過去問

「社労士試験 労災保険法 おさらいしましょう!支給制限はどんな時に行われますか?」過去問・労災-57

支給制限」は労災保険法だけでなく他の法律にも出て来るので、ひと通り勉強したら横断的に整理してみると良いでしょう。

特に健康保険法と比較してみると面白いと思います。

さて、まずは絶対的支給制限相対的支給制限の違いを押さえていくようにしましょう。

今回の記事では「差し止め」についても触れていますので見てみてくださいね。

では最初の問題に進みましょう。

「故意」にケガをした場合に保険給付がどのように扱われるのかが論点になっていますので読んでみてくださいね。

 

「故意」の場合の支給制限はどうなってる?

(平成26年問3A)

業務遂行中の災害であっても、労働者が故意に自らの負傷を生じさせたときは、政府は保険給付を行わない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

規定では、

「労働者が、故意に負傷疾病障害若しくは死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。」

となっています。

キーワードは「故意」で、わざと負傷したり事故を生じさせたりした時には、保険給付は「行われません」。

もう「行わない」と言い切っているので、「絶対的支給制限」と呼ばれています。

ただ、絶対的支給制限があるということは相対的支給制限があり、相対的支給制限にも「故意」が使われている部分があるので、

その違いについて次の問題で見てみましょう。

 

故意の犯罪行為の場合の支給制限

(令和2年問1B)

業務遂行中の負傷であれば、負傷の原因となった事故が、負傷した労働者の故意の犯罪行為によって生じた場合であっても、政府は保険給付の全部又は一部を行わないとすることはできない。

 

解説

解答:誤り

労働者の故意の犯罪行為によって負傷をしたときは、「保険給付の全部又は一部行わないことができる」という相対的支給制限になります。

前の問題と違って「故意に負傷した」などではなく、「故意の犯罪行為」となっていますね。

つまり、自分のやっていることが犯罪であると分かってて事故が起きたということで、

たとえば、運転手さんが、スピード違反になっていると分かっていて車を運転していて事故を起こしたようなケースがイメージしやすいですね。

約束の時間に荷物を届けるために速度オーバーの状態で運転しているときに事故を起こしてケガをした場合、

「保険給付をしない」という絶対的支給制限ではなく、

「保険給付の全部又は一部行わないことができる」という相対的支給制限になるんですね。

この相対的支給制限には、「故意の犯罪行為」以外にも要件がありますので次の問題を読んでみてくださいね。

 

相対的支給制限の要件とは

(令和2年問1A)

業務遂行中の負傷であれば、労働者が過失により自らの負傷の原因となった事故を生じさせた場合、それが重大な過失でない限り、政府は保険給付の全部又は一部を行わないとすることはできない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

相対的支給制限は、単なる過失ではなく、「重大な過失」の場合が対象になります。

なので、問題文のケースでは重大な過失ではないので、支給制限は行われないことになります。

で、この相対的支給制限は、ケガをした時だけではなく、療養中にも対象になることがあります。

ケガを治しているときに支給制限を受けたくありませんが、一体どういうことなのでしょうか?

 

療養中に相対的支給制限を受けるケース

(令和2年問1D)

業務起因性の認められる疾病に罹患した労働者が、療養に関する指示に従わないことにより疾病の程度を増進させた場合であっても、指示に従わないことに正当な理由があれば、政府は保険給付の全部又は一部を行わないとすることはできない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

逆にいうと、正当な理由がなく療養に関する指示に従わないことで病気の程度がひどくなった場合は、相対的支給制限の対象となり、保険給付の全部又は一部が行われない可能性があります。

これらの相対的支給制限について、規定では

『労働者が故意の犯罪行為もしくは重大な過失により、

または正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、

負傷疾病障害もしくは死亡もしくはこれらの原因となった事故を生じさせ、または

負傷、疾病若しくは障害程度を増進させ、もしくはその回復を妨げたときは、

政府は、保険給付の全部又は一部行わないことができる』

と規定されています。

平たくいうと、「故意の犯罪行為」や「重大な過失」、「正当な理由なく療養についての指示に従わない」ことで引き起こされたものについては、保険給付に制限をつけられるかもよ、

ということになりますね。

さて、最後に支給制限とは違う、「差し止め」についての過去問を見ておきましょう。

保険給付の差し止めは、支給制限と違って、差し止められている要件がなくなれば、止められていた保険給付もさかのぼって支給されるものです。

では、差し止めに該当する要件にはどのようなものがあるのでしょう。

 

保険給付が差し止めになる場合とは

(平成25年問3D)

政府は、保険給付を受ける権利を有する者が、正当な理由がなくて、保険給付に関し必要な労災保険法施行規則で定める書類その他の物件を政府に提出しないときは、保険給付の支払を一時差し止めることができる。

 

解説

解答:正

問題文のとおり、保険給付に必要な書類などを提出しないときは、保険給付の支払を一時差し止めることができます。

保険給付の差し止めは、書類の提出以外に、「保険給付に関する届出をしないとき」や、「報告、出頭、受診命令に従わないときにも適用されます。

 

今回のポイント

  • 労働者が、故意に負傷疾病障害若しくは死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行いません。(絶対的支給制限)
  • 相対的支給制限については『労働者が故意の犯罪行為もしくは重大な過失により、または正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷疾病障害もしくは死亡もしくはこれらの原因となった事故を生じさせ、または負傷、疾病若しくは障害程度を増進させ、もしくはその回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部又は一部行わないことができる』と規定されています。

  • 保険給付の差し止めは、「必要な書類を提出しない」場合や、「保険給付に関する届出をしないとき」、「報告、出頭、受診命令に従わないときに適用されます。

 

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