今回は、労働組合法から労働組合の運営に関する過去問を取り上げたいと思います。
私自身は労働組合に属したことがないので、社労士試験で勉強するときは、イメージをつかめないまま学習を進めていました。
今回の記事では、労働組合の目的からストライキに関するものまで書いていますので、流れを掴んでいただけたら幸いです。
それでは最初の問題を見ていきましょう。
この問題では、労働組合の目的が論点になっていますので確認していきますね。
労働組合の目的とは
(平成25年問2E)
労働組合の目的は、賃金等の労働条件を維持改善し労働者の経済的地位の向上を図ることにあるから、いわゆるセクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントなどを予防するための職場環境の整備は、いわゆる義務的団体交渉事項に含まれない。
解説
解答:誤り
問題文の場合、義務的団体交渉事項に含まれます。
労働組合は、労働者が主体となって、自主的に労働条件の維持改善や経済的地位の向上を図ることを目的にしています。
で、上記の目的を達成するために、使用者と団体交渉をするわけですが、
団体交渉の対象になるテーマとして、義務的団体交渉事項と任意的団体交渉事項に分かれます。
問題文に挙げられているのは義務的団体交渉事項ですが、これは、
「組合員である労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの」
と定義されていて、このテーマについては使用者側が正当な理由なく拒否することはできない(不当労働行為)のです。
で、問題文にある、「セクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントなどを予防するための職場環境の整備」は、
労働者の労働条件に関する事項で使用者が対応可能なものとして、義務的団体交渉事項となっているのです。
さて、労働組合を運営するにはお金が必要になるわけですが、
次の問題では、労働組合の組合費が論点になっていますので見てみましょう。
労働組合の組合費の取り扱い
(令和2年問4B)
「労働組合の規約により組合員の納付すべき組合費が月を単位として月額で定められている場合には、組合員が月の途中で組合から脱退したときは、特別の規定又は慣行等のない限り、その月の組合費の納付につき、脱退した日までの分を日割計算によつて納付すれば足りると解すべきである。」とするのが、最高裁判所の判例である。
解説
解答:誤り
労働組合の組合費について、組合の規約で組合費が月額で定められている場合、組合員が月の途中で組合から脱退したときに、
特別の規定や慣行などがないのであれば、組合費は日割計算にはならず、その月の組合費の全額を納付する義務がある、ということになります。
これは、国労広島地本事件という最高裁判例からの出題ですが、労働組合に入るかどうかは、基本的に労働者が自分で決めるものなので、
自分の意思で労働組合に入った以上、労働組合のルールに従う必要があるよね、ということです。
ですが、この国労広島地本事件では別の論点で社労士試験で出題されています。
テーマは「寄付」です。。。
選挙の立候補者の支援のために寄付を強制するのはアリ?
(平成25年問2D)
労働組合が、総選挙に際し特定の立候補者支援のためにその所属政党に寄付する資金を集める目的で組合員にその費用を負担することを強制することは、労働組合の連帯の昂揚や存立基盤の確立のために必要不可欠なものであり、組合自治の原則に基づいて許されるとするのが、最高裁判所の判例である。
解説
解答:誤り
問題文の場合、組合員に所属政党に寄付するための費用を負担することを強制することは許されません。
前の問題では、組合費はルールに則って支払うべき、というものでしたが、そもそも労働組合というのは、労働者の労働条件を改善するのが目的です。
それを達成するために、広く解釈して特定の政党を労働組合が支持して、選挙運動を推進することは自由ですが、
組合員に対して協力を「強制」するのはやりすぎだ、ということになったんですね。
何事もバランスが必要、ということなんでしょうかね。
さて、労働組合法第5条には、「総会は、少くとも毎年1回開催すること。」と定められているのですが、
この、総会の運営方法について問われている過去者がありますので見てみましょう。
労働組合の総会の開催方法
(平成29年問2ウ)
労働組合法により、労働組合は少なくとも毎年1回総会が開催されることを要求されているが、「総会」とは、代議員制度を採っている場合には、その代議員制度による大会を指し、全組合員により構成されるものでなくてもよい。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
通達には、総会は、必ずしも組合員全員で開かなければならないものではなく、代議員制度を採っている場合は、その代議員制度による大会のことを指しています。
組合員の人数が多いために代議員制度を採っているということもあるからなんでしょうね。
こちらの通達につきましては、リンクを貼っておきますので、ご自由にご参考になさってくださいね。
参考記事:下部組合の手続参与の資格、役員に対する議決権の制限、総会の構成 昭和29年4月21日 労発第126号
では最後に、ストライキ(同盟罷業)について労働組合法でどのように定められているのかを確認しておきましょう。
同盟罷業を行うためには
(令和2年問4C)
労働組合の規約には、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ、同盟罷業を開始しないこととする規定を含まなければならない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
ストライキをするには、組合員の直接無記名投票の過半数による決定か、代議員の直接無記名投票の過半数による決定が必要です。
労働組合の一部のものだけで暴走しないように、労働組合の規定に上記を加える必要があるのでしょうね。
今回のポイント
- 労働組合は、労働者が主体となって、自主的に労働条件の維持改善や経済的地位の向上を図ることを目的にしています。
- 義務的団体交渉事項は、「組合員である労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの」と定義されています。
- 労働組合の組合費について、組合の規約で組合費が月額で定められている場合、組合員が月の途中で組合から脱退したときに、特別の規定や慣行などがないのであれば、組合費は日割計算にはならず、その月の組合費の全額を納付する義務がある、ということになります。
- 労働組合が特定の政党を支持して、選挙運動を推進することは自由ですが、組合員に対して協力を「強制」するのは許されません。
- 総会は、必ずしも組合員全員で開かなければならないものではなく、代議員制度を採っている場合は、その代議員制度による大会のことを指しています。
- ストライキをするには、組合員の直接無記名投票の過半数による決定か、代議員の直接無記名投票の過半数による決定が必要です。
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