団体交渉は、使用者と労働組合のメインイベントといってもいいかも知れませんね。
社労士試験でも、団体交渉について何度も出題されています。
もちろん、まったく同じ言い回しで出題されることはないですが、キモを押さえておけば対応できますので見ていきましょう。
最初の過去問は、使用者が労働組合に対して求められていることです。
会社内に複数の労働組合が存在する場合、使用者にはどのようなことが求められているのでしょうか。
使用者が労働組合に対して保持しなければならないこと
(平成28年問2C)
同一企業内に複数の労働組合が併存する場合には、使用者は団体交渉の場面に限らず、すべての場面で各組合に対し中立的態度を保持しなければならないとするのが、最高裁判所の判例である。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
使用者は、すべての労働組合に対して、「中立的態度」を保持してその団結権を平等に承認、尊重すべきものだ、という判例です。
なので、所定の労働組合に対して差別的な取り扱いをすることはNGということになります。
そのことを踏まえた上で次の問題を見てみましょう。
社内に複数の労働組合があるときの団体交渉
(平成23年問5B)
労働組合法に関して、一の工場事業場に複数の労働組合がある場合においては、使用者は、当該工場事業場の労働者の過半数で組織する労働組合とのみ誠実に団体交渉を行う義務を負う。
解説
解答:誤り
使用者は、労働者の過半数で組織する労働組合とのみではなく、「それぞれの労働組合」に対して誠実に団体交渉を行う義務を負いますので誤りです。
こちらについては、判例ではなく、労働組合法第7条2項にて
「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。」
は不当労働行為に該当するのですが、
使用者は、労働者の過半数で組織する労働組合「以外」の労働組合にも、この条文が適用されます。
では、複数の労働組合がある場合の措置についてもう少し見ておきましょう。
下の問題でも複数労働組合との団体交渉が論点になっています。
少し言い回しが違いますが、言っていることは同じなので読んでみましょう。
会社外の労働組合との団体交渉
(平成25年問2A)
日本の労働組合の最大の特徴は、労働組合が企業別に組織されているいわゆる企業別組合である点にあり、使用者は、労働者の労働条件の変更を行う場合には、まず企業内の多数労働組合と団体交渉を行う義務を負う。
解説
解答:誤り
使用者は、複数の労働組合に対しては中立的態度を保持する必要がありますので、「まず企業内の多数労働組合と団体交渉を行う義務を負う」の部分が誤りです。
複数の労働組合が存在する場合に、団体交渉を行う順序が定められているわけではありません。
なので、多数労働組合を優遇して他の労働組合を差別することは許されないということですね。
では、ユニオンのように社外に労働組合がある場合はどうなのでしょうか。
使用者は、社外の労働組合に対しても団体交渉を誠実に行う義務はあるのでしょうか。
会社外の労働組合との団体交渉 その2
(平成23年問5C)
労働組合法に関して、使用者は、その雇用する労働者が加入している労働組合であっても、当該企業の外部を拠点に組織されている労働組合(いわゆる地域合同労組など)とは、団体交渉を行う義務を負うことはない。
解説
解答:誤り
使用者は、社外の労働組合に対しても団体交渉を行う義務がありますので、問題文は誤りです。
こちらは、先ほどの労働組合法第7条2項が適用されるのですが、労働組合が社外に拠点がある場合でも同じということですね。
では最後に、団体交渉の内容について見ておきましょう。
団体交渉の交渉内容には、「義務的団交事項」と「任意的団交事項」の2種類があるのですが、
「義務的団交事項」は労働者の労働条件や待遇などについて使用者が対応可能なテーマを指します。
「任意的団交事項」は人事や設備の更新などのことで、こちらは使用者が団交に応じる場合は対象になります。
あくまで任意ということですね。
ということで、下の問題がどのように取り扱われるのか見てみましょう。
団体交渉の内容
(平成25年問2E)
労働組合の目的は、賃金等の労働条件を維持改善し労働者の経済的地位の向上を図ることにあるから、いわゆるセクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントなどを予防するための職場環境の整備は、いわゆる義務的団体交渉事項に含まれない。
解説
解答:誤り
セクハラやパワハラは、労働者の待遇にあたるもので、使用者が職場環境の改善を行うことができるので「義務的団交事項」となりますから、問題文は誤りです。
特にパワハラについては、2020年に労働施策総合推進法が改正施行されて、パワハラ対策が企業に求められていますから団体交渉としてもきちんと応じる必要がありそうですね。
今回のポイント
- 使用者は、すべての労働組合に対して、「中立的態度」を保持してその団結権を平等に承認、尊重すべきものだ、という判例があります。
- 使用者は、「それぞれの労働組合」に対して誠実に団体交渉を行う義務を負います。
- 使用者は、社外の労働組合に対しても団体交渉を行う義務があります。
- セクハラやパワハラは、労働者の待遇にあたるもので、使用者が職場環境の改善を行うことができるので「義務的団交事項」となります。
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