今日(令和2年8月23日)は、社労士試験の当日です。
今年は新型コロナウイルスがいきなり私たちの生活を一変させてしまいましたね。
その中で勉強を続けて来られたあなたに本当に敬意を表したいと思います。
あとは自分の持っているものをすべて出し切るだけです。
ご健闘を心より応援しています。
今回の労災保険法の雑則ですが、同じ論点が繰り返し出題されていることが多いですね。
特に「報告」や「医師への受診命令」などは何回も出題されています。
論点としては多くないので一つ一つ確実に押さえていきましょう。
最初の問題は「国庫」についての過去問です。
ここでは、言葉の言い回しに注目してみることにしましょう。
国庫は費用の一部を〇〇することができる
(平成26年問7C)
国庫は、労災保険事業に要する費用の一部を補助することができる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
ここでのキーワードは「補助」です。
ちなみに、雇用保険法や国民年金法では「負担」という言葉が使われています。
健康保険法も健康保険事業の事務の執行については「負担」と表現しています。
「負担」というと「一緒に支える」というイメージがありますが、「補助」と聞くと「必要なときには助けるよ」みたいな、ちょっと一歩引いた感じがするのは私だけでしょうか。笑
まあ、業務災害や通勤災害というのは一般的な私傷病に比べると発生する数そのものが少ないから、なのかもしれませんね。
さて、次は時効について見ていくことにしましょう。
労災保険法で時効に関する論点は3種類あります。
「え?2種類じゃないの?」と思われるかもしれませんが、チェックしていきましょう。
労災保険の時効は3種類
(平成23年問4D)
療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付及び二次健康診断等給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から3年を経過したとき、障害補償給付、遺族補償給付、障害給付及び遺族給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から5年を経過したときには、時効によって消滅する。
解説
解答:誤
問題文前半の、「療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付及び二次健康診断等給付を受ける権利」の時効は、
「3年」ではなく、「2年」です。
ここで時効の整理をしておきましょう。
『時効2年』
- 療養(補償)給付での療養の費用の支給
- 休業(補償)給付
- 介護(補償)給付
- 葬祭料・葬祭給付
- 二次健康診断等給付
- 障害(補償)年金前払一時金
- 遺族(補償)年金前払一時金
『時効5年』
- 障害(補償)給付
- 遺族(補償)給付
- 障害(補償)年金差額一時金
『時効なし』
- 傷病(補償)年金
以上の3種類になります。
傷病(補償)年金に時効がないのは、労働者側が請求するのではなく、政府の職権で支給が決定されるので時効が存在しない、ということになります。
では次の問題は「他の行政機関などへの協力」についてです。
行政を進めて行く上で、厚生労働省だけでは解決できないことがいろいろとあるんでしょうね。
他の組織に協力をお願いしたい、そんなときは?
厚生労働大臣から協力を求められた行政機関は、、、?
(平成25年問3E)
労災保険法では、厚生労働大臣は、同法の施行に関し、関係行政機関又は公私の団体に対し、資料の提供その他必要な協力を求めることができ、協力を求められた関係行政機関又は公私の団体は、できるだけその求めに応じなければならないと規定されている。
解説
解答;正
問題文のとおりで、
厚生労働大臣は、「関係行政機関又は公私の団体に対して」資料の提供その他必要な「協力を求めることができ」、協力を求められた関係行政機関又は公私の団体は、「できるだけその求めに応じなければならない」
と規定されています。
これは厚生労働大臣だけではなく、労働者などの保険給付を受ける人にも同じことが言えます。
保険給付を受けるのに、戸籍謄本やら色々と書類を準備をする必要がありますので、できればそのための費用は抑えたいところですよね。
そんな気持ちで次の問題を見てみましょう。
市町村長にも協力して欲しい
(平成30年問3A)
市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法第252条の19第1項の指定都市においては、区長又は総合区長とする。)は、行政庁又は保険給付を受けようとする者に対して、当該市(特別区を含む。)町村の条例で定めるところにより、保険給付を受けようとする者又は遺族の戸籍に関し、無料で証明を行うことができる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
ただあくまでも、市町村長が無料で証明を行うことができる、と言っているだけなので、無料にするかどうかは市町村長次第ですが、気になる方は役所に問い合わせてみれば良いでしょう。笑
では次は「医師の診断」についての規定になります。
つまり、労災保険の給付について必要があれば保険給付を受ける人に対して医師の診断を受けることを命令できるのか、ということです。
下の問題を見て見ましょう。
医師の診断を受けることを命令できる?
