今回は通勤災害についてみていきたいと思いますが、業務災害と比べると要件が色々とあって整理しにくい印象があります。
なので、まず「通勤」の定義を押さえた上で、「逸脱・中断」や「住居」についての考え方を見ていくといいですね。
制度の根っこの部分から理解していき、枝葉に向かっていくイメージです。
一度に克服することはなかなか難しいかもしれませんので、少しずつでも繰り返していくようにしましょう。
それでは最初の問題に進んでいきますね。
1問目は、通勤の定義が論点になっています。
ここが根っこの知識になっていますので見ていきましょう。
通勤の定義を確認しましょう
(平成25年問4エ)
労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間の往復を合理的な経路及び方法により行うことのみが通勤に該当する。
解説
解答:誤り
労災保険法の通勤は、問題文のパターンだけではなく、以下のとおりとなっています。
- 住居と就業の場所との間の往復
- 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
- 「1」に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(所定の要件に該当するものに限られます)
で、そもそも通勤とは何なのかというと、
「労働者が、就業に関し、上記の3パターンの移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くもの」
ということになっています。
なので、出張に行くときなど、移動そのものが業務になっていると通勤ではないということですね。
では、通勤において災害に遭う「通勤災害」とはどういう時に該当するのか、事例問題を使って確認してみましょう。
通勤災害の事例問題
(平成25年問4ア)
通勤の途中、経路上で遭遇した事故において、転倒したタンクローリーから流れ出す有害物質により急性中毒にかかった場合は、通勤によるものと認められる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
通勤災害がどういう時に認められるのかというと、先ほどの通勤の定義に該当している移動中に、通勤と相当因果関係のある危険が具体化した場合です。
つまり、通勤していたらそんなことあるよね〜という危険が現実に起こった場合を指します。
なので、問題文のように普通に道路を歩いていたら、工事現場に来ていたタンクローリーが転倒して有害物質が流れ出して中毒になった場合や、
通勤中にひったくりにあって転倒したことでケガをした場合などが通勤災害に該当するというわけです。
しかし、毎日生活していたら、家と会社の往復だけでは済まないケースもあったりしますよね。
会社帰りに買い物したり、病院に寄ったりなど色々な用事をして帰宅する場合など、
先ほどの「合理的な経路及び方法」から外れてしまうこともあると思います。
そんな時に災害にあったら通勤災害と認めてくれるのでしょうか。
次の問題を見てみましょう。
通勤経路から外れた時の取り扱い
(平成28年問3B)
会社からの退勤の途中に、定期的に病院で、比較的長時間の人工透析を受ける場合も、終了して直ちに合理的経路に復した後については、通勤に該当する。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
原則としては、「合理的な経路及び方法」のルートを外れた瞬間に通勤の定義から外れてしまい、ルートから外れた後に災害にあったとしても通勤災害として認められません。
しかしながら、用事があって通勤ルートから外れてもその用事が、日常生活上必要な行為でやむを得ない場合は、
通勤ルートに復帰すれば通勤として認められます。
ただ、ルートから外れている間は通勤とはなりません。
これを規定ではどのように規定しているのかというと、
「移動の経路を逸脱し、または移動を中断した場合においては、その逸脱または中断の間及びその後の移動は、通勤としない。ただし、その逸脱または中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。」
となっています。
で、文中の厚生労働省令で定められている日常生活上必要な行為というのは、
- 日用品の購入その他これに準ずる行為
- 職業訓練、学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であつて職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
- 選挙権の行使その他これに準ずる行為
- 病院または診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
- 要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護
と規定されています。
問題文の人工透析については、病院などでの治療に準じた行為ということで、日常生活上必要な行為となっています。
人工透析を受けないと命にかかわりますから必要な行為になりますよね。
さて、通勤は、「住居と就業の場所との間の往復を合理的な経路及び方法により行う」ことが要件の一つになっていますが、
住居について少し掘り下げてみたいと思います。
住居というのは、言うまでもなく労働者が住んでいる家のことをいいますが、
単身赴任などで、家族と離れて暮らしているケースも当然あります。
そんな場合に、「住居」として認められるのは、労働者が寝泊まりしている家だけを指すのかどうかが次の問題で問われていますので見てみましょう。
労働者の住居となるのは、、、
(平成29年問5E)
労働者が転任する際に配偶者が引き続き就業するため別居することになった場合の、配偶者が住む居宅は、「住居」と認められることはない。
解説
解答:誤り
問題文の場合は、配偶者が住む居宅が「住居」として認められることがあります。
これは、先ほどの「3」にあたる【「1」に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動】についての論点になります。
労働者が転任しているのは、仕事のためやむなく配偶者のいる家から離れて暮らしているわけです。
なのに、配偶者のいる家を住居と認めないのは少し酷な感じがしますよね。
というのも、帰省していて配偶者のいる住居から仕事場に直接向かった時に災害にあっても通勤災害にならないということですから。。。
なので、定期的に配偶者のいる家に帰省している場合は、帰省先の家も「住居」として認められています。
頻度としては、だいたい毎月1回以上あれば「反復・継続性」が認められて配偶者のいる家が「住居」となるのです。
ということで、「労働者のいる家と帰省先の住居の往復」や「帰省先の住居から事業場の移動」などで災害にあった場合は通勤災害と認められます。
では最後に、派遣労働者と通勤災害について見ておきましょう。
派遣労働者は、雇用契約を結んでいるのは派遣元ですが、実際に働く場所は派遣先となっています。
派遣労働者にとっての「通勤」とはどういう場合を指すのか、次の問題を読んでみましょう。
派遣労働者にとっての通勤とは
(平成26年問5C)
派遣労働者に係る通勤災害の認定に当たっては、派遣元事業主又は派遣先事業主の指揮命令により業務を開始し、又は終了する場所が「就業の場所」となるため、派遣労働者の住居と派遣元事業場又は派遣先事業場との間の往復の行為は、一般に「通勤」となる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
派遣労働者は、派遣元と派遣先の両方から指揮命令を受けますので、「住居と派遣元」、「住居と派遣先」の往復は通勤に該当します。
ちなみに、派遣元と派遣先との往復については、業務命令であれば、業務遂行性が認められるので、
こちらは通勤には当たらず、災害にあった場合は業務災害となりますので区別しておきましょう。
今回のポイント
-
通勤とは、「労働者が、就業に関し、下記の3パターンの移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くもの」ということになっています。
- 通勤のパターンは以下の3つです。
- 住居と就業の場所との間の往復
- 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
- 「1」に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(所定の要件に該当するものに限られます)
- 通勤災害は、上記の通勤の定義に該当している移動中に、通勤と相当因果関係のある危険が具体化して災害にあった場合を指します。
- 原則としては、「合理的な経路及び方法」のルートを外れた瞬間に通勤の定義から外れてしまい、ルートから外れた後に災害にあったとしても通勤災害として認められませんが、日常生活上必要な行為でやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断の間を除いて通勤と認められます。
- おおよそ毎月1回以上、配偶者のいる家に帰省している場合は、帰省先の家も「住居」として認められています。
- 派遣労働者は、派遣元と派遣先の両方から指揮命令を受けますので、「住居と派遣元」、「住居と派遣先」の往復は通勤に該当します。
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就寝30分前になったら、できれば勉強以外の情報を頭に入れない方が良いです。
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