過去問

「徴収法 特例納付保険料がよく分からない人のためのマニュアル」過去問・徴-30

労働保険料を徴収する権利2年を経過すると時効によって消滅してしまいます(徴収法第41条)。

ですが、労働者のお給料からは雇用保険料として天引きしているのに、実際には保険関係成立の届出をしていなかったということが起こりえます。

そのようなことが判明した場合、2年以内であれば、保険料を徴収することができるのですが、2年を超えてしまうと時効により保険料を徴収することができないのです。

原則としては、資格取得をして被保険者である期間が算定基礎期間になるので、保険料を徴収できない2年を超えている分については、雇用保険料を引かれているにもかかわらず所定給付日数が反映されないことになります。

ただ、それでは労働者にとっては理不尽なことになってしまうので、お給料の天引きが確認されればその時点までさかのぼって被保険者であったことにしてくれます。

でも、保険料を払っていないのに基本手当などを支給したとあっては、真面目に保険料を払っている事業主に対しての公平性が損なわれてしまうので、特例納付保険料という制度を作って、時効で消滅した分の保険料も払えるようにしたのです。

とはいっても、徴収する権利は時効で消えてしまっていますので、あくまでも「払ってもらえませんか?」というお願いになってしまい、事業主も保険料を払う義務がない、というスタンスであることは押さえておきましょう。

では、特例納付保険料についての論点を過去問をとおして確認することにしましょう。

最初の問題は、特例納付保険料の対象になる事業主の定義についてです。

 

特例納付保険料を納付する対象になる事業主とは?

(平成27年雇用問10A)

特例納付保険料の対象となる事業主は、特例対象者を雇用していた事業主で、雇用保険に係る保険関係が成立していたにもかかわらず、労働保険徴収法第4条の2第1項の規定による届出をしていなかった者である。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

特例納付保険料の対象となる事業主は、「特例対象者を雇用していた事業主」なのですが、「特例対象者」というのは、先ほど述べたように、2年以上前に雇用保険料をお給料から天引きされているのに、被保険者の資格取得がされていなかった人のことを言います。

ただ、もしその特例対象者になる人が、お給料から天引きされているのに被保険者になっていないことを知っていた場合はどうなるのでしょう。

それでも特例対象者になるのでしょうか?

 

私、被保険者でないことを知ってました、、、

(平成27年雇用問10B)

雇用保険法第7条の規定による被保険者自らに関する届出がされていなかった事実を知っていた者については、特例対象者から除かれている。

 

解説

解答:正

問題文のとおり、被保険者自らに関する届出がされていなかった「事実を知っていた者」は特例対象者からは除かれます。

お給料から雇用保険料を天引きされているのに、自分が被保険者でないことを知っている、ということが、労働者側にどんなメリットがあるのか分かりませんが、、、

さて、特例納付保険料の納付についての流れですが、

  1. 厚生労働大臣が納付するよう勧奨する(義務
  2. それに対し、事業主が納付する旨を書面で申し出ることができる

ということになっています。

ここで気になる納付する特例納付保険料の額ですが、計算はどのように行っているのでしょうか。

 

特例納付保険料の計算方法とは?

(平成27年雇用問10E)

特例納付保険料の基本額は、当該特例対象者に係る被保険者の負担すべき額に相当する額がその者に支払われた賃金から控除されていたことが明らかである時期のすべての月に係る賃金が明らかである場合には、各月それぞれの賃金の額に各月それぞれに適用される雇用保険率を乗じて得た額の合計額とされている。

 

解説

解答:誤

問題文の場合、「各月それぞれの賃金の額に各月それぞれに適用される雇用保険率を乗じて得た額の合計額」ではありません。

雇用保険料が賃金から天引きされていた月の賃金が全部わかっている場合は、

(「賃金が明らかになっているすべての月の賃金の合計」÷「左記のすべての月数」)×雇用保険料率×(2年を超えている分の月数から被保険者になっている月数を引いた月数)

