過去問演習などをしていると、報酬や賞与の定義は理解しているものの、実際のケースに当てはめてみた場合にどう判断すればいいのか分からなくなることがありますよね。
まして、本試験会場で「あれ?どうだったっけ?」と冷や汗はかきたくないです。苦笑
でも、問題を繰り返し解いていくうちに、「あ〜、そう考えるんだ」と腑に落ちてきますので大丈夫です!
それでは最初に、報酬の定義から確認していきましょう。
報酬の定義
(平成23年問5B)
健康保険法において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいうが、臨時に受けるもの及び3か月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
あらためて報酬と賞与についての定義を並べると、
- 報酬→労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの(臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは含まず)
- 賞与→労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、3月を超える期間ごとに受けるもの
となります。
また、両方に共通しているのは、
「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わない」
ということです。
見た目だけで判断せず、「労働の対償」となっているか、実態をまず判断するんですね。
次に、通勤手当についての過去問を見てみましょう。
半年ごとに支給される通勤手当は、果たして賞与なのか、それとも報酬になるのか、、、
6か月ごとに支給される通勤手当の扱いは?
(令和元年問3B)
保険料徴収の対象となる賞与とは、いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として3か月を超える期間ごとに支給されるものをいうが、6か月ごとに支給される通勤手当は、賞与ではなく報酬とされる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
まず、通勤手当は、労働の対償にはなるので、報酬か賞与のいずれかで迷うところです。
ただ、通勤は通常、ほとんど毎日行うので、数ヶ月ごとに支給するのは、単に便宜上の問題です。
なので、問題文のように、通勤手当が6か月おきに支給されるとしても、1か月あたりの金額を計算して報酬に組み込みます。
これは、下記のように通達に出ています。
昭和27年12月4日保文発第7241号:「3ヵ月または6ヵ月ごとに支給される通勤手当は、支給の実態は、原則として毎月の通勤に対し支給され、被保険者の通常の生計費の一部に充てられているため、報酬となる。この場合、月額に換算して報酬に含めることになる。」
では次は、出張旅費がどうなるのかについての論点になります。
ポイントは、出張旅費が労働の対償になるのか?ですね。
出張旅費は報酬になるの?
(平成30年問4B)
全国健康保険協会管掌健康保険において、事業主が負担すべき出張旅費を被保険者が立て替え、その立て替えた実費を弁償する目的で被保険者に出張旅費が支給された場合、当該出張旅費は労働の対償とは認められないため、報酬には該当しないものとして取り扱われる。
解説
解答:正
問題文のとおりで、出張旅費は報酬には該当しません。
たとえば、出張に行くのに、新幹線代を立て替えた場合、それは本来、業務を行うために会社側が負担する費用なわけで、労働の対償とは関係がないですよね。
「んじゃ、さっき出た通勤手当も労働の対償ではないんじゃないの?」
という疑問が出てきますよね。
通勤手当というのは、必ずしも会社が負担しなければならないものではないのです。
どういうことかというと、アルバイトや派遣社員などの求人を見ていても、「通勤手当を出しますよ」というところの方が少ないのではないでしょうか。
また、正社員であっても、「交通費は月○万円まで支給」と書いてあるところの方が多いですよね。
なので、通勤手当は福利厚生的な面があるため、「労働の対償」ということになり、報酬に該当するわけです。
というわけで、「通勤手当」と「出張旅費」はしっかり区別しておくようにしましょう。
ちなみに、出張旅費について下記のリンクを参考にしていただけましたら幸いです。
参考記事:平成25年5月31日 事務連絡 ○報酬・賞与の範囲について
さて、次の過去問は現物給与の扱いについての論点になります。
派遣社員に対して、現物給与の価額を適用する場合に、派遣元と派遣先のどちらの地域を採用するのでしょうか。
派遣社員の現物給与の価額はどこの地域を適用する?
(平成25年問1C)
現物で支給される食事や住宅は、厚生労働大臣が都道府県ごとに告示で定めた現物給与の価額に基づいて報酬に算入する(健康保険組合が規約で別段の定めをした場合を除く。)。なお、現物給与の価額の適用に当たっては、被保険者の勤務地(被保険者が常時勤務する場所)が所在する都道府県の現物給与の価額を適用することを原則とし、派遣労働者については、派遣元と派遣先の事業所が所在する都道府県が異なる場合、派遣先事業所が所在する都道府県の現物給与の価額を適用する。
解説
解答:誤
「派遣先事業所が所在する」ではなく、派遣労働者については、派遣元と派遣先の事業所が所在する都道府県が異なる場合、派遣元事業所が所在する都道府県の現物給与の価額を適用します。
問題文にあるように、原則としては、現物給与の価額を適用する場合、被保険者の勤務地(被保険者が常時勤務する場所)が所在する都道府県の現物給与の価額を採用します。
派遣社員についても、派遣元と派遣先の事業所が所在する都道府県が異なる場合は、派遣元事業所が所在する都道府県の現物給与の価額を適用することになります。
こちらについては、下記の通達からの出題になっていますので、ご興味のある方は、下記のリンクからどうぞご覧ください。
参考記事:平成25年2月4日 基労徴発0204第2号/保保発0204第1号/年管管発0204第1号
ちなみに、最低賃金法では「派遣先」の都道府県の最低賃金が適用されますので、きちんと区別しておく必要がありますね。
では最後に、退職金の取り扱いについてチェックしておきましょう。
退職金がどのように支払われるかで、報酬になるのかどうかが分かれるようです。
退職金は報酬にはあたらない??
(平成23年問5A)
退職を事由に支払われる退職金は、健康保険法に定める報酬又は賞与には該当しないものであり、事業主の都合等により在職中に一時金として支払われた場合であっても、報酬又は賞与には該当しないため、前払い退職金制度(退職金相当額の全部又は一部を在職時の毎月の給与に上乗せする制度)を設けた場合、その部分については報酬又は賞与に該当するものではない。
解説
解答:誤
前払い退職金制度で支給した場合は、報酬又は賞与に該当します。
問題文にあるように、退職を事由に支払われる退職金は、報酬や賞与には該当しないのが原則なので、事業主の都合等によって在職中に一時金として支払われた場合でも、通常は報酬、賞与には該当しません。
ただし、被保険者の在職時に、退職金相当額の全部又は一部を給与や賞与で前払いされる場合、労働の対償としての性格が明確で、お給料としての一般的は収入になるので、報酬又は賞与に該当するということですね。
私が、受験勉強をしている時に教えてもらったのは、「退職金」と「退職金相当額」で区別する、ということです。
つまり、
- 退職金→報酬や賞与に該当せず
- 退職金相当額(前払い)→報酬や賞与に該当
と覚えるわけですね。
こちらも通達から出ておりますので、下にリンクを貼っておきますね。
参考記事:平成15年10月1日 保保発第1001002号/庁保険発第1001001号
今回のポイント
- 報酬→労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの(臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは含まず)
- 賞与→労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、3月を超える期間ごとに受けるもの
- 6か月ごとに支給される通勤手当は、賞与ではなく報酬となります。
- 出張旅費は報酬には該当しません。
- 派遣社員について現物給与の価額を適用するときに、派遣元と派遣先の事業所が所在する都道府県が異なる場合は、派遣元事業所が所在する都道府県の現物給与の価額を採用することになります。
- 前払い退職金制度で支給した退職金相当額は、報酬又は賞与に該当します。
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