このブログでは、毎日科目を変えてお送りしています。
なぜかというと、早いうちに全科目に触れておくことで、社労士試験の全容がイメージしやすくなり、勉強のペースが掴みやすくなるからです。
なので、あまり構えずに「ふ〜ん、そうなんだ」くらいの気軽な気持ちで読んでみてくださいね。
今日は労基法から「就業規則」について見てみたいと思います。
就業規則は、常時10人以上の労働者を使用している場合に、作成と労基署への届出義務がありますが、
10人のカウントの仕方や、就業規則に記載しなければならない事項などについて過去問を通して確認していきましょう。
就業規則を作成する「常時10人以上」のカウント方法
(令和2年問7D)
1つの企業が2つの工場をもっており、いずれの工場も、使用している労働者は10人未満であるが、2つの工場を合わせて1つの企業としてみたときは10人以上となる場合、2つの工場がそれぞれ独立した事業場と考えられる場合でも、使用者は就業規則の作成義務を負う。
解説
解答:誤り
問題文の場合、就業規則の作成義務はありません。
就業規則は、企業単位ではなく、事業場ごとに作成することになっていますので、
一つの事業場で常時使用している労働者の数が10人未満の場合は、就業規則の作成義務はありません。
ちなみに、36協定も同じです。
36協定も就業規則も過半数代表者が関係しますが、どちらも事業場の労働者の過半数を代表する者ですので、事業場単位で考えるということですね。
それでは、就業規則に必ず記載しなければならない事項について見てみましょう。
これを絶対的必要記載事項と言いますが、労働条件の中でどの項目が対象なのか確認しましょう。
就業規則に必ず記載しなければならない事項とは
(平成24年問7A)
労働基準法によれば、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、退職手当に関する事項を就業規則に必ず記載しなければならないとされており、また、期間の定めのない労働契約によって雇用される、勤続期間が3年以上の労働者に対して退職手当を支払わなければならない。
解説
解答:誤り
退職手当については、絶対的必要記載事項ではなく、「相対的必要記載事項」となっているので、
退職手当を支給するルールがないのであれば就業規則に記載する必要はありません。
就業規則の絶対的必要記載事項は、
- 始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
- 賃金の決定、計算および支払の方法、賃金の締切りおよび支払の時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
となっています。
一方、相対的必要記載事項は、
- 退職手当に関する事項
- 臨時の賃金(賞与など)、最低賃金額に関する事項
- 食費、作業用品などの負担に関する事項
- 安全衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰、制裁に関する事項
- その他全労働者に適用される事項
です。
全部を覚えるのは大変なので、まず絶対的必要記載事項を押さえ、それ以外は相対的必要記載事項というように認識した上で、余裕があれば相対的必要記載事項も押さえるようにしましょう。
さて、就業規則を作ったはいいものの、絶対的必要記載事項が抜けていた場合の法違反などの取り扱いについて、下の問題で確認しましょう。
もし絶対的必要記載事項が抜けていたら、、、
(令和3年問7A)
労働基準法第89条第1号から第3号までの絶対的必要記載事項の一部を記載しない就業規則も、その効力発生についての他の要件を具備する限り有効であり、使用者は、そのような就業規則を作成し届け出れば同条違反の責任を免れることができるが、行政官庁は、このような場合においては、使用者に対し、必要な助言及び指導を行わなければならない。
解説
解答:誤り
問題文の場合、労基法第89条違反の責任を免れることはできません。
絶対的必要記載事項の一部の記載がなくても、効力については有効になり得ますが、
89条違反の事実は変わらないので、その責任は負わなければなりません。
ちなみに、89条違反について行政が必要な助言や指導を行うという規定はありませんが、
労基法92条に、「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。」と規定されていて、さらに
「行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。」としています。
今回のポイント
- 就業規則は、企業単位ではなく、事業場ごとに作成することになっていますので、一つの事業場で常時使用している労働者の数が10人未満の場合は、就業規則の作成義務はありません。
- 就業規則の絶対的必要記載事項は、
- 始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
- 賃金の決定、計算および支払の方法、賃金の締切りおよび支払の時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
となっています。
- 絶対的必要記載事項の一部の記載がなくても、効力については有効になり得ますが、89条違反の事実は変わらないので、その責任は負わなければなりません。
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