過去問

「社労士試験 労災保険法 業務災害に該当するためには〇〇が必要です」過去問・労災-65

労働災害は、業務災害通勤災害に分けることができますが、今回は業務災害について見ていきたいと思います。

業務災害は、一言で言うと仕事中にケガや病気になることですが、

業務災害として認められるには「業務起因性」と「業務遂行性」の2つが認められる必要があります。

社労士試験でも、この2つの要件について色々な形で出題されていますので確認していきましょう。

それでは最初の問題に入っていきたいと思います。

この問題では、業務災害として認められるための基本的な条件について問われています。

その条件のキーワードは〇〇なのですが、、、?

 

業務災害が成立するための要件

(平成26年問7D)

労働者が業務に起因して負傷又は疾病を生じた場合に該当すると認められるためには、業務と負傷又は疾病との間に相当因果関係があることが必要である。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

ケガや病気が業務災害と認められるためには、まず「業務遂行性」があることが前提になっていて、

ケガや病気が業務によって起こったという業務起因性が認められることが必要です。

まず、業務遂行性というのは、労働者が事業主の支配下で仕事をしている状態のことを言います。

業務起因性は、その業務をしていればそのケガや病気が発生するよねということで、

それなりの(相当)因果関係が認められることが条件となります。

つまり、日頃の食生活などの不摂生で何かの病気がたまたま仕事中に発生しても業務災害とは認められにくいということになります。

では、次のケースを見てみましょう。

単身赴任で働いている労働者が、仕事で出張に出ることになったのですが、

出張中に、残してきた家族のある自宅に立ち寄るのは、業務として認められるかどうかということです。

自宅に行くことは仕事と直接関係ないと思われますが、どのように取り扱われるのか見てみましょう。

 

出張のときに自宅に立ち寄るのは大丈夫?

(平成25年問7B)

出張の機会を利用して当該出張期間内において、出張先に赴く前後に自宅に立ち寄る行為(自宅から次の目的地に赴く行為を含む。)については、当該立ち寄る行為が、出張経路を著しく逸脱していないと認められる限り、原則として、通常の出張の場合と同様、業務として取り扱われる。

 

解説

解答:正

問題文のケースであれば、自宅に立ち寄る行為は業務として取り扱われます。

出張は、会社に行って仕事をしているわけではないので、事業主の直接的な管理下にはないですが、

仕事をしていることには変わりなく、出張中にケガなどをすれば業務災害の対象になります。

また、出張中に自宅に立ち寄る行為については、出張の経路が極端に外れていなければ、こちらも業務として取り扱われます

通勤災害の項目でも、単身赴任先と自宅の移動については所定の要件を満たせば通勤として認められますので、

そちらと共通の考え方になりそうですね。

さて、次は第三者から暴行を受けた場合の取り扱いを見てみましょう。

たとえば仕事中に上司から殴られたなどのケースが考えられますが労働災害になるのでしょうか。

 

仕事中に他人からケガさせられたときはどうなる?

(平成27年問5A)

業務に従事している場合又は通勤途上である場合において被った負傷であって、他人の故意に基づく暴行によるものについては、当該故意が私的怨恨に基づくもの、自招行為によるものその他明らかに業務に起因しないものを除き、業務に起因する又は通勤によるものと推定することとされている。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

まず前提にあるのは、他人からの暴行が個人的な恨みからのものではないということです。

その上で、他人の故意に基づく暴行によってケガなどをした場合は、業務災害や通勤災害に該当する可能性があります

たとえば、上司からの指導が行きすぎて手が出てしまい、ケガをしてしまった場合が考えられます。

また、通勤中に引ったくりにあって転倒したためにケガをした時も通勤災害になる可能性がありますね。

このように、業務災害や通勤災害では、業務中や通勤中に起こりうると考えられるような因果関係にある、

と認められることが条件になってくるのですね。

では次に、職場で仕事をしていないけれど業務災害にあたる例を見ておきましょう。

業務としての仕事をしていなくても所定の行為であれば、そのケガなどは業務災害にあたるというものです。

 

仕事場で火事の消火にあたる行為は「業務」?

(平成28年問5ウ)

業務に従事していない労働者が、使用されている事業の事業場又は作業場等において災害が生じている際に、業務に従事している同僚労働者等とともに、労働契約の本旨に当たる作業を開始した場合には、事業主から特段の命令がないときであっても、当該作業は業務に当たると推定される。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

問題文にあるように、火事などの災害が起きた場合、人命に関わることなので、消火作業や人命救助は「緊急行為」ということになります。

この緊急行為は、労働者の契約に基づいた仕事でなくても、また、事業主からの命令がない時でも業務として認められ

緊急行為中にケガなどをした場合は業務災害として認められる可能性があります。

こちらについては通達をご紹介させていただきますので、下にリンクを貼っておきますね。

これは、トラックの運転手さんの業務災害についての判決も記載されていますので、ご自由にご参考になさってくださいね。

 

参考記事:緊急行為の取扱いについて

 

ということで最後に、派遣労働者と業務遂行性の関係について確認しましょう。

派遣労働者は、労働契約を結んでいるのは派遣元の事業主ですが、実際に働いているのは派遣先の事業場という特殊な環境になります。

派遣労働者にとっての業務遂行性をどのように考えるのか、次の問題で見ておきましょう。

 

派遣労働者についての業務遂行性の範囲

(平成26年問5A)

派遣労働者に係る業務災害の認定に当たっては、派遣労働者が派遣元事業主との間の労働契約に基づき派遣元事業主の支配下にある場合及び派遣元事業と派遣先事業との間の労働者派遣契約に基づき派遣先事業主の支配下にある場合には、一般に業務遂行性があるものとして取り扱われる。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

派遣労働者の業務遂行性は、

  • 派遣元事業主の支配下にある場合
  • 派遣元事業と派遣先事業との間の労働者派遣契約に基づいて派遣先事業主の支配下にある場合

に該当するということになります。

派遣元の支配下にある場合はもちろんですが、派遣先で仕事をしているときも、ちゃんと業務遂行性があるということですね。

 

今回のポイント

  • ケガや病気が業務災害と認められるためには、まず「業務遂行性」があることが前提になっていて、ケガや病気が業務によって起こったという業務起因性が認められることが必要です。業務遂行性というのは、労働者が事業主の支配下で仕事をしている状態のことを言い、業務起因性は、その業務をしていればそのケガや病気が発生するよねということで、それなりの(相当)因果関係が認められることが条件となります。
  • 出張中に自宅に立ち寄る行為については、出張の経路が極端に外れていなければ、業務として取り扱われることになります。
  • 他人からの暴行が個人的な恨みからのものではないことを前提として、他人の故意に基づく暴行によってケガなどをした場合は、業務災害や通勤災害に該当する可能性があります
  • 緊急行為は、労働者の契約に基づいた仕事でなくても、また、事業主からの命令がない時でも業務として認められ、緊急行為中にケガなどをした場合は業務災害として認められる可能性があります。
  • 派遣労働者の業務遂行性は、
    • 派遣元事業主の支配下にある場合
    • 派遣元事業と派遣先事業との間の労働者派遣契約に基づいて派遣先事業主の支配下にある場合

    に該当するということになります。

 

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