労働者にとって重要な労働条件が反映されている労働契約は、原則としては労働者と使用者の合意があれば変更することができますが、
会社には就業規則という統一的なルールがあり、就業規則で労働条件を規定していることが多いです。
その際に、「契約の変更」がどのように取り扱われるのか、が今回の重要なテーマになっていますので見ていくことにしましょう。
まず、最初の問題では、労働契約を変更するために必要なことが論点になっていますので、早速確認していきますね。
労働契約を変更するための条件
(平成24年問1D)
労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができるとされている。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
労働契約の変更は、労働契約の成立と同様に、労働者と使用者が「合意」が条件になっています。
「合意」というのは、契約の一般原則なので、労働契約にもあてはまるということですね。
で、労働者と使用者が労働契約を結ぶときに、使用者が合理的は労働条件が定められている就業規則を労働者に周知している場合、
労働契約の内容は、就業規則で定める労働条件によるものとされます。
これは、労働契約よりも就業規則の方が強力であるということと、すべての労働条件を労働契約書に書くのが大変だからです。
では、労働契約と就業規則の関係にについて問われている過去問を見てみましょう。
就業規則と労働契約の関係
(平成26年問1B)
就業規則で定める基準と異なる労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となり、無効となった部分は、就業規則で定める基準によるとされている。
解説
解答:誤り
就業規則で定める基準と異なる、ではなく就業規則で定める基準に「達しない」が正解です。
これは、労働契約法第12条に明記されているのですが、
「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」
と規定されています。
ちなみに、このような言い回しをどこかで聞いたことはありませんか?
私は、労働基準法を思い出しました。
労基法第13条には、
「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」
と定められています。
労基法は、就業規則よりもさらに強力な規定ですし、イメージを重ねることができますね。
さて、次は就業規則が変更された場合に、労働契約がどうなるのか見てみましょう。
先ほども触れたように、労働契約よりも就業規則の方が強いですから、就業規則が変更された場合、
労働契約にある労働条件はどうなってしまうのでしょうか。
就業規則が変更されると労働契約はどうなるのか
(平成23年問4C)
労働契約法に関して、使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、労働契約法第10条ただし書に該当する場合を除き、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとされている。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
原則としては、労働契約を変更する場合は、労働者と使用者が合意することが条件になるのですが、
労働契約よりも強い就業規則は、過半数代表者の意見を聴くとはいえ、使用者が一方的に作成、変更します。
なので、使用者が労働者にとって不利益な内容の就業規則の変更をすることも多いにあるわけです。
しかし、本来は労働者と使用者の合意の上で成り立つ労働契約なので、
原則としては、労働者に不利益な就業規則の変更はできないと解されますが、
就業規則の変更が、
- 労働者の受ける不利益の程度や、
- 労働条件の変更の必要性、
- 変更後の就業規則の内容の相当性、
- 労働組合等との交渉の状況など
の事情に照らして合理的である場合は労働者の労働条件は、変更後の就業規則に合わせることになります。
さて、「就業規則の変更」について、言葉そのままの意味を考えれば、現に規定されている内容を変更するということになりますが、
新しく内容を増やしたり減らしたりすることは「変更」になるのでしょうか。
次の問題で確認しましょう。
就業規則の変更の範囲
(令和元年問3E)
労働契約法第10条の「就業規則の変更」には、就業規則の中に現に存在する条項を改廃することのほか、条項を新設することも含まれる。
解説
解答:正
問題文のとおりで、就業規則の変更には、上好の改廃、新設が含まれます。
これは、通達にありますのでリンクを貼っておきますね。
(「4 就業規則の変更による労働契約の内容の変更(法第9条・第10条関係)」の「(3) 法第10条の内容」に記載があります。)
参考記事:「労働契約法の施行について」の一部改正について 平成30年12月28日 基発1228第17号
こちらの通達は、今回の過去問の論点を多く含んでいますので、ご自由にご参考になさってくださいね。
それでは最後に、就業規則の不利益変更についての判例から出題された過去問を見ておきましょう。
これは第四銀行事件という最高裁判例からのものですが、定年の年齢を引き上げる代わりに、賃金を引き下げたということで裁判になりました。
こちらの判決ではどうなったのか読んでいきましょう。
労働者に不利益な就業規則の変更が認められるためには
(平成25年問1D)
使用者が社内の多数労働組合の同意を得て就業規則を変更し、55歳以降の賃金を54歳時よりも引き下げつつ、定年年齢を引き上げた事案について、本件就業規則の変更は、多数労働組合との交渉、合意を経て労働協約を締結した上で行われたものであるから、変更後の就業規則の内容は、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性等にかかわらず、労使間の利益調整がされた結果として合理的なものとみなすことができるとするのが最高裁判所の判例である。
解説
解答:誤り
「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性等にかかわらず」の部分が誤りです。
労働者に不利益な就業規則の変更が認められるには、
- 労働者の受ける不利益の程度や、
- 労働条件の変更の必要性、
- 変更後の就業規則の内容の相当性、
- 労働組合等との交渉の状況など
の事情に照らして合理的である必要があるからです。
今回のポイント
- 労働契約の変更は、労働契約の成立と同様に、労働者と使用者が「合意」が条件になっています。
- 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となり、無効となった部分は、就業規則で定める基準によります。
- 就業規則の変更が、
- 労働者の受ける不利益の程度や、
- 労働条件の変更の必要性、
- 変更後の就業規則の内容の相当性、
- 労働組合等との交渉の状況など
の事情に照らして合理的である場合は労働者の労働条件は、変更後の就業規則に合わせることになります。
- 就業規則の変更には、条項の改廃、新設が含まれます。
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