「社労士試験 労基法 賃金の支払に関する取扱説明書」過去問・労基-76

今回は、賃金の支払について扱った過去問を見ていきたいと思います。

賃金は、労働者が生活をするための大切なお金ですから、労基法や判例でも労働者の保護に重きを置いています。

そのような視点で見てみると、論点も整理しやすいかもしれませんね。

それでは過去問を見ていくことにしましょう。

最初の問題は、「通貨払の原則」について問われています。

通貨以外のもので賃金を支払う場合は、どのような手続きが必要だったでしょうか。

 

賃金を通貨以外のもので支払うときは

(令和元年問5A)

労働基準法第24条第1項は、賃金は、「法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、通貨以外のもので支払うことができる。」と定めている。

 

解説

解答:誤り

労使協定でできることは、賃金の一部控除なので、問題文のように通貨以外のもので支払う場合は労働協約で定めることが必要です。

この、労使協定と労働協約は混同しやすいので気をつけたいですね。

では次に、お給料を多く払い過ぎたときに、次の給料で相殺したいというケースも出てきますね。

しかし、法24条では全額払の原則があり、賃金は全額支払う必要があります。

では、過払いの賃金を精算するときに注意することは何なのでしょう。

 

過払い賃金の精算をするときに気をつけること

(平成27年問4B)

過払いした賃金を精算ないし調整するため、後に支払わるべき賃金から控除することは、その金額が少額である限り、労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれがないため、労働基準法第24条第1項に違反するものではないとするのが、最高裁判所の判例である。

 

解説

解答:誤り

相殺の金額が「少額である限り」許されるものではないので誤りです。

これは、最高裁判例からの出題ですが、

過払い賃金の相殺は、「労働者の経済生活の安定との関係上不当と認められない」ものであれば、全額払の原則にはあたらないとしています。

また、相殺するなら、「過払のあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ」ることで、

労働者の経済生活を脅かさないようにする必要があるとしています。

つまり、賃金は労働者の生活の糧なので、その安定をこわさないようにしてね、ということですね。

では、次は労働者が遅刻をした時の賃金カットについて見てみましょう。

いわゆるノーワークノーペイと減給がどのように適用されるのかを下の問題で確認しますね。

 

遅刻した時の賃金カットの取り扱い

(平成23年問6D)

労働者が5分遅刻した場合に、30分遅刻したものとして賃金カットをするという処理は、労務の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)について労働基準法第24条の賃金の全額払の原則に反し違法であるが、このような取扱いを就業規則に定める減給の制裁として同法第91条の制限内で行う場合には、同法第24条の賃金の全額払の原則に反しない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

遅刻をして労務の提供がなかった時間について賃金をカットするのは当然のことですが、

それ以上にカットするのは原則として全額払の原則に違反します。

でも、就業規則に則って減給の制裁を行う場合は、

法91条の「1回の減給額が平均賃金の半額」、「総額が1賃金支払期の賃金の10分の1」の制限内であれば大丈夫です。

さて、次は直接払の原則を見てみましょう。

直接払の原則は、文字どおり、賃金は労働者に直接渡す必要があるのですが、どのように規定されているのでしょうか。

 

直接払の原則とは

(平成28年問3B)

労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合でも、使用者は当該賃金債権の譲受人に対してではなく、直接労働者に対し賃金を支払わなければならないとするのが、最高裁判所の判例である。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

たとえ、賃金を受け取る権利のある労働者が、賃金債権を他人に譲渡したとしても、使用者は直接労働者に賃金を支払う必要があります。

上記を許してしまうと、労働者を労働に縛り付けるよう悪用されかねず、一昔前の労働者に戻ってしまいそうですね。

ちなみに、賃金を妻などの使者に渡すのは大丈夫というのがありましたね。

それでは最後に一定期日払について問われている過去問を見ておきましょう。

 

一定期日払の「一定期日」の取り扱い

(平成27年問4E)

労働基準法第24条第2項に定める一定期日払の原則は、期日が特定され、周期的に到来することを求めるものであるため、期日を「15日」等と暦日で指定する必要があり、例えば「月の末日」とすることは許されない。

 

解説

解答:誤り

賃金の支払期日を月末とすることは大丈夫ですので、問題文は誤りです。

問題文にあるように、賃金の支払期日は、期日が特定されて、周期的に到来することを求めるものですが、「15日」と暦日で特定するまでは必要なく、月末とすることも可能ですが、

「毎月第4月曜日」とするのは、期日の到来の変動が大きくなってしまうのでアウトです。

 

今回のポイント

  • 労使協定でできることは、賃金の一部控除で、通貨以外のもので支払う場合は労働協約で定めることになります。
  • 過払い賃金の相殺は、「労働者の経済生活の安定との関係上不当と認められない」ものであれば、全額払の原則にはあたらないとしていて、相殺するなら、「過払のあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ」ることで、労働者の経済生活を脅かさないようにする必要があるとしています。
  • 遅刻をして労務の提供がなかった時間以上に賃金をカットする場合、つまり、就業規則に則って減給の制裁を行うときは、法91条の「1回の減給額が平均賃金の半額まで」、「総額が1賃金支払期の賃金の10分の1」の制限内であれば大丈夫です。
  • たとえ、賃金を受け取る権利のある労働者が、賃金債権を他人に譲渡したとしても、使用者は直接労働者に賃金を支払う必要があります。
  • 賃金の支払期日は、期日が特定されて、周期的に到来することを求めるものですが、「15日」と暦日で特定するまでは必要なく、月末とすることも可能です

 

毎日の勉強のヒントにどうぞ♫

基本事項の繰り返し学習というのは、野球の素振りに似ていますね。

反復練習によって知識が自分の頭に擦り込まれ、変化球の問題にも対応できるようになるのです。

何事も基礎が大切ということなのでしょうね♫

 

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