労働組合は、労働者を代表して使用者と対等の立場に立って労働条件の向上について交渉するのが役割ですが、当の労働者に対してはどこまで効力が及ぶのでしょうか。
社労士試験でも労働組合法については労働組合と労働者の関係を論点にすることがあります。
今回はそんな過去問を集めてみましたので一つ一つ見ていくことにしましょう。
最初の問題は「ユニオンショップ協定」についての論点です。
ユニオンショップ協定ってなんだったっけ?と思い浮かべながら読んでみてください。
ユニオンショップ協定で解雇義務を定めるのはアリ?
(平成24年問2A)
いわゆるユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法第90条の規定により、これを無効と解すべきであるとするのが、最高裁判所の判例である。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
ユニオンショップ協定というのは、労働組合と使用者で結ばれる協定で、労働者を採用するときには所定の労働組合に加入することを条件にするというものです。
で、もし労働者が労働組合から抜けたり除名された時は、その会社から解雇されるということも定められているが合法なのかというのが今回の問題の論点になっています。
問題文のとおり、労働者が労働組合から抜けたり除名されたりしたからといって会社が解雇するのは無効だという判例があります。
なので、ユニオンショップ協定が最強というわけではなく、労働者が労働組合を選択したり、自分で組合を作る自由も守られるということですね。
あと、労働組合に関する協定に、「チェックオフ協定」というものがあります。
労働組合を運営するにはお金が必要になるわけですが、通常、組合員からの組合費で賄われています。
でも、労働組合が組合員からお金を集めるのも手間がかかるので、組合員のお給料から天引きできればラクなわけです。
ただ、お給料は賃金ですから、労働基準法の「全額払の原則」により勝手に天引きすることはできません。
そこで、労使協定を結ぶことで、使用者がお給料から組合費を控除してまとめて労働組合に引き渡すようにするのが「チェックオフ協定」ということになります。
で、このチェックオフ協定を組合員は受け入れる義務があるのかどうかというのが次の問題になっていますので見てみましょう。
労働組合員はチェックオフ協定を受け入れる必要があるのか
(平成24年問2B)
いわゆるチェック・オフ協定は、それが労働協約の形式により締結された場合であっても、当然に使用者がチェック・オフをする権限を取得するものではないことはもとより、労働組合員がチェック・オフを受忍すべき義務を負うものではないとするのが、最高裁判所の判例である。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
チェックオフ協定というのは、労働基準法の「全額払の原則」による違法性を問われないという意味合いでしかなくて、
労働者である組合員がチェックオフ協定に従ってお給料から組合費が天引きされることを受け入れる義務まではないのです。
では、チェックオフ協定の論点について、違う角度から問われている過去問がありますので、そちらも見ておきましょう。
組合員はチェックオフの中止を申し入れることができる?
(平成25年問2C)
使用者が組合員の賃金から組合費を控除しそれを労働組合に引き渡す旨の、労働組合と使用者との間の協定(いわゆるチェック・オフ協定)は、それに反対する組合員にチェック・オフを受忍する義務を負わせるものではなく、組合員はいつでも使用者にチェック・オフの中止を申し入れることができるとするのが、最高裁判所の判例である。
解説
解答:正
問題文のとおりで、組合員はいつでも使用者にチェック・オフ(給料からの労働組合費の天引き)の中止を申し入れることができます。
というわけで、ユニオンショップ協定やチェックオフ協定があったとしても、労働者には、労働組合に入る自由や脱退する自由もあるということが分かりますね。
とはいっても、労働組合は労働者を代表して使用者に対して労働条件を改善するのが仕事ですから、その存在を無視するわけには当然いきません。
事実、労働基準法で出てきた「労働協約」は労働組合と使用者との間で交わされるものです。
ちなみに、労働協約は書面で作成して両者が署名・記名押印することで効力が得られます。
で、その労働協約の効力について確認することにしましょう。
次の問題では労働組合に加入していない労働者への効力について問われています。
労働協約の効力はどこまで及ぶ?
(平成23年問5E)
労働組合法に関して、労働協約は、それを締結した労働組合の組合員の労働契約を規律するものであり、当該労働組合に加入していない労働者の労働契約を規律する効力をもつことはあり得ない。
解説
解答:誤
労働協約は、一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上の労働者が一の労働協約の適用を受ける場合は、
その工場事業場に使用されるほかの同種の労働者についても労働協約が適用されることになります。
ちなみに、労使協定の場合、労働者の過半数代表者と使用者との間でかわされる協定ですが、協定が結ばれるとその協定に反対している労働者にも効力が及びます。
この機に一緒に押さえておきましょう。
では、こちらの労働協約の論点についてもう一問チェックしておき、視点を変えられても対応できるようにしましょう。
労働協約の効力はどこまで及ぶ? その2
(平成30年問4A)
ある企業の全工場事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上の数の者が一の労働協約の適用を受けているとしても、その企業のある工場事業場において、その労働協約の適用を受ける者の数が当該工場事業場に常時使用される同種の労働者の数の4分の3に達しない場合、当該工場事業場においては、当該労働協約は一般的拘束力をもたない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
先ほどの規定を思い出していただきたいのですが、「一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上」というのが条件になっていますので、
基本的に「事業場単位」で同種の労働者の4分の3以上が労働協約の適用を受けている必要があります。
なので、全工場事業場で4分の3以上であったとしても、ある工場事業場では4分の3未満だった場合、その工事事業場では労働協約の適用がなされないことになります。
今回のポイント
- ユニオンショップ協定というのは、労働組合と使用者で結ばれる協定で、労働者を採用するときには所定の労働組合に加入することを条件にするというもので、もし労働者が労働組合から抜けたり除名された時は、その会社から解雇されるということも定められていますが、使用者の解雇義務については無効であるという判例があります。
- チェックオフ協定は、労使協定を結ぶことで、使用者がお給料から組合費を控除してまとめて労働組合に引き渡すようにするものですが、労働者がそれを受け入れる義務はありません。
- 労働協約は、一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上の労働者が一の労働協約の適用を受ける場合はその工場事業場に使用されるほかの同種の労働者についても労働協約が適用されることになります。
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