過去問

「社労士試験 労働に関する一般常識 男女雇用機会均等法・育児介護休業法の勉強の仕方とは」過去問・労一-30

今回は、男女雇用機会均等法育児介護休業法について取り扱った過去問を見ていきたいと思います。

どちらも、労働契約法や労働組合法と比べて出題頻度は高くありませんので、必要以上に腰を据えて勉強する必要はありませんが、

過去問で問われている論点は押さえておくようにしましょう

過去問で問われた論点は形を変えて再び出題される可能性があるからです

一度も出てきていない論点を勉強する場合は、過去問を押さえた後にしたほうが良いと思います

それでは最初の過去問を見ていきましょう。

この問題では、男女雇用機会均等法の「間接差別」について問われています。

この法律ではまず、性別を理由とする差別を禁止していますが、

一見、性別では差別してないけど実質的に性別で差別してるのもアウト、というケースです。

この間接差別にはどんなものがあるのか確認しましょう。

 

間接差別ってどんなもの?

(平成26年問2C)

男女雇用機会均等法第7条(性別以外の事由を要件とする措置)には、労働者の募集又は採用に関する措置であって、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とするものが含まれる。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

実質的に性別を理由とする差別と見られる間接差別には、

  • 労働者の募集又は採用に関する措置であって、労働者の身長体重又は体力に関する事由を要件とするもの
  • 労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に関する措置であって、労働者の住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの
  • 労働者の昇進に関する措置であって、労働者が勤務する事業場と異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの

があります。

身長や体重については、一般的に男性と女性で差がありますから、募集の要件に「身長170センチ以上」みたいなものは、実質的に女性を排除していると判断される可能性があるわけです。

さて、次は母性健康管理措置について見てみましょう。

母性健康管理措置というのは、妊産婦に対して母子健康法の規定によって保健指導健康審査が行われる場合に、事業主に課せられている措置のことをいいます。

この母性健康管理措置が事業主の義務になっているのか、それとも努力義務なのかを次の問題で確認しますね。

 

母性健康管理措置は義務?努力義務?

(平成30年問4E)

事業主は、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

問題文の場合の母性健康管理措置は事業主の「義務」となっています。

具体的にどんな内容なのかというと、先ほどの女性労働者が保健審査や健康審査を受けるために必要な時間を確保することや、

問題文にあるように、保健指導や健康審査に基づく指導事項を守れるように、通勤ラッシュを避ける時差出勤や、業務内容を軽くしたり、休憩時間を延長したりするなど必要な措置を講じる必要があります。

このように、男女雇用機会均等法ではいろいろなことが定められていますが、

これらの規定の効力について争われた判例が出題されています。

つまり、女性労働者に対して妊娠や出産をしたことで不利益な取り扱いをした場合に、

それが法違反として無効になるかどうかについて次の問われていますので見てみましょう。

 

不利益取り扱いの禁止規定の効力は?

(平成27年問2A)

男女雇用機会均等法第9条第3項の規定は、同法の目的及び基本的理念を実現するためにこれに反する事業主による措置を禁止する強行規定として設けられたものと解するのが相当であり、女性労働者につき、妊娠、出産、産前休業の請求、産前産後の休業又は軽易業務への転換等を理由として解雇その他不利益な取扱いをすることは、同項に違反するものとして違法であり、無効であるというべきであるとするのが、最高裁判所の判例である。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

これは、広島中央生活共同組合事件という最高裁判例からの出題ですが、

妊娠を機に軽易な作業への転換を希望したのをきっかけに降格となり、

育休後、職場復帰したのに元の地位に戻してもらえなかったことについて不利益な取り扱いと見られ、

男女雇用機会均等法第9条3項に違反しており、無効であるとの判決が下されました。

つまり、男女雇用機会均等法の第9条3項の不利益取り扱いの禁止規定は強行規定として設けられたものとして解されるのが相当、

ということで、9条3項に違反して不利益な取り扱いをした場合、その行為は無効になるという判例でした。

強行規定というのは、当事者の意思などに関係なく適用される規定のことです。

労基法もそうですが、たとえば、労働者が1日9時間の労働に合意していたとしても労基法第32条によりそれは無効となるというものです。

そういった強行規定が男女雇用機会均等法の「不利益な取り扱い」にも適用されるということですね。

さて、次は育児介護休業法について見ていきましょう。

最初の問題は、育児休業の開始予定日の変更が論点になっていますので見てみましょう。

 

育児休業の開始日を変更することはできる?

(令和2年問3A)

育児介護休業法に基づいて育児休業の申出をした労働者は、当該申出に係る育児休業開始予定日とされた日の前日までに厚生労働省令で定める事由が生じた場合には、その事業主に申し出ることにより、法律上、当該申出に係る育児休業開始予定日を何回でも当該育児休業開始予定日とされた日前の日に変更することができる。

 

解説

解答:誤り

育児休業予定開始日の変更は、何回でもできるわけではなく、「1回に限り」することができます。

これは事業主側への配慮と言えそうですね。

育児休業をする労働者が行なっていた業務について、たとえば派遣社員を受け入れるなど様々な調整が必要でしょうから、

育児休業の開始予定日を頻繁に変えることによる事業主への負担をなくすため、変更回数は1回という規定になっているのでしょう。

では最後に、介護休業について見てみたいと思います。

介護休業は、「何日まで・何回まで」が最大のポイントですので確認していきますね。

 

介護休業は何回まで取れる?

(平成29年問2エ)

育児介護休業法は、労働者は、対象家族1人につき、1回に限り、連続したひとまとまりの期間で最長93日まで、介護休業を取得することができると定めている。

 

解説

解答:誤り

介護休業は、対象家族1人につき、通算93日まで、3回を上限として取得することができますので、連続したひとまとまりである必要はありません。

以前は、介護をする家族の要介護状態が異なる場合だけ複数回の介護休業を取得できるルールになっていましたが、

法改正により、同一の要介護状態についても分割して介護休業を取得できるようになりました。

 

今回のポイント

  • 実質的に性別を理由とする差別と見られる間接差別には、
    • 労働者の募集又は採用に関する措置であって、労働者の身長体重又は体力に関する事由を要件とするもの
    • 労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に関する措置であって、労働者の住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの
    • 労働者の昇進に関する措置であって、労働者が勤務する事業場と異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの

    があります。

  • 保健審査や健康審査を受けるための必要な時間の確保や、時差出勤や休憩時間の延長などの母性健康管理措置は事業主の「義務」となっています。
  • 男女雇用機会均等法の第9条3項の不利益取り扱いの禁止規定は強行規定として設けられたものとして解されるのが相当で、9条3項に違反して不利益な取り扱いをした場合、その行為は無効になるという判例があります。
  • 育児休業予定開始日の変更は、何回でもできるわけではなく、「1回に限り」することができます。
  • 介護休業は、対象家族1人につき、通算93日まで、3回を上限として取得することができます。

 

毎日の勉強のヒントにどうぞ♫

何度でも言いますが、テキストを通読するとき、2時間かけてじっくり読むよりも、

飛ばし読みでもいいので1時間で2回読む方が頭に残りやすいです。

問題に出てきた論点を探すつもりで読むとさらにgoodです♫

 

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