過去問

徴収法 労働保険料の滞納に関する取扱マニュアル」過去問・徴-31

労働保険料など滞納については、督促であったり、延滞金についての論点が出題されていますが、

追徴金には延滞金がつかない、などといったなどややこしい一面があったりします。

今回は、そういった滞納に関する論点についての過去問を集めてみましたので見ていくことにしましょう。

 

「国税滞納処分の例によって処分される範囲」とは

(令和元年雇用問8B)

労働保険徴収法第27条第3項に定める「労働保険料その他この法律の規定による徴収金」には、法定納期限までに納付すべき概算保険料、法定納期限までに納付すべき確定保険料及びその確定不足額等のほか、追徴金や認定決定に係る確定保険料及び確定不足額も含まれる。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

労働保険料その他この法律の規定による徴収金」には、

  • 法定納期限までに納付すべき概算保険料
  • 法定納期限までに納付すべき確定保険料及びその確定不足額
  • 追徴金認定決定に係る確定保険料及び確定不足額

も含まれます。

問題文にある、「労働保険徴収法第27条第3項」というのは、以下のような規定になっています。

(督促及び滞納処分)
法27条
1 労働保険料その他この法律の規定による徴収金を納付しない者があるときは、政府は、期限を指定して督促しなければならない。
2 前項の規定によつて督促するときは、政府は、納付義務者に対して督促状を発する。この場合において、督促状により指定すべき期限は、督促状を発する日から起算して10日以上経過した日でなければならない。
3 第1項の規定による督促を受けた者が、その指定の期限までに、労働保険料その他この法律の規定による徴収金を納付しないときは、政府は、国税滞納処分の例によつて、これを処分する。

となっています。

ちなみに、徴収金の種類については、下記のリンクにある通達に記載されています。

「第8 督促状の発行及び延滞金」の「(注1) 本項の徴収金とは、次に掲げるものをいう。」の下に記載されていますので、興味のある方はご参考になさってください。

 

参考記事:平成21年10月29日 基発1029第2号

 

では次は、延滞金という名の「利子」がどのタイミングから発生するのかを確認しましょう。

 

延滞金が発生する期間はいつから?

(平成25年雇用問10B)

所轄都道府県労働局歳入徴収官は、労働保険料その他労働保険徴収法の規定による徴収金を納付しない事業主に対して、期限を指定して督促を行うが、指定された期限までに納付しない事業主からは、指定した期限の翌日から完納の前日までの日数に応じ、所定の割合を乗じて計算した延滞金を徴収する。

 

解説

解答:誤

「指定した期限の翌日から」ではなく、「納期限の翌日から」完納の前日までの日数に応じて、所定の割合を乗じて計算した延滞金を徴収することになります。

ただし、労働保険料の額が1,000円未満であるときは、延滞金を徴収しません。

とはいっても、ある期限までに徴収金を納付すれば延滞金が発生しないことがあるんです。

それはどういうケースなのか、下の過去問で確認しましょう。

 

納期限までに納付すれば延滞金は、、、?

(平成29年雇用問9A)

事業主が労働保険料その他労働保険徴収法の規定による徴収金を法定納期限までに納付せず督促状が発せられた場合でも、当該事業主が督促状に指定された期限までに当該徴収金を完納したときは、延滞金は徴収されない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

事業主が督促状に指定された期限までに当該徴収金を完納すれば延滞金は徴収されません。

ここで、延滞金が徴収されないケースを挙げておきましょう。

  • 督促状に指定した期限までに労働保険料その他この法律の規定による徴収金を完納したとき。
  • 納付義務者の住所又は居所がわからないため、公示送達の方法によつて督促したとき。
  • 延滞金の額が100円未満であるとき。
  • 労働保険料について滞納処分の執行を停止し、又は猶予したとき。
  • 労働保険料を納付しないことについてやむを得ない理由があると認められるとき。

それに加えて、延滞金がかからないケースがまだあるのです。

冒頭に述べた追徴金についてなのですが、次の問題でチェックしましょう。

 

追徴金に延滞金はかからない?

(平成26年雇用問10C)

所轄都道府県労働局歳入徴収官は、追徴金を納期限までに納付しない事業主に対し、期限を指定して当該追徴金の納付を督促するが、当該事業主は、その指定した期限までに納付しない場合には、未納の追徴金の額につき、所定の割合に応じて計算した延滞金を納付しなければならない。

 

解説

解答:誤

追徴金延滞金が課されることはありません。

その理由について、条文で確認しましょう。

(延滞金)
法28条
1 政府は、前条第1項の規定により労働保険料の納付を督促したときは、労働保険料の額に、納期限の翌日からその完納又は財産差押えの日の前日までの期間の日数に応じ、年14.6パーセント(当該納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、年7.3パーセント)の割合を乗じて計算した延滞金を徴収する。ただし、労働保険料の額が1,000円未満であるときは、延滞金を徴収しない。

いかがでしょう。

条文では、「労働保険料」に延滞金を課す、となっています。

追徴金は、労働保険料ではなくペナルティなので、延滞金がかからないという理屈になっているんですね。

ただし、追徴金や延滞金は、先ほどの「令和元年雇用問8B」の問題に出てきたように、「労働保険料その他この法律の規定による徴収金」になるので、督促国税滞納処分の例による処分はされますよ。笑

さて、お役所が徴収するものには、労働保険料以外にも国税や地方税といったものがありますが、取り立ての優先順位が決まっているようですね。

下の過去問で見てみることにしましょう。

 

先取特権の順位はどうなってる?

(平成29年雇用問9B)

労働保険料その他労働保険徴収法の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとされているが、徴収金について差押えをしている場合は、国税の交付要求があったとしても、当該差押えに係る徴収金に優先して国税に配当しなくてもよい。

 

解説

解答:誤

「配当しなくてもよい」ではなく、徴収金について差押えをしている場合に、国税の交付要求があったときには、国税に「配当しければなりません。」

問題文にもあるように、

「労働保険料その他この法律の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。」

となっている以上、差押えをしているものに対して、国税の交付要求があったときは、ちゃんと差し出さないといけない、というわけですね。

 

今回のポイント

  • 労働保険料その他この法律の規定による徴収金」には、
    • 法定納期限までに納付すべき概算保険料
    • 法定納期限までに納付すべき確定保険料及びその確定不足額
    • 追徴金認定決定に係る確定保険料及び確定不足額

    が含まれます。

  • 延滞金は、納期限の翌日から」完納の前日までの日数に応じて、所定の割合を乗じて計算した金額になります。
  • 事業主が督促状に指定された期限までに当該徴収金を完納すれば延滞金は徴収されません。
  • 追徴金延滞金が課されることはありません。

  • 徴収金について差押えをしている場合に、国税の交付要求があったときには、国税に配当しければなりません。

 

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