雇用保険法の給付制限には不正行為をはたらいたため制限されるものや、公共職業安定所が紹介した職業を理由もないのに拒否したときに行われるもの、単に自己都合で離職したことで給付制限が行われることもありますね。、
不正行為による給付制限については、前回ご紹介しましたのでそちらもご覧にください
参考記事:「社労士試験 雇用保険法 整理しくにい不正行為による給付制限の勉強法」過去問・雇−49
今回は、「拒否」や「自己都合退職」による給付制限を取り上げましたので見ていくことにしましょう。
最初の問題は、職業指導を拒否した場合の給付制限です。
給付制限の期間の長さについての論点になっています。
職業指導を受けることを拒否したら基本手当はどうなる?
(平成23年問4B)
受給資格者が、厚生労働大臣の定める基準に従って公共職業安定所が行うその者の再就職を促進するために必要な職業指導を受けることを、正当な理由なく拒んだ場合、その拒んだ日から起算して1か月を超えない範囲内において公共職業安定所長の定める期間は、基本手当が支給されない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
職業指導はもちろん、公共職業安定所の紹介する職業に就くことに対して、正当な理由もないのに拒否した場合は、
「1か月を超えない範囲内」で基本手当が支給されないことになります。
ちなみに、待期期間は給付制限期間とは別個のものになるので、上記の拒否をした時は、「待期期間+1ヶ月の給付制限期間」のあいだ、基本手当がもらえないケースも出てくるわけです。
ただ、気になるのは、「正当な理由」なのですが、何が正当な理由として認められるのでしょうか。
それは具体的に規定として定められているのでしょうか?
次の問題で確認しましょう。
職業に就くことを拒否しても給付制限がかからない?
(平成28年問5B)
就職先の賃金が、同一地域における同種の業務及び同程度の技能に係る一般の賃金水準に比べて、不当に低いときには、受給資格者が公共職業安定所の紹介する職業に就くことを拒んでも、給付制限を受けることはない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
公共職業安定所の紹介する職業を断ったら、いやおうなしに給付制限になるのかといったらそんなことはなくて、紹介された職業の賃金が不当に低い時は、就職するのを断っても大丈夫です。
他にどんな「正当な理由」があるのかというと、
- 紹介された職業や職業訓練が、受給資格者の能力からみて不適当なとき
- 就職や職業訓練を受けるために引っ越しをしなければならず、それが難しい場合
などがあげられます。
どちらも「それは無理でしょ」ということが言えそうですね。
さて、給付制限の期間中は基本手当が支給されませんが、そんな中、給付制限中でも支給される給付があるようです。
それが何なのか、次の問題を見てみましょう。
給付制限期間中でも就業手当は受給できる??
(令和2年問5C)
公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けることを拒んだことにより基本手当の支給停止処分を受けた受給資格者が、当該給付制限期間中に早期に就業を開始する場合には、他の要件を満たす限り就業手当を受けることができる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
就業手当の場合、給付制限期間中でも支給されることがあります。
問題文を読んで、「訓練を拒否したのに就業手当出るの?」と思ってしまいますよね。
これは、業務取扱要領に記載があるのですが、
「法第32条又は第33条の給付制限期間中の受給資格者は早期に就業を開始することにより給付制限期間中であっても就業手当を受給できることとなる」
とあります。
「法第32条」というのは、紹介された職業に就くことを拒否したり、公共職業訓練を受けることを拒否した場合の給付制限についての規定のことです。
これは、問題文のケースになりますね。
ちなみに「第33条」はいわゆる自己都合退職による給付制限の規定です。
まとめると、職業拒否や訓練拒否、自己都合退職をして給付制限をくらっても、早期に就業を開始した場合、所定の要件を満たせば就業手当が支給されるんですね。
こちらの業務取扱要領についてはリンクを貼っておきますので、ご興味がある方はご自由にご参考になさってくださいね。
4ページの下の方、「ロ 給付制限との関係」のところに記載があります。
参考記事:業務取扱要領「57003(3)就業手当の支給要件」
では、次は「自己都合退職」による給付制限を見ていきましょう。
自己都合で退職すると、給付制限が行われるわけですが、基本手当以外にも制限される給付があるのでしょうか。。。
自己都合退職で給付制限になると技能習得手当も、、、
(平成26年問7A)
被保険者が正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合には、雇用保険法第21条に定める待期の期間満了後1か月以上3か月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、技能習得手当が支給されない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
まず、自己都合退職であったり、自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合、
待期期間の満了後、1ヶ月以上3ヶ月以内の期間、基本手当は支給されません。
これが給付制限になるのですが、基本手当が止まると、技能習得手当、寄宿手当、傷病手当も基本手当に合わせて止まってしまうのです。
ちなみに、紹介された職業に就くことを拒否したり、公共職業訓練を受けることを拒否した場合の給付制限でも同様です。
それでは最後に、同じ自己都合での退職でも、給付制限を受けない場合を確認しておきましょう。
いくら自己都合でもひとくくりに給付制限をしないということですね。
嫌がらせを受けたために自己都合退職した時の給付制限は?
(平成26年問7B)
上司、同僚等から故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことにより退職した場合は、自己の都合によって退職した場合であっても、正当な理由があるためこれを理由とする給付制限は行われない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
上司や同僚などから「故意の排斥」や「著しい冷遇」、「嫌がらせ」を受けて自己都合退職したとしても、原因は自分にあるわけではないので、単なる自己都合退職とはならず、給付制限は受けません。
たとえば、必要のない配置転換をさせられたり、給与を下げられたなどの事実を離職者が申し立てた場合、該当することがあります。
今回のポイント
- 職業指導はもちろん、公共職業安定所の紹介する職業に就くことに対して、正当な理由もないのに拒否した場合は、「1か月を超えない範囲内」で基本手当が支給されないことになります。
- 紹介された職業の賃金が不当に低い時や、紹介された職業や職業訓練が、受給資格者の能力からみて不適当なとき、就職や職業訓練を受けるために引っ越しをしなければならず、それが難しい場合など、正当な理由がある場合は給付制限になりません。
- 就業手当の場合、給付制限期間中でも支給されることがあります。
- 給付制限で基本手当が止まると、技能習得手当、寄宿手当、傷病手当も基本手当に合わせて支給されません。
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