保険料の算定基礎となる賃金総額に含めない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
徴収法においては、就業規則に規定された慶弔見舞金であっても、労働保険料の算定基礎となる賃金総額には含められません。
これは、結婚祝金や災害見舞金などについても同様です。
慶弔見舞金は、賃金総額に含めない。
今回のポイント
- 一元適用事業でも、たとえば雇用保険の適用を受けない人の場合は、労災保険と雇用保険を別個の事業とみなして一般保険料の額を算定することになります。
- 労働基準法に基づいた「休業補償」は、使用者の責に基づいた事業所の休業に対する補償なので、労働の対償に基づいた賃金ではないです。
- 社会保険料の労働者負担分を事業主が労働協約などの定めによって負担した場合は、その負担額は賃金となります。
- 徴収法においては、就業規則に規定された慶弔見舞金であっても、労働保険料の算定基礎となる賃金総額には含められません。
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