たとえば仕事中にケガをして仕事を休んでいるところに、「キミ、もう会社に来なくていいよ」なんてことを言われてたらどうしますか?
いきなり職を失うわけですからケガの治療どころではなくなってしまいますね。
そのために、「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。」
といった解雇制限の規定があります。
(ちなみに「第65条」というのは、産前産後休業規定のことです。)
ですが、この解雇制限には、どうも色々と例外もあるようです。
今回はそれを確認していくことにしましょう。
出産前に働いていても解雇制限にならないことがある?
(令和元年問4C)
使用者は、女性労働者が出産予定日より6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)前以内であっても、当該労働者が労働基準法第65条に基づく産前の休業を請求しないで就労している場合は、労働基準法第19条による解雇制限を受けない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
「産前の休業を請求しないで就労している場合は解雇制限がない」というのはなんだか腑に落ちない話ですね。
仕事が忙しいのか理由は分かりませんが産前休業も取らずに働いているのに、解雇制限の枠に入らないということですからね。
(そもそも、産前休業の場合は「労働者の請求」が必要なわけですが、、、)
でも言い換えると、産前休業をしている場合は、解雇制限を受けるということですから、つまりは「休んでいる」と解雇制限になる、という考え方になるんでしょうね。
ちなみに、産後は労働者が働きたいと言っても、必ず休業させないといけませんので、解雇制限もかかるということになります。
もう一つ、労働者側の要件で解雇制限が外れる例があります。
次の過去問でチェックしましょう。
治療中なのに出勤したら解雇制限が外れる?
(平成29年問3D)
使用者は、労働者が業務上の傷病により治療中であっても、休業しないで就労している場合は、労働基準法第19条による解雇制限を受けない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
働ける程度に回復して職場に復帰して平常通り働いていると解雇制限が解除されるということなのです。
なら、完全に治るまで休んでいた方が労働者にとっては得な話になりますよね。
休業補償も入りますし。。。
では、他に解雇制限の解除になる要件があるのか、次の過去問を見ていくことにしましょう。
解雇制限の解除になる要件とは?
(平成27年問3E)
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後の30日間は、労働基準法第81条の規定によって打切補償を支払う場合、又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となりその事由について行政官庁の認定を受けた場合を除き、労働者を解雇してはならない。
解説
解答:正
問題文のとおり、解雇制限が解除されるのは、
- 療養開始後3年を経過して、使用者が平均賃金の1200日分の打切補償を支払う場合(所轄労基署長の認定は不要です)
- 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合(所轄労基署長の認定が必要です)
となります。
行政官庁(所轄労基署長)の認定が要る場合といらない場合がありますが、打切補償は労働者にお金を支払ったという事実が明らかなので、認定は必要ないでしょう。
一方、「やむを得ない事由」のために事業の継続が不可能となったという理由では、やはり本当にそうなのか吟味する必要があるということなんでしょうね。
さて、最後に定年と解雇制限の関係についての論点をチェックすることにしましょう。
定年退職は解雇制限がかかる??
(平成26年問2A)
就業規則に定めた定年制が労働者の定年に達した日の翌日をもってその雇用契約は自動的に終了する旨を定めたことが明らかであり、かつ、従来この規定に基づいて定年に達した場合に当然労働関係が終了する慣行になっていて、それが従業員にも徹底している場合には、その定年による雇用関係の終了は解雇ではないので、労働基準法第19条第1項に抵触しない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
問題文のとおりであれば、もう社員のみんなが「定年になれば退職するんだ」ということが分かっているので、解雇制限は関係ないということですね。
今回のポイント
- 産前の休業を請求しないで就労している場合は解雇制限がありません。
- 働ける程度に回復して職場に復帰して平常通り働いていると解雇制限が解除されます。
- もう社員のみんなが「定年になれば退職するんだ」ということが分かっている場合は、解雇制限は関係ありません。
他に、解雇制限が解除されるのは、
- 療養開始後3年を経過して、使用者が平均賃金の1200日分の打切補償を支払う場合(所轄労基署長の認定は不要です)
- 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合(所轄労基署長の認定が必要です)
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