今回は、滞納処分や租税、担保といったものがどのように取り扱われているのか過去問を通して見てみたいと思います。
年金給付を受ける権利はきちんと守る反面、税金など徴収すべきものをどのようにお金を集めるのかという視点で見てみるといいかもしれません。
それでは最初の問題を見てみましょう。
この問題は「差し押さえ」が論点になっています。
原則と例外規定を確認していきますね。
遺族厚生年金は差し押さえできる?
(平成26年問7D)
遺族厚生年金を受ける権利は、国税滞納処分により差し押さえることができる。
解説
解答:誤り
原則として、保険給付を受ける権利は、差し押さえることはできません。
ただし、老齢厚生年金については、その受ける権利を国税滞納処分により差し押さえることができます。
この老齢厚生年金については、後にも出てきますので注意しておきましょう。
次も、遺族厚生年金がテーマになっていますが、税金をかけることができるのか、が論点になっています。
果たして遺族厚生年金に税金を課すことができるのか見てみましょう。
遺族厚生年金に対して租税などの公課は課すことはできる?
(平成26年問7A)
遺族厚生年金として支給を受けた金銭を標準として、租税を課すことはできないが、租税以外の公課は課すことができる。
解説
解答:誤り
保険給付として支給されたものについて租税もそれ以外の公課も課すことはできません。
なので、遺族厚生年金には租税その他の公課を課すことはできませんが、、、
老齢厚生年金については課すことができます。
なんだか老齢厚生年金だけが狙い撃ちされている感じがしますね。
では、保険給付を受ける権利を譲り渡すことはできるのでしょうか。
次の問題では障害厚生年金について問われていますので見てみましょう。
障害厚生年金を受ける権利を譲渡できる?
(平成27年問8C)
障害厚生年金を受ける権利は、譲り渡し、又は差し押えることはできず、また、障害厚生年金として支給を受けた金銭を標準として、租税その他の公課を課すこともできない。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
保険給付を受ける権利は、原則として、譲り渡し、担保に供し、または差し押えることができません。
譲り渡すことに関しては、すべての保険給付が対象で老齢厚生年金といえど譲り渡すことはできない規定になっています。
ただ、先ほども出たように、差し押さえと公課を課すことについては、老齢厚生年金はオーケーということになっています。
で、担保についても実は例外規定があって、ある要件を満たせば保険給付を担保に供することができるのですが、
どういうことなのか、次の障害厚生年金のケースで見てみましょう。
障害厚生年金を担保に?
(平成26年問7E)
障害厚生年金を受ける権利は、独立行政法人福祉医療機構法の定めるところにより、担保に供することができる。
解説
解答:正
問題文のとおりです。
障害厚生年金に限らず、保険給付を受ける権利については、独立行政法人福祉医療機構に担保に供することができます。
これは、国民年金の保険給付も同じなのですが、
別の言い方をすると、家などと違って、銀行などに担保に供してお金を借りることはできないということですね。
では最後に、色々と狙い撃ちされている老齢厚生年金について問われている過去問を確認しておきましょう。
次の問題の論点は、老齢厚生年金が全額支給されるのか、介護保険の保険料を控除できるのかとなっています。
老齢厚生年金から介護保険料を天引き?
(平成26年問7B)
老齢厚生年金として支給される金額は、全額が受給権者に支払われることとされており、そこから介護保険の保険料を控除して支払われることはない。
解説
解答:誤り
老齢厚生年金の場合は、租税その他の公課を課すことができるので、必ずしも全額が支払われるとは限りません。
ただ、介護保険料については、老齢厚生年金は天引き(特別徴収)の対象にはなっていませんので、この部分は正しいです。
介護保険料が特別徴収できるのは、老齢基礎年金と旧法の老齢年金などとなっています。
今回のポイント
- 原則として、保険給付を受ける権利は、差し押さえることはできませんが、老齢厚生年金については、その受ける権利を国税滞納処分により差し押さえることができます。
- 保険給付として支給されたものについて租税その他の公課を課すことはできませんが、老齢厚生年金についてはその限りではありません。
- 譲渡に関しては、すべての保険給付が対象で老齢厚生年金といえど譲り渡すことはできない規定になっています。
- 保険給付を受ける権利については、独立行政法人福祉医療機構に担保に供することができます。
- 老齢厚生年金の場合は、租税その他の公課を課すことができるので、必ずしも全額が支払われるとは限りませんが、介護保険料については、老齢厚生年金は天引き(特別徴収)の対象にはなっていません。
毎日の勉強のヒントにどうぞ♫
問題を解いて解説を読んだら、もう一度問題文を振り返ってみましょう。
どの部分で引っかけようとしたのかを再確認しておくと、問題を作った人の意図が理解できるようになり、
押さえるべき知識も明確になりますので試してみてくださいね(^^)
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