過去問

「労災保険法 基礎から学べる障害(補償)給付の要件」過去問・労災-30

障害(補償)給付は、状態として「治ゆ」していることが前提になります。

「治ゆ」というのは、ケガや病気が回復をしたということだけを指すのではありません。

それに加えて、症状が安定して、療養をそれ以上行なってもその医療効果が期待できない状態も含みます。

たとえば、右腕を切断するほどのケガを負ったとしましょう。

療養で右腕がくっついて回復すれば良いですが、傷口はふさがったものの、右腕がないまま病院を退院することもあるわけです。

こうなると、療養をそれ以上行うことに意味はないわけで、その状態を「治ゆ」した状態ということになるのです。

で、その治ゆした状態で、一定の障害が残っている場合に障害(補償)給付が支給されるということを、まず頭に置いておくようにしましょう。

後述しますが、もし症状が悪化して、「治ゆ」から「療養」になった場合は、障害(補償)給付は打ち切られることになります。

では、まず最初の過去問では、通勤災害と業務災害で障害等級に違いがあるのかを確認していきます。

 

通勤災害と業務災害で障害等級に違いはある?

(平成24年問2A)

障害給付を支給すべき身体障害の障害等級は、障害補償給付を支給すべき身体障害の障害等級と同じく、厚生労働省令で定める障害等級表に定めるところによる。

 

解説

解答:正

問題文のとおりで、障害給付についても、業務災害である障害補償給付障害等級を準用することになっています。

なので、業務災害でも通勤災害でも区別することなく、同じ障害等級が使われるということです。

ケガや病気自体に、通勤中も業務中も関係ないですから逆に差別されても困りますよね。

次の問題は、「再発」についての過去問です。

障害(補償)給付の要件を思い出してみましょう。

 

もし症状が再発したら障害補償年金はどうなる?

(平成30年問6D)

同一の負傷又は疾病が再発した場合には、その療養の期間中は、障害補償年金の受給権は消滅する。

 

解説

解答:正

同一の負傷又は疾病が再発した場合、障害補償年金の受給権は消滅することになります。

なぜかというと、冒頭に述べたように障害(補償)給付の要件は、あくまで「治ゆ」していることが前提になっているからです。

再発したということは、また療養が始まるということになりますので、障害(補償)年金ではなく、療養(補償)給付や、傷病(補償)年金又は休業(補償)給付に切り替わるということになりますね。

次は、障害(補償)一時金についての過去問です。

一時金は、文字どおり、一回こっきりの給付になるのですが、ケガや病気も一回こっきりで完結するとは限りません。

つまり、症状が悪化する可能性もあるわけですが、その際はどういう扱いになるのでしょうか。

 

一時金を受けたあと、障害の程度が増進した場合はどうなる?

(平成30年問6B)

障害補償一時金を受けた者については、障害の程度が自然的経過により増進しても、障害補償給付の変更が問題となることはない。

 

解説

解答:正

問題文のとおりです。

障害(補償)一時金の場合は、障害の程度が自然的経過によって増進しても新たに給付が行われることはありません。

本当に、1回こっきりの給付になるんですね。

一方、障害(補償)年金については、自然的経過によって障害の程度が変化した場合は、その等級に応じた認定が行われて、それ以後は認定された給付が行われます。

さて、障害(補償)給付で混乱しやすいのが、「併合繰上げ」と「加重」が挙げられます。

併合繰上げ」は「同一の災害で2つ以上の障害」が生じたときに「重い方の障害を繰り上げ」ます。

加重」は、「新たなケガや病気」で「同一の部位の障害が重くなった」ケースを指します。

この違いを押さえた上で、「加重」についての過去問を確認しておきましょう。

 

「加重」の要件、大丈夫ですか?

(平成30年問6C)

既に業務災害による障害補償年金を受ける者が、新たな業務災害により同一の部位について身体障害の程度を加重した場合には、現在の障害の該当する障害等級に応ずる障害補償年金の額から、既存の障害の該当する障害等級に応ずる障害補償年金の額を差し引いた額の障害補償年金が支給され、その差額の年金とともに、既存の障害に係る従前の障害補償年金も継続して支給される。

 

解説

解答:正

問題文のとおりで、加重の場合のポイントは「差額が支給される」ということです。

つまり、同一の部位について新たにケガや病気によって障害の程度が重くなったとしても、既存の障害補償年金はそのまま支給されます。

で、加重後の障害補償年金は、既存の分を差し引いた差額が支給される、というわけです。

なぜそんなことをするのかというと、既存の障害補償年金の給付基礎日額を算定する時に使った平均賃金と、加重の時に算定する平均賃金が違うことがあるからです。

年金額の基礎となる部分が違うわけですから、同じ障害補償年金と言っても算定ベースでは別物になってしまうのですね。

なので、既存の障害補償年金の支給は残しておく、という形を取ったわけです。

ちなみに、既存の障害補償給付が障害(補償)一時金で、加重後が障害補償年金に変わった場合、加重後の障害補償年金は、既存の障害補償一時金の額を25で除して得た額が支給されることになります。

 

今回のポイント

  • 障害(補償)給付は、状態として「治ゆ」していることが前提になります。
  • 障害給付についても、業務災害である障害補償給付障害等級を準用することになっています。
  • 同一の負傷又は疾病が再発した場合、障害補償年金の受給権は消滅することになります。
  • 障害(補償)一時金の場合は、障害の程度が自然的経過によって増進しても新たに給付が行われることはありません。
  • 加重の場合のポイントは「差額が支給される」ということです。

 

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