過去問

「社労士試験 労働に関する一般常識 労働契約法 これが労働契約の考え方!」過去問・労一-36

今回は労働契約法での労働契約の考え方について見ていきたいと思います。

労働契約法は、社労士試験で毎年と言っていいほど出題されていますので、あまり時間をかける必要はありませんが、チェックをしておいた方が良さそうですね。

また、労働基準法との考え方の違いについても意識しておくようにすると横断学習ができますのでオススメです。

それでは過去問を見ていくことにしましょう。

最初の問題は、「均衡考慮の原則」について問われています。

何に対して均衡を考慮するべきなのかを見てみましょう。

 

均衡考慮の原則の考え方

(平成27年問1A)

労働契約法第3条第2項では、労働契約は就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきとしているが、これには、就業の実態が異なるいわゆる正社員と多様な正社員の間の均衡は含まれない。

 

解説

解答:誤り

均衡考慮の原則は、正社員と多様な正社員の間の均衡についても含まれますので誤りです。

多様な正社員は、勤務地や労働時間の限定の条件があるので、一概に正社員と賃金などの処遇について比較することが難しいですが、

労使で話し合って納得性のある水準にすることが望ましいとされています。(平成26年7月30日基発0730第1号)

では次に、労働契約法第4条について見てみますね。

法4条には、「使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。」と規定されていますが、

どのような場面について規定しているのかを次の問題で確認しましょう。

 

使用者が労働条件の内容を労働者に理解させる取組みの範囲

(令和元年問3A)

労働契約法第4条第1項は、「使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにする」ことを規定しているが、これは労働契約の締結の場面及び変更する場面のことをいうものであり、労働契約の締結前において使用者が提示した労働条件について説明等をする場面は含まれない。

 

解説

解答:誤り

法4条第1項は、労働契約の締結前において労働条件を労働者に説明をする場面も含まれるので誤りです。

労働基準法第15条に、労働条件の明示の規定がありましたが、労働契約法第4条第1項の規定は、それよりも広いとされています。(平成30年12月28日基発1228第17号)

つまり、労働契約法は、目的条文にあるように、個別の労働関係の安定が目的なので、

後で言った言わないのトラブルにならないように、

労働契約の締結前にも使用者は労働条件について労働者にきちんと説明をしてね、ということですね。

では、その労働契約の内容の確認について見てみましょう。

先ほど、「言った言わない」のトラブルについて述べましたが、それを回避するにはどうすればいいのでしょうか。

次の問題で確認しましょう。

 

労働契約の内容は書面での確認が必須?

(平成23年問4B)

労働契約法に関して、労働者及び使用者は、期間の定めのある労働契約に関する事項を含め、労働契約の内容については、できるだけ書面により確認するものとされている。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

労働契約法では、労働契約の内容を「できるだけ」書面で確認をするという規定になっています。

労働契約の内容を書面で確認をしたほうが、トラブルのリスクを回避できるということですね。

一方、労働基準法第15条の労働条件の明示については、所定の条件については書面で明示するようになっていますね。

さて、次は労働契約の成立について見てみたいと思いますが、書面を交付しないと有効に成立しないのでしょうか。

下の問題で確認しましょう。

 

労働契約の成立の条件

(平成28年問1イ)

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が必ず書面を交付して合意しなければ、有効に成立しない。

 

解説

解答:誤り

労働契約は、合意することで成立するので、書面を交付することが条件にはなっていません。

先ほどの論点は、労働契約の内容を確認をするのは書面でやってね、ということなので、労働契約の成立には関係ありません。

では最後に、使用者の安全配慮義務について見ておきましょう。

労働契約法第5条には、

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」

と定められていますが、どのような内容になっているのかを確認しましょう。

 

使用者の安全配慮義務の内容

(平成28年問1ア)

労働契約法第5条は労働者の安全への配慮を定めているが、その内容は、一律に定まるものではなく、使用者に特定の措置を求めるものではないが、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められる。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

基本的に、使用者は、労働契約の内容として具体的に定めなくても、労働契約にともなって信義則上当然に、労働者を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っているものとされています。

なので、問題文にあるように、安全配慮の内容は、一律に定まるものではなく、労働者の職種や労務内容などの具体的な状況に

応じて必要な配慮をすることが求められています。

 

今回のポイント

  • 均衡考慮の原則は、正社員と多様な正社員の間の均衡についても含まれます。
  • 法4条には、「使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。」と規定されていますが、労働契約締結前の労働者への説明の場面も含まれます。
  • 労働契約法では、労働契約の内容を「できるだけ」書面で確認をするという規定になっています。
  • 労働契約は、合意することで成立するので、書面を交付することが条件にはなっていません。
  • 使用者の安全配慮義務は、労働契約の内容として具体的に定めていなくても、労働契約にともなって信義則上当然に、労働者を危険から保護するよう配慮すべきとされています。

 

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