一昔前なら、会社を定年退職してそのまま年金生活、というライフスタイルが一般的だったかもしれませんが、
年金の支給開始年齢が65歳にずれ込み、しかもリタイアすることなく働き続けているのが、現在のスタンダードになっているといっても過言ではないでしょう。
今回は、そういった退職時改定も含めて、老齢厚生年金の年金額の計算方法のポイントについての過去問を集めてみましたので見ていくことにしましょう。
老齢厚生年金の受給権を取ったけど被保険者だったら?
(平成26年問6B)
老齢厚生年金の受給権を取得した月に被保険者であった場合、その受給権を取得した時点の年金額の計算の基礎には、受給権を取得した月を被保険者期間として含めることとなる。
解説
解答:誤
法43条2項に、「老齢厚生年金の額については、受給権者がその権利を取得した月以後における被保険者であった期間は、その計算の基礎としない」となっています。
つまり、「受給権を取得した月」は、老齢厚生年金の計算の基礎とされないのです。
ここで気をつけたいのが、「受給権者がその権利を取得した月以後」という文言です。
ちなみに、障害厚生年金の場合、「障害認定日の属する月後における被保険者であった期間は、その計算の基礎としない。」とありますので区別しておきましょう。
さて、長いサラリーマン人生の間に、会社勤めの時もあれば、公務員として働いていた時期もあったかもしれません。
そういった2つ以上の種類の被保険者の期間がある場合の老齢厚生年金の計算方法についての過去問を見てみましょう。
2種類以上の被保険者期間がある場合の老齢厚生年金の計算はどうする?
(平成29年問9エ)
2以上の種別の被保険者であった期間を有する者の老齢厚生年金の額の計算においては、その者の2以上の被保険者の種別に係る期間を合算して1の期間に係る被保険者期間のみを有するものとみなして平均標準報酬額を算出する。
解説
解答:誤
「合算して1の期間に係る被保険者期間のみを有するものとみなして」が誤りです。
2以上の種別の被保険者であった期間を有する人の老齢厚生年金については、年金額を計算する場合、被保険者期間は、それぞれの厚生年金の被保険者期間ごとに適用することになります。
なので、平均標準報酬額は、それぞれの厚生年金の被保険者期間ごとに算出します。
次の過去問は、いわゆる「退職時改定」についての問題です。
繰り返しになりますが、いまのご時世、老齢厚生年金の受給権を取得しても働いている人はごまんといます。
老齢厚生年金は、会社を辞めたときに年金額を計算し直して支給されることになるのですが、退職時改定にも要件があります。
それを確認しましょう。
被保険者の資格を喪失して、年金額が改定されるタイミングはいつ?
(平成28年問8A)
在職老齢年金の受給者が平成28年1月31日付けで退職し同年2月1日に被保険者資格を喪失し、かつ被保険者となることなくして被保険者の資格を喪失した日から起算して1か月を経過した場合、当該被保険者資格を喪失した月前における被保険者であった期間も老齢厚生年金の額の計算の基礎とするものとし、平成28年3月から年金額が改定される。
解説
解答:誤
「3月」ではなく、「2月」から年金額が改定されます。
退職時改定の規定は以下のようになっています。
「被保険者である受給権者がその被保険者の資格を喪失し、かつ、被保険者となることなくして被保険者の資格を喪失した日から起算して1月を経過したときは、その被保険者の資格を喪失した月前における被保険者であった期間を老齢厚生年金の額の計算の基礎とするものとし、資格を喪失した日から起算して1月を経過した日の属する月から、年金の額を改定する。
となっています。
で、ここでポイントになるのが、「資格を喪失した日から起算する」と書いてあるので2月1日から起算すると思ってしまいますが、
事業所又は船舶に使用されなくなったときは、「その日からの起算」になります。
なので、問題文の場合、「1月31日」から1ヶ月経過した月である2月から年金額が改定されることになります。
どうしてこういうことをするのかというと、1月31日に退職して、資格喪失日の2月1日から起算するということになると、退職日である1月31日から1ヶ月も年金の改定までスパンが開くことになります。
なので、退職日の翌月から年金額が改定されるように、退職日からの起算になっているのです。
それでは、退職時改定についてもう1問見ておきましょう。
さっきの問題とは違う論点になってます。
退職時改定は、資格を喪失してからどれだけの期間が必要?
(平成26年問6A)
63歳の在職老齢年金を受給している者が適用事業所を退職し、9月1日に被保険者資格を喪失した場合、同年9月15日に再び別の適用事業所に採用されて被保険者となったときは、資格を喪失した月前における被保険者であった期間に基づく老齢厚生年金の年金額の改定が、同年10月分から行われる。
解説
解答:誤
問題の場合、「被保険者となることなくして被保険者の資格を喪失した日から起算して1月を経過していないので、退職時改定は行われません。
では最後に、配偶者の加給年金額について確認しておきましょう。
配偶者の加給年金額に必要な240月に足りなかったら、、、
(平成30年問10C)
被保険者である老齢厚生年金の受給権者は、その受給権を取得した当時、加給年金額の対象となる配偶者がいたが、当該老齢厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240未満であったため加給年金額が加算されなかった。その後、被保険者資格を喪失した際に、被保険者期間の月数が240以上になり、当該240以上となるに至った当時、加給年金額の対象となる配偶者がいたとしても、当該老齢厚生年金の受給権を取得した当時における被保険者期間が240未満であるため、加給年金額が加算されることはない。
解説
解答:誤
問題文のように、被保険者資格を喪失したときに、被保険者期間の月数が240以上になっていて、240月以上となるに至った当時、加給年金額の対象となる配偶者がいた場合には、加給年金額が加算されることがあります。
なので、その受給権を取得した時に、老齢厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240未満だったとしても、まだチャンスはあるということですね。
今回のポイント
- 老齢厚生年金の額については、受給権者がその権利を取得した月以後における被保険者であった期間は、その計算の基礎としません。
- 2以上の種別の被保険者であった期間を有する人の老齢厚生年金については、年金額を計算する場合、被保険者期間は、それぞれの厚生年金の被保険者期間ごとに適用することになります。
- 退職時改定の場合、事業所又は船舶に使用されなくなったときは、「その日から起算」して1月を経過した日の属する月から、年金の額を改定します。
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老齢厚生年金の受給権を取得した時に、老齢厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240未満だったとしても、被保険者資格を喪失したときに、被保険者期間の月数が240以上になっていて、240月以上となるに至った当時、加給年金額の対象となる配偶者がいた場合には、加給年金額が加算されることがあります。
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