で計算した金額が特例納付保険料の基本料金(基本額)ということになります。

ちなみに、雇用保険料率は、2年を超えている分の月の中で一番最近の月に適用されている雇用保険料率を使います。

つまり、

  1. 2年より前の雇用保険料が天引きされているすべての賃金の平均額を出す
  2. 2年より前の月のうち、一番直近の月に適用されている雇用保険料率を掛けて
  3. 2年より前で、雇用保険が天引きされているすべての月数から雇用保険の被保険者になっている月数を引いた数(1月未満の端数切り捨て)を掛ける

という手順を経て基本額を出すわけです。

ただ、上記のようにすべての月の賃金額がわかっていない場合は、「1」の部分は、

2年より前で雇用保険料が天引きされていることが分かっている「一番古い月」と「一番直近の月」の2月分の平均額を出すということになります。

次に、この基本額に利子を乗っけるわけですが、その割合はどのように設定されているのでしょうか。

 

特例納付保険料はどのくらいの利子が加算されている?

(平成27年雇用問10C)

特例納付保険料は、その基本額のほか、その額に100分の10を乗じて得た額を加算したものとされている。

 

解説

解答:正

問題文のとおりで、特例納付保険料の基本額に加算する額は、特例納付保険料の基本額に100分の10を乗じて得た額、ということになっています。

ここで意識したいのは、「追徴金」という表現になっていないんですね。

おそらく、時効を過ぎたので、本来徴収するべき保険料ではなく、事業主の意思で支払う保険料だからなんでしょうか。

ただ、表現は違っても、「100分の10」という割合は一緒ですけどね。笑

さて、いよいよ特例納付保険料を納める段階になったら、政府の方から具体的な金額と納付する期限が通知されるわけですが、その段取りについての問題を見てみましょう。

 

特例納付保険料の納付方法について、事業主に対してどうやって通知する?

(平成27年雇用問10D)

厚生労働大臣による特例納付保険料の納付の勧奨を受けた事業主から当該保険料を納付する旨の申出があった場合には、都道府県労働局歳入徴収官が、通知を発する日から起算して30日を経過した日をその納期限とする納入告知書により、当該事業主に対し、決定された特例納付保険料の額を通知する。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

事業主から当該保険料を納付する旨の申出があったら、「都道府県労働局歳入徴収官が、通知を発する日から起算して30日を経過した日をその納期限とする納入告知書」で特例納付保険料保険料の額を通知します。

この納入告知書には特例納付保険料の額と一緒に、納期限も書かれています。

さらっと書いてますが、労働局歳入徴収官が送るのは「納入告知書」なんですね。

納入告知書といえば、確定保険料の認定決定などに使われるものですね。

政府は、事業主に「特例納付保険料を払ってもらえませんか?(義務じゃないけど)」と、ここまでは「お願い」なのですが、事業主が「払いますよ」と申し出をした途端、

「ここに書かれている金額をこの日までに利子をつけて払ってね」

と強気な感じで通知をするように見えるのは私だけでしょうか。笑

 

今回のポイント

  • 特例納付保険料の対象となる事業主は、「特例対象者を雇用していた事業主」のことです。
  • 特例対象者」というのは、先ほど述べたように、2年以上雇用保険料をお給料から天引きされているのに、被保険者の資格取得の届出がされていなかった人のことを言います。
  • 被保険者自らに関する届出がされていなかった「事実を知っていた者」は特例対象者からは除かれます。
  • 雇用保険料が賃金から天引きされていた月の賃金が全部わかっている場合は、(「賃金が明らかになっているすべての月の賃金の合計」÷「左記のすべての月数」)×雇用保険料率×(2年を超えている分の月数ー被保険者になっている月数)が特例納付保険料の額になります。
  • 特例納付保険料の基本額に加算する額は、特例納付保険料の基本額に100分の10を乗じて得た額です。
  • 特例納付保険料保険料の額の通知は、都道府県労働局歳入徴収官が、通知を発する日から起算して30日を経過した日をその納期限とする納入告知書で行います。

 

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