(令和元年問1D)
行政庁は、保険給付に関して必要があると認めるときは、保険給付を受け、又は受けようとする者(遺族補償年金又は遺族年金の額の算定の基礎となる者を含む。)に対し、その指定する医師の診断を受けるべきことを命ずることができる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
保険給付を受ける労働者本人はもちろんのことですが、文中に「遺族補償年金又は遺族年金の額の算定の基礎となる者を含む」とありますね。
遺族(補償)年金の遺族の範囲に「厚生労働省令で定める障害の状態にある」ことも要件の一つになっているので、障害の状態が省令の基準に合っているかを確認するためなんでしょうね。
では、労働者への報告命令などの規定を確認しましょう。
先ほどは医師の診断を受けるように命令できるという話でしたが、それ以外にも保険給付を受ける人にはそれなりの報告や文書の提出をしてもらわないといけないようです。
労働者などへの報告義務などの範囲は?
(平成30年問3B)
行政庁は、厚生労働省令で定めるところにより、保険関係が成立している事業に使用される労働者(労災保険法第34条第1項第1号、第35条第1項第3号又は第36条第1項第1号の規定により当該事業に使用される労働者とみなされる者を含む。)又は保険給付を受け、若しくは受けようとする者に対して、労災保険法の施行に関し必要な報告、届出、文書その他の物件の提出又は出頭を命ずることができる。
解説
解答:正
問題文のとおりで、保険給付を受ける労働者や受給権者に対しては、必要な報告や届出、出頭などを命ずることができます。
まあ、それはそうですよね。
保険給付をしてもらいたいならそれ相応の協力をしなさい、となりますね。
ただ、気になることがあるのですが、保険給付を受けようとする人が派遣社員の場合、雇用契約をしているのは派遣元の会社ですが、実際に働いているのは派遣先の会社です。
職場環境の情報は派遣先にしかないわけで、派遣先から情報が欲しい場合、それを実行できる規定はあるんでしょうか、、、?
派遣先へ報告などの命令はできるの?
(平成26年問5E)
所轄都道府県労働局長又は所轄労働基準監督署長は、派遣先事業主に対して、労災保険法の施行に関し必要な報告、文書の提出又は出頭を命ずることができる。
解説
解答;正
問題文のとおりです。
派遣先の事業主に対しても、労災保険法の施行に関し必要な報告、文書の提出又は出頭を命ずることができる、となってます。
ただし、先ほどの問題の根拠になっている法47条では、
「行政庁は、厚生労働省令で定めるところにより、保険関係が成立している事業に使用される労働者(中略)若しくは保険給付を受け、若しくは受けようとする者に対して、この法律の施行に関し必要な報告、届出、文書その他の物件の提出(中略)若しくは出頭を命じ、又は保険給付の原因である事故を発生させた第三者(派遣先の事業主及び船員派遣の役務の提供を受ける者を除く。第53条において「第三者」という。)に対して、報告等を命ずることができる。」
となっているので、一定の注意は必要なようですね。
今回のポイント
- 国庫は、労災保険事業に要する費用の一部を補助することができます。
- 労災保険法で事項については「2年」、「5年」、「なし」の3種類です。
-
厚生労働大臣は、「関係行政機関又は公私の団体に対して」資料の提供その他必要な「協力を求めることができ」、協力を求められた関係行政機関又は公私の団体は、「できるだけその求めに応じなければならない」と規定されています。
- 市町村長は、行政庁又は保険給付を受けようとする者に対して、市町村の条例で定めるところにより、保険給付を受けようとする者又は遺族の戸籍に関し、無料で証明を行うことができる。
- 行政庁は、保険給付に関して必要があると認めるときは、保険給付を受け、又は受けようとする者(遺族補償年金又は遺族年金の額の算定の基礎となる者を含む。)に対し、その指定する医師の診断を受けるべきことを命ずることができます。
- 保険給付を受ける労働者や受給権者に対しては、必要な報告や届出、出頭などを命ずることができます。
- 派遣先の事業主に対しても、労災保険法の施行に関し必要な報告、文書の提出又は出頭を命ずることができることになっています。